紅月華と白メイス~傾国魅了‪☆最強少女の百合っと幻想譚(Fanta-Lily)~

くんねちゅぷ

序章

第001話 プロローグ

 この世界の人族は15歳を迎えると神殿傘下の教会にて成人の儀を受ける。

 その際に神からの賜るとされる自身のステータスと保有するスキルが示されたステータスプレートを得ることとなる。

 その時、人は初めて己が保有する真なる能力の全てを知る事になるのだった。


 季節は花咲く春から新緑の季節へと移り変わろうとしていた。

 人族の大国のひとつであるヴァンデール王国の南端にほど近い、自然豊かで長閑のどかな街道を一人の少女が北へと向かって歩んでいた。

 彼女の名前はフロレアル。

 人種ひとしゅの人族で年齢は成人を迎えたばかりの15歳。

 見た目としては、髪型は黒髪のボブヘアー、身長は人族女性の平均より小さい。

 スタイルは上から順に、たわわなお胸様、ウェストはしっかりとクビレており、ヒップはハート状安産型な大きめサイズ。

 低めの身長にボンキュッボンのスタイル、所謂いわゆるトランジスターグラマーな美少女である。

 彼女自身もそれを自認しており、美少女と少なからず公言もしていた。

 普通ならば頭お花畑と疑われそうなものだが、彼女の容姿を一度ひとたび目にした者全てが彼女の魅力に屈してしまうことであろう。

 それは彼女のステータスや保有するスキルが、その事実を裏付けていた。


 順調に歩みを進めていたフロレアルだったが、突如として歩みを止めてしまう。


 これは少しまずいわね。覚悟を決めてヤるしかないわね・・・。


 覚悟を決めるや否やフロレアルは街道から少し離れた薄暗い雑木林へと小走りで向かう。

 うっそうとした雑木林の中は日中でも薄暗く、街道からでは中の様子を伺う事は難しい。

 そんな中で彼女は一人、息を殺し、気配を隠しながら慎重に周囲の気配を探る。


 大丈夫、今までだって何回かはヤった事があるのよ・・・。だから何の問題もないわ。ただ単に知らない場所、そして街道が近くにあるってだけなんだから・・・。


 覚悟を決めたフロレアルは突如として得意とする魔法を行使する。

 驚くべきことに彼女は魔法名を唱える事無く、完全無詠唱で事象改変を成したのである。

 魔法を受けた対象には、まるで抉り取られたかの様な大きめの穴が生まれていた。

 それは魔法による事象改変によって彼女が望んだ、イメージした通りの結果である。

 対象へと近付き、無惨に開かれた穴を見下ろしながら、その状態を確かめた彼女は次の行動に移る。

 無駄に汚す事を避ける為、身にまとっていた外套がいとうを手早く魔法鞄マジックバックへと収納する。


 フロレアルは、この後に自分が行おうとしている事に上気したのか、僅かに頬を染める。


 初めてじゃないのだし、今更我慢も出来ないわ。ヤるしかないのよ!


 意を決した彼女は、着ている旅装束の厚手ローブの裾をまくり上げる。

 それに次いで一気に下着パンツを膝まで下ろすと、地面に開いた穴の上でかがみ込む。

 少しすると薄暗い雑木林の中にジョロジョロとの少し勢いを感じさせる小さな水音が生じたのだった。

 所謂いわゆる野ションである。


 それは自然の摂理。

 生きとし生けるもの運命さだめ

 どんなに美しく可憐な少女であったとしても生理現象からは逃れる事は叶わない。

 その様な幻想を抱いているのならば、かの英雄譚に出てくる幻想を殺す者に殴られ目を覚ます現実を知るか、もしくは別の英雄譚の名言に従い幻想を抱いて溺死するべきなのである。


閑話休題

 「はぁぁ、我慢してたから少し気持ちいいかも・・・」


 フロレアルは故郷の村を旅立ったばかりであり、初めての野ションを気恥ずかしさから我慢していたのであった。

 そんな彼女は少し痺れる様な気持ち良さに瞳を潤ませ、相も変わらず頬を染めたまま呟く。


 「それにしても、今までしたことがある故郷近くの見知った山の中とは全然違うわ・・・。すぐ近くにある街道を、いつ何時なんどき、見知らぬ誰かが通りかかるかもしれない・・・。それに下手すれば同じ用途でこの雑木林の中へと入ってくるかもしれない・・・。街道近くのこんな場所で、私ったら大事なところ丸出しにしてオシッコしちゃってる・・・。あぁ、なんだか分からないけどゾクゾクしちゃう・・・」


 そんな独り言を無意識に口から放ちつつ、用を足し終えるフロレアル。

 洗浄魔法を自分の下腹部へと施し、次いで地面の穴をいとも容易く塞いでしまう。

 そして下着パンツを上げて履き直し、ローブの裾を下ろした後に、そそくさと身だしなみを整え、魔法鞄から外套を取り出し羽織る。

 その時、彼女は思い呟くのだった。


 「どうして、こうなっちゃったのかな・・・」



 事の転機は一週間前。

 フロレアルは15歳の誕生日を迎え、晴れて成人の儀を受けるに至った。

 その結果、とある理由から彼女は生まれ育った故郷から旅立つこととなったのである。


 フロレアルが生まれ育ったローゼ村は国の南端にほど近い人口が150人程の村である。

 そんな国の外れにある村にすら当然の様に教会は存在している。

 この世界において神は人族を含む人種の間では認知されており、種族により差はあれど深く信仰されている。

 だが神の名は誰も知らず、多くの人々は神様と呼称しているのみであった。

 それは神は唯一無二の存在、他と区別する必要が無い特別な存在モノ、それ故に神をあがめたてる神殿は他の名称で呼ぶことを禁忌と定め、その行為は神をおとしめるものとしていた。

 神が当然の如く認知されている人族の世の中では、神殿の影響力も比例して強いものとなっている。

 神殿は人口が多い城下町や街に存在し、教会はその出先機関として町や村の規模に見合ったものが建てられる。

 フロレアルの故郷であるローゼ村の教会は、村の規模に合わせたお可愛いちんまい建物であった事は言うまでもない。

  

 フロレアルが故郷の村から旅立つ要因となったのは成人の儀であった。

 彼女は生まれ育った村ではフロレと親しみを込めて呼ばれており、一部の人々からは聖女様とも称されていた。

 そう称していたのは、村にある教会の神官や一部の村の人々であった。

 彼らは、成人の儀を行う前からフロレが聖女であると信じ、微塵の疑いも抱いてない程であった。

 それには確証に近い実績、フロレが上級クラスの神聖魔法を行使できることを知っていた為である。

 神聖魔法とは、神へ祈りを捧げ奇跡をもたらす特別な魔法とされている。

 教会の神官であっても扱えるのは良くて中級クラス上位であり、上級クラスの神聖魔法の行使は、聖女や聖人といった特定のユニークスキル保有者でなければ不可能とされていた。

 これは過去に存在した魔法士の超越者たる賢者ですら、上級クラスの神聖魔法だけは行使が叶わなかったことからの推察であり、この世界の常識でもあった。

 その結果、フロレは故郷の人々から聖女と目されており、その期待を一身に浴びていた。

 そんなフロレが成人の儀で賜ったステータスプレートには、聖女の二文字は記されておらず、その代わりに信じられないユニークスキルが記されていたのである。

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