転生したDKのボク、竜族になったが仲間に追放されてしまう。ボクを助けてくれたのは、人間のエセ勇者だった件

円香

第一章 風竜になった翠

第1話  猫好きの日向翠

 学校帰りに、日向翠ひゅうがすいは、近所の空き地にダッシュで向かう。手には猫缶を持っていた。

「今日こそは、あのキジトラの子猫を保護するんだ!!」と、心で決めていた。


 すいの言う「あのキジトラの猫」とは、二日前に、学校帰りの空き地で見つけた子猫だ。首輪がなかった。おそらく母親が野良猫で、はぐれてしまったようだ。一匹で草むらの中で泣いていた。


 その日と、昨日保護しようと近寄ったが警戒されて逃げ出される始末。

 今日は食事で釣ろうと、子猫用の猫缶を用意した。


「お~い! トラ~(勝手に名付け)何処だ? お腹が空いてるだろ?」


 空き地中を見渡してもトラの姿はない。

(トラの奴何処に行ったんだ?)


 すると翠は、足にすり寄って来る猫の感触を感じた。

 ゴロゴロ付きで!! しかも!! 高級なペルシャ猫だ!!


「すげぇ! 毛並み!!君は何処の子?」


 そうしたら、ペルシャ猫が言った。


《ボクは、君を迎えに来たんだよ》


(ペルシャ猫が喋った!? しかも自分を迎えに来たなんて、物騒なことを言ってる!!)


 翠は、ビックリして抱いていたペルシャ猫を放り投げてしまった。

 その時小さな キジトラ猫が、道路を横断してこっちへ来ようとしているのが見えた。


(おい!! ここは、工事用のトラックも通る危ない道なのに、良く反対側に行けたもんだな)


 もうキジトラの猫は、翠の家の飼い猫になることは、翠の中では決定事項なのだ。


 そこにスピードを出して曲がってきた、トラックが!!

 翠は、思うよりも早く身体が動いていた。

 そして、翠の意識も失った。


 次に翠が目覚めると、銀色に輝く世界にいた。


《イグニス女神。連れてきたけど、すごい頼りない奴ですニャ》


『あら、ラルカ、今度は大丈夫よ。私だってあれから学んだわ。もう二度と失敗はしないわ』


(エラク眩しいところだな~ 何語で喋ってるか分からないが、頭の中に直接聞こえてくるのは日本語だ)


 翠は起き上がって、自分の目が慣れて来るのを待った。


 そうして、そこにほぼ、周囲の銀色と同化しそうな銀色に輝いている先ほど女神(?) と、こともあろうに、自分を迎えに来たと言ったペルシャ猫がいるではないか。


「え……っと、ここは何処で、ボクはどうしてここにいるんですか?」


 ほんのり、銀色に輝いていた女性は腰まである長いストレートの髪を背中に垂らし、これ以上は見たことは無いという彫刻級の美しい顔で言った。


『ここは、私たちの世界で言うところの天界です。普通の死者が来るところではありません。あなたの世にも稀な正義感と優しい行動に感激をして、地球世界の神様から、あなたを譲ってもらったのです』


 女神の瞳は潤んでいた。


『あなたにチャンスをあげましょう!!私の世界で生き直してみませんか?』


「そりゃ、すぐ死ぬ身体じゃないなら……それにここにも猫はいるみたいだし?」


《僕のことを言ってるのかニャ?僕は神獣だよ。猫じゃない二ャ》


 喋るペルシャ猫がボクの足に蹴りを入れた。

 ボクは、雲の隙間から地上へと真っ逆さまに落ちて行った。

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