68 その予想が外れていますように
ジュンとクローディー、ラシダさんたちと別れて私はリビオたちと右側の通路へ進む。
ちなみに、こちらが一人増えたことであっちは一人減ることになったけど、特に問題はない。
元々、私の修行のために一緒にいてくれた人たちだからね。むしろ私がいない方が思い切って戦えるんじゃないかと思う。
……私ってただのお荷物だったんじゃ?
いや、考えたら負け。力になれていたこともあった。あったはず。
さて、右側の通路に進んだあたりから魔物の数が増えてきているし油断はならない。
私も補助魔法をガンガン使っていきます!
洞窟内はなかなか複雑な構造になっているらしく、暫く進んだら前半でわかれたチームと合流したり、再び分かれ道で別の道に向かったりすることもあった。
洞窟自体はすでに調査がされている場所だから、地図もあって迷うことはなさそうなんだけど……リビオのいるチームのリーダーが深刻な顔でこんなことを言った。
「道が増えてるな。いつの間にできたのかはわからないが……安全のため、もともとあった道の方から魔物の駆除をしていくぞ」
ただでさえ複雑なのに、さらに知らない道ができているとか。
これも魔物が増えたこととなにか関係があるのかな?
その辺りも調査しつつ魔物の討伐をしていくことになった。
とはいえ、未知の場所へ行くには他のチームとも相談した方がいい。
新しくできた道にこそ、なにか問題があるというのはわりと常識ではあるけどね。
それでも今いるメンバーの実力も加味して無茶をしない判断をしたこのリーダーは信用できる。
後でこの道を通ったチームにもわかるよう、魔法でメモも設置した。
こういう時に、私の器用貧乏な魔法が便利なのだ。
洞窟はほぼ土や岩でできているから、地の魔法で応用できるのも助かる。
みんなにも褒められて満更でもない。
ちゃんと攻撃魔法とかもできるからね? 地味な魔法の方が好みではあるけど。
しばらくは順調に魔物を討伐しながら進み、少し開けたところでいったん休憩を挟む。
空間の魔道具にしまっておいた温かな料理を出したらみんなも喜んでくれたよ。
やっぱりね、美味しいものをしっかり食べておかないと。休憩後のやる気にも繋がるしね。
休憩中、少し時間が空いたのでリビオと雑談して過ごした。
「リビオはいつもこのメンバーで依頼を受けているの?」
「いや、顔馴染みは多いけどいつも同じにはならないかな。パーティーを組んで毎回同じメンバーでやった方がダンジョンとかこういう洞窟の攻略は連携とれるし、いいのかもしんないけど……」
リビオはそこで一度言葉を切ると、今後の行動について意見が別れたのか話し合いを続けるリーダーたちに目を向けた。
「特定のチームにいるってわけじゃなくて、どこのチームでもうまく動けるようになりたくてさ。だってほら……戦争になったら、チームがどうとか言ってられないじゃん?」
つまり、リビオはどちらかというと傭兵に近いのかもしれない。
依頼されれば誰とでもどこにでも向かう感じの。
戦争になると、軍隊や騎士団に所属していない冒険者は基本的に乱戦となる。
広い戦場でいつ誰が倒れてしまうかわからないから連携は簡単に崩れてしまうし、パーティーを組んでいるとその穴を誰がどうやって埋めるかをその場で考えなきゃいけない。
臨機応変に対応できる力というのは、冒険者には今後必要になっていくのかもしれないな。
……ループしなければ、だけど。
「だから俺は、どんな場所に放り込まれても立ち回れるようになっておきたくてさ。あんまり考えたくはないけど、欠けたピースの穴埋めになれることだってあるかもしんねーし」
「うん、大事なことだと思う。リビオは誰とでも仲良くなれるし、周りをよく見ているし、きっとできるよ」
「へへ、そうかな。ありがとな、ルージュ」
それにリビオはリーダーとしての素質もあると思う。
今はまだ成人前だしみんなの前に立って指示を出したりはしないけど、意見を言ったりみんなを気づかったりする姿は頼もしく見える。
たまに一人で暴走しがちではあるけど、なんというか、目を引くんだよね。カリスマ性っていうのかな。
生まれながらにリーダー、みたいな。
ベル先生とはまた少し違った、トップに立つ資質みたいなものを感じる。
本人には言わないけどね。調子にのるから。
そろそろ行くぞ、というリーダーの声で、私もリビオも立ち上がる。
どうやら今後についての話し合いがまとまったみたい。
「リビオ。私も、いつどこに行っても対応できるような力をつけるよ」
歩き始めたリビオにそう言うと、目を丸くして振り返った。
リビオは嬉しそうにニカッと歯を見せて笑う。
「おう、一緒にがんばろうな!」
「うん」
何度ループしても学びはあるものだ。
やっぱり、能動的に行動しないとこうはいかないよね。
これまでの私はどうせ同じだとか、もういろいろ知っているからと諦めていたんじゃなくて、慢心していたのかもしれない。
今からでもきっと取り返せる。
今後はループが無駄じゃなかったと思えるように動くんだ。
再び討伐を開始し、順調に先に進んでいる内に気づけば洞窟の最奥部付近までやってきていた。
大きな問題もなくホッとしていると、進む先に何者かの人影をメンバーの一人が発見した。
他のチームの誰かかとも思ったけど……たぶん、見たことのない人だ。
それに、他のチームの誰かだったら一人でいるのはおかしい。
私たちは全員、警戒を強めた。
「お前、そこで何をしてる!」
リーダーがそう声をかけるものの、なんの反応もない。
前衛と斥候担当の二人が先に様子を見てくるというので、私たちはその場で待機することになった。
それでも、何かあったら先に行った二人やこちらの身を守れるようにいつでも魔法が発動できる準備をしておく。
うーん、本当に何者だろう。迷子、ではないよね? こんな魔物がはびこる洞窟の最奥部で。
遠目でよくは見えないけど、深緑のローブを着ているのはわかる。
フードが邪魔で顔が見えないけど……なんか仮面も被っている気がするんだよね。
茶色っぽい、鳥、かな? そんな仮面。
見れば見るほど不審人物だ。
嫌な予感。絶対に当たってほしくないけど。
「あいつは、魔族、か……?」
待機中の一人が、できれば言ってほしくなかったみんなの予想をポツリと告げた。
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