第74話 オークロード再び
(こ、これはさすがに一人じゃ無理かも・・・)
4つ目の特別クエストの続きを受領した彩音は思わず呟いた。
その対象は、まだ彩音の記憶にも鮮明に残っている凶悪なボスで、その存在と強さにモニター越しに震えて見ていた事を思い出す。
『オークロードを討伐して来て下さい。』
意を決し彩音は魔界に足を踏み入れる。【クレイジーギア】のメンバーに声を掛けることは、すぐに頭に思い浮かんだ。が、まずはその強さを自ら体験してみようと思ったのだ。
道中のオーク達を倒しながら魔界の森の奥深くへと足を進める。その場所はロックスと来たので覚えていた。当時は行ったらだめだと言ったボスに自ら向かっていることの矛盾に、そして心の変化にまだ彩音は気づいていなかった。
その彩音の表情はうっすらと笑みを含み、なんだか楽しそうに・・・
奥深く踏み入ったその先に少し開けた場所を見つけた。
ここがロックスと一番最初に【オークロード】を見た場所で、当時と何ら変わることなく森の王者は周りに【ハイオーク】5体を引き連れてその威圧的な佇まいを見せつけていた。
彩音はロックスがやっていたことを思い出していた。
(まずは地雷を設置して、来たら爆破で
一か八かある事に賭けてみることにした彩音は頬をパンと叩き【オークロード】をキッと睨みつけ一歩前へ踏み出す。その踏み出した歩みに反応した取り巻きの【ハイオーク】5体が一斉に襲い掛かってくる。
彩音は一歩下がって地雷を起爆。吹っ飛ばした【ハイオーク】を毒蜘蛛金糸で捕縛。
次の瞬間【オークロード】に向かって颯爽と飛び込む。
(一か八かの大勝負!)
ー神威ー
なんと彩音はいきなり奥義を発動したのである。それもロックスが心を失う事になった原因でもあるその技を・・・・
閃光を放ち幻影と肩を並べるロックス。
(あたしが、
ー奥義残影乱舞ー
並び立つ4人のアサシンが乱舞する。それもこの【ディスティニーフェアリー】トップのアサシンのMAX火力で・・・この瞬間火力を超える者は居ない。
『~ロックスさんによってオークロードが討伐されました。』
『~おめでとうございます。討伐MVPはロックスさんです。』
ワールドアナウンスがその勝利を告げた。
(え、えええええええええ倒せちゃった・・・・)
もう彩音は吹っ切れていた。どんな手を使っても必ずやり遂げる!その強い意思を胸に抱き、今までと違った目で【ディスティニーフェアリー】を楽しんでいたのである。
その後に訪れるギルドチャットの祝福メッセージに四苦八苦しながらも、その勝利に喜びを噛みしめていた。
今の彩音に怯えや震えは無かった。一刻も早くロックスを復活させる。その一念のみを持って前を向いていた。
奥義ー神威ーの代償としてHPが0になるのを見届けた彩音は決して目をそらさずに復帰地点にロックスを帰還させる。
(ごめんねロッくん。また死なせちゃったけど、あたし必ずやり遂げるから!)
そしてはやる気持ちを抑えつつ、【特別クエスト】の報告をし【不屈の魂(欠片)】を受け取る彩音。4/5まで来た。あと一つだ。彩音の目の光はさらに強く輝き始める。
そして次の【特別クエスト】に進む。
『【デスタイラント】を討伐して来て下さい。』
(これは無理だろう・・・)
試すまでもなくわかるその強さ。そのハラハラして見ていたことを昨日の様に思い出す。意を決し彩音は、【クレイジーギア】のギルドマスターのやんやんさんに話を聞いてもらう事にした。やんやんさんは、すぐに時間を作ってくれて会って話を聞いてくれると言う。
程なくして、ギルドルームを訪れたらやんやんさんがすでに待機していてくれた。
「このあいだ振りだねロッくん。」
「すみませんあの時はちょっと取り乱しちゃって・・・」
それから、彩音は急に飛び出してそれ以降顔を出さなかったことを謝った。
他のメンバーも酷く心配していてくれたことをやんやんさんから聞かされ、後できちんと皆にも謝ろうと思ったのであった。
「わかったわ、ロッくんが変わりなくて安心した。それで話ってなんでしょ?」
「それが実は・・・・」
彩音はロックスの真実は伏せたまま本題に入ることにした。
そして【デスタイラント】の討伐に協力してほしい事と、今のロックスは絶不調であると言う事にして説明した。彩音は真実を打ち明けるか悩んだ末にそうしたのだ。
「そんな事ならいつでも大歓迎よ、内心もう辞めるとか言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだから。」
「それは、絶対ないです。あたしには必ずやり遂げないといけない事があるので。ただ今のロックスは本当にポンコツなので迷惑かけると思います。」
やんやんさんは、笑ってロッくんがポンコツなら全ての人がポンコツになっちゃうよと笑って聞いていたが、すぐに他のメンバーにも声かけて【デスタイラント】に挑みましょうと言ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます