高慢なるアイシャ・シェラード。魔術師としては優秀。でも冷たく高慢な女。~終焉の謳い手~
柚月 ひなた
魔術師としては優秀。でも高慢で冷たい女
聖歴
その日、王立学院の
場所は王都オレオールの中心、行政区画の北東にある、騎士団本部の敷地内。
軍が
「なるほど、ここが
「すみません……。でも、
寮の案内役、先輩と呼ぶべき女性騎士が
アイシャは腕を組んで部屋を見回す。
小さな窓がある正面の
狭いキッチン、シャワーとトイレの一体化した使い勝手の悪い水回りがあって——。
建物の外観は王城に
これまで暮らして来た
「共同スペースとして、食堂、売店、
「そうね、考えておくわ」
正直、大勢の人と一緒に何かを——というのは苦手なので、そちらの利用は
アイシャは、昔から人付き合いが得意な方ではなかった。
それは幼少期から
アイシャはシェラード男爵家の次女、現在
家族構成は両親と、兄と姉、年の離れた妹がいる。
男爵家は
母は落ちぶれた騎士の家系の出身。
両親は二人とも出世に対する欲が強くて野心家だった。
アイシャは幼少期に魔術の才能を
来る日も、来る日も。
勉強、また勉強、とにかく勉強。
子供らしく遊ぶ事なんて許されず、学ぶ事を放り出してそのような事をしようものなら、厳しい
だから、人間関係の
学院ではまともな友人を作れず、なまじ知識を詰め込んで頭が良いから、
魔術師としては
(馬鹿な人達ね。私にちょっと才能があるからって、人付き合いもままならないようじゃ、
そして、両親に反発出来ず、
——今回、学院を卒業したら家を出て
軍属の道へ進むと決めてしまったので後戻りはできないし、それ以外の道が思いつかないのも本音だけれど、流されたままではダメだと気付いた。
そう考えるようになったきっかけは、一人の青年。
ルーカス・フォン・グランベル。
〝救国の英雄〟と呼ばれる国民の
彼の事はそう呼ばれる前から知っていた。
彼は、騎士の道に進んだロベルト——ロベルトは事業の関係で
彼は一言でいえば
容姿、
どれをとっても一流。
貴族でありながら
出世するのはああ言う人だと、一目でわかった。
(私と一つしか変わらないのに〝救国の英雄〟だなんて、
英雄と呼ばれるようになった戦での悲劇を乗り越えて、ひたすらに自分の
両親に言われるがまま、流されて生きるだけの自分とは比べ物にならない。
どうやったら、彼のように
彼に近付けばわかるだろうか——?
——同じ軍属であれば、いつか彼と肩を並べる事もあるかもしれない。
だからその時、胸を
これは、その一歩。
「……あのぉ、アイシャさん? どうしますか? やっぱりこんなとこじゃなくて、別のところがいいですよね……。上と掛け合ってみますか?」
アイシャは物思いに
以前なら両親に
でも、入団前で見合った成果も上げていないのに、
「いいえ、ここで十分よ」
言い放ってからふと気付く。
自分の言動は、目上の人に対しての礼を
変わろうと思うなら、こういうところから一つずつ、変えて行かなければ。
アイシャは組んだ腕を
直立すると腰の角度を
「先輩、お忙しい中、案内ありがとうございました」
「え!? いえ、いえいえ。これが私の仕事ですから。気にせず頭を上げて下さい」
そんなに
(私はここから。新たな一歩を踏み出そう)
——この
そして
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