[パイロット版]追放された最弱テイマーは最強すぎる「モンスター図鑑」で無双する（仮）

第5話 ハクロウ戦

　目の前のハクロウは今にも襲い掛かってきそうだ。

　普通にやったら、今の戦力じゃ倒すのは無理だ。

　ここは、テイムして仲間にするしかない。

　大丈夫、こっちはテイム条件もわかっているんだから……！

　えーっと、ハクロウのテイム条件は……っと。

【喉の奥にある青いコアの破壊】

　コアを破壊すればテイムできるってことか……。

　だけど、喉の奥にコアがあるなんて、どうやって破壊すればいいんだ……。

「ガルウウウウウ！！！！」

　ハクロウはこちらを威嚇するように、口を大きく開けて咆哮を放った。

　そのときだった。

　ちょうど、ハクロウの口の中に例のコアが輝いているのが見えた。

「あれを壊せばいいんだな……！　よし、とりあえずみんなで攻撃だ……！　一斉に囲め！」

　僕はさっそく、テイムしているモンスターたちに命令を下す。

　ゴブリンたちを筆頭に、みんなでハクロウを取り囲む。

　とにかく、ハクロウに口を開けさせるんだ。

「よし、ゴブリンたち。次にハクロウが口をあけたら、そこに棍棒を差し込むんだ！」

「ゴブ……！」

　僕の命令に、ゴブリンたちが頷く。

　棍棒を縦に差し込めば、コアを攻撃できるようになるはずだ。

「よし、みんなで一斉に攻撃だ！」

　僕はみんなに命令をする。

　モンスターたちは一斉にハクロウに襲い掛かった。

　しかし――。

「ガルルルルウウウウ！！！！」

「はやい……！」

　ハクロウは一瞬にして、モンスターたちを蹴散らした。

　目にもとまらぬ速さで、まったく戦いになっていない。

　僕の仲間モンスターたちはみんなハクロウの鋭い爪と牙にやられ、倒れてしまった。

「っく……やっぱり強い……！」

　下級モンスターがいくら束になっても、こいつには手も足も出ないのか……！

　やっぱり、こんな便利な図鑑があっても、僕にはなにもできないのか……！？

　僕たちはここでこいつにやられてしまうのか……！？

　いや、そんなのは嫌だ……！

「ようは、コアさえ壊せればいいんだろ……！」

　僕はもう一度、みんなに命令をする。

「さあ、立ち上がって！　みんな、動ける……？」

　仲間モンスターたちはみんな怪我をしてしまっているけど、もう少しだけ戦ってもらわないといけない。

　みんな、あとちょっとだから、頑張って……！

「ごぶぅ……」

「くそ……ダメか……」

　ほとんどのモンスターは負傷して、まともに戦える状態じゃない。

「ゴブ！」

　この中で、まだまともに動けるのはゴブイチだけか……。

「ゴブイチ、僕が囮になる。だから、その隙にハクロウの口に棍棒を差し込んでくれ」

「ゴブ……！？」

「大丈夫、僕ならやれる……！」

　怖いけど、みんなが動けないなら、僕がやるしかない……！

　僕はハクロウの懐へ向かっていった。

「ガルルルル！！！！」

　ハクロウは僕に噛みつこうと、口を大きく開ける。

「今だ……！」

「ゴブ……！！！！」

　目の前の僕に夢中になっているハクロウ。

　そのハクロウの大きな口に、ゴブイチがうまく棍棒を投げ入れた。

「ア……ガ…………！？」

「今だ……！」

　僕はナイフを取り出し、ハクロウの口の中に腕を差し入れる。

　そして、コアをめがけて攻撃！

　しかし――。

　――ミシミシミシ！

　棍棒はしょせんは木製、それほど耐久力がないのか、ハクロウの口の中でミシミシと音を立てている。

　今にも折れそうだ。

　そのときだった。

　ハクロウはその強力な顎の力で、棍棒をかみ砕――。

　――バリィン！！！！

　ハクロウが棍棒を破壊するより先、僕はなんとかナイフでコアを破壊することに成功する。

　それと同時にテイムの紋章がハクロウの額に浮かび上がり――テイム完了だ。

「ふぅ……危ないところだった……。あと１秒遅かったら、僕の腕が噛み千切られてたところだった……」

　ハクロウはテイムされたことで、戦意をなくすと、壊れかけの棍棒をゆっくり口から離した。

　そして僕が腕を抜くのを待ってから、口を閉じた。

「ゴブ……」

　僕を心配したゴブイチが、駆け寄ってくる。

「ありがとう。僕は大丈夫だよ。おかげでなんとかなった」

　ゴブイチを撫でて称える。

　さて、ハクロウをテイムできたことだし、この子にも名前をつけてあげようか。

「じゃあ、君はシロって名付けることにするよ」

「クゥーン♪」

　どうやら気に入ってくれたみたいだ。

　さっきまで戦っていたときは、あれほど恐ろしかったのに、こうしてみるとけっこう可愛いな。

　やっぱり獣っていいよね！

　もふもふしてて、撫でると気持ちがいい。

「まずは……怪我したみんなを回復しないと、だね。みんな、こっちへきて」

　僕は怪我をしたみんなに【ヒール】を唱えた。

　一応、効果は弱いけど、僕にも【ヒール】が使える。

　テイマーは傷ついたモンスターを回復させてあげないといけないから、【ヒール】はテイマーにとっては必須スキルなのだ。

　まあ、僕の弱小【ヒール】だと、効き目はかなり弱いし、時間もかかるから、戦闘中に使えるようなものではない。

　でも、これでもないよりはましだ。

　応急処置くらいにはなる。

　あとは自然治癒力で明日にはよくなるだろう。

　モンスターの生命力、自然治癒力は、人間のそれよりもはるかにすごい。

　僕がみんなをヒールし終わると、シロもなんだか物欲しそうにこちらへ寄ってきた。

「シロもどこか怪我してるの？」

「クゥーン」

「あ……！」

　よく見ると、シロは足に怪我をしていた。

　しかも、罠による怪我だ。

　これは、僕たちと遭遇する前から怪我をしていたみたいだ。

　シロが最初、警戒心をむき出しにして寄ってきたのは、これのせいだったのかもしれないな。

　誰かが仕掛けた罠にかかってしまったんだろう。

「かわいそうに……おいで、ヒールしてあげる」

「クォーン♪」

　なんとか僕の【ヒール】でよくなる程度の浅い傷でよかった。

　さすがにもっとひどい怪我とかの場合は、僕の【ヒール】だけじゃどうしようもないからね。

　そう言う場合は、お金を積んで医者にかからないとだけど……。

「今のままじゃ、そんなお金もないんだよな……」

　これから先、もっと激しい戦闘をすれば、もっとモンスターが傷つくこともあるだろう。

　だからなるべくお金を貯めておくか、僕がもっと回復魔法を学ぶしかない。

　みんなのためにも、もっと稼がないとね……。

　仲間もかなり増えたし、エサ代もこれからもっとかかるだろう。

　とりあえず２、３日は予備のエサがあるけれど……。

「じゃあ、シロも仲間になったことだし、宿に戻ろうか。明日からは本格的にクエストをこなして、どんどん稼いでいくぞ！」

「ゴブゴブ！」

「クォーン！」

　明日に備えて意気込んではみたものの――。

　宿に戻って、その日の夜、僕は４０度の高熱を出した。

「ヤバい……死ぬ……」

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仲間

　・ゴッドスライム　リルム

　・ゴブリン　　　　ゴブイチ

　　　　　　　　　　ゴブニ

　　　　　　　　　　ゴブサン

　・ツノウサギ　　　ハクト

　・ニワコッコ　　　コッコ

　・キノコマン　　　キノ

　・吸血バット　　　サイコ

　・モグライダー　　モグモグ

　・ハクロウ　　　　シロ