十一月七日

 すっかり初冬となり、足の先が冷えやすくなりました。日頃から酒で身体をぽっかぽかにしているあなたには不要な気遣いでしょうが、風邪など引いていませんか。どちらかというと、肝臓機能の低下を心配しています。いい大人なんだから、いい加減お酒の飲み方くらい覚えたらいかがですか。

 そんなお酒に浸るあなたに、大変嬉しいお知らせがあります。なんと、あなたの希望する物件が見つかりましたよ。祝杯をあげると良いでしょう。


 まったく、本当に大変な道のりでした。不動産屋に「ネットにあるのが全部なんですよね〜」「今物件の値段上がってますからねぇ」「御家族はお忙しいですかねぇ。内見、一緒には来られないんですか?」などと嫌味を言われながら内見に行きまくったのですから。


 内見と内見の間に、私は不動産屋と一緒に移動しなくてはなりませんでした。その時間、相手も物件の話をしたり世間話をしたりしようとしますが、そう簡単に私と会話できると思ってはいけない。ここ数年他人と話していない私の固く閉じた心を紐解くのは、歴戦練磨の戦士とて難しいのです。

 あなたに分かりますか。キャッチボールであるべき会話が壁当てのようになる気まずいあの雰囲気、あの時間。それがもうないかと思うと、ステップを踏みたくなります。転ぶのでしませんが。


 さて、ここからが本題です。

 先のメールにて私を働いていないニートと侮辱したことについて謝罪なさい。

 私はニートではありません。自宅警備員です。ちょっと遅咲きなだけなのです。毎日ネットで仕事を探していて、大変忙しいのです。リモートワークというやつです。それに洗濯ネットを取り込むのだって手伝っています。断じて暇では無い。

 内見にたくさん行ったことを暇の証明のように言わないでください。あなたの卑劣な脅しによって、仕方なく時間を捻出したに過ぎません。


 いいですか? 謝罪しないというのなら、物件の契約書は渡しません。母と父にも言いつけますからね!

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