《カクヨムコン10参加記念番外編》ダブル主人公な僕たち・前編

「はあぁぁぁぁぁー……」


 事務員の先生からとある封書を渡され、学生寮のフリースペースでお茶を飲みながらそれを読んでいた僕は、盛大な溜め息をついて机の上に突っ伏した。


「どうしたんですか? パトリック様。そんな大きな溜め息ついちゃって」

「アンジェ……」


 僕はアンジェの他には周りに誰もいないのを確認して、封書を見せる。


「わーお。また王宮からお呼び出しですか?勇者様は大変ですねぇ」

「王妃様と王太子殿下の狙いが分からないから怖いんだよおぉぉ。僕が王宮行くって言うとレイが凄い心配してくるしさ……」


 はぁー、と深いため息を吐く。


 二年生に進級してからというもの、学園内でもやたら注目されて落ち着かないし、勉強は難しくなるのに勇者活動とやらで時間は取られるし、レイと王太子殿下はバチバチだしで気苦労が絶えないのだ。


 弟たちよ。兄様は禿げそうだ。


「で、今回はどうやって回避するつもりですか?」

「それで悩んでるんだよ。前は勇者活動、その前は試験勉強……、さすがに続けては断り辛くてさぁ」


 向こうも勇者の心象は損ねたくないだろうからこれが原因で僕の実家に影響が出るとかはないだろうけど、僕だって間違っても王家の心象なんて損ねたくはない。


「……私が助けてあげましょうか?」


 僕がほとほと困り果てていると、僕の顔をヒョイっと覗き込んできたアンジェがニッと笑ってそう言った。


「それは助かるけど……僕、アンジェにお返しできるものとか何にもないよ? お小遣いも少ないし」


 一年生の時に誘拐事件の被害に遭ったあのゴタゴタのお見舞いって事で学園内ではお金を使わずに過ごせるようになったから、実家からの仕送りはもう貰っていないのだ。


 勇者活動の時にゲットできるアイテムや魔物のドロップアイテムはそのまま僕が貰っていい事になっているし、ついでに薬草を採集して売ったりもできるから、現金が必要な時はそうやって調達している。


「やだなあ、お友達からお金なんて取りませんよ。お金は自分で稼げばいいんだし!」


 ……アンジェも大概逞しいよね。


 アンジェは見た目こそふわふわの砂糖菓子のように可愛らしい女の子だけど、その中身は剛の者だということを僕は知っている。


「じゃあ、何の見返りもなく助けてくれるの?」

「うーん、そうして差し上げたいところなんですけど、実は私もパトリック様に手伝って欲しいことがあるんですよね。うふふ、ここは助け合いといきましょう、勇者様♡」


 パチンと可愛くウィンクするアンジェは、そこらの男を根こそぎ虜にできそうだが、僕としてはもう背筋に悪寒しか走らない。


 ああ、今度は僕は何に巻き込まれるのだろう……。

 


 ◇◇◇



「……で、結局このメンバーになる訳だ」


 アンジェと寮で交換条件の話をしてから1週間。僕達は街の外へ出る門の前にいた。


 アンジェの交換条件とやらは、「あるアイテムが欲しいから、ダンジョンに付いてきて欲しい」というものだったのだ。


『パトリック様さえ勧誘しちゃえば、自動的にレイ様とマックス様も付いてきますからね! おっ得ー!』


 というのがアンジェの言だ。


 そしてアンジェの予想通り僕がダンジョンへ行くと知ったレイとマックスは当たり前のように付いてきた。


『何、ダンジョン!? 危ないじゃないか、私も同行しよう』

『お、そのダンジョンオリジナル版ではなかった奴だな。よし、データ取りにいくか!』


 といった具合である。

 2人の行動パターンがアンジェに読まれ過ぎていてツラい。


 ちなみに、当然のようにダグラス様もいるけど、こっちは最初からアンジェに誘われていたらしい。恐らくこちらもさぞかしチョロかったことだろう。


 そして、どちらからも誘われていないしどちらからも教えられていないにも関わらず、当然のようにフワフワとクリスフォード殿下も付いてきている。

 これがクリスフォードクオリティロイヤルストーカーだ。


 結局普段と面子は変わらないけど、今日入るダンジョンはいつもより難易度が高い。


 何事も慣れてきた頃が一番危ないのだ。

 

 僕はみんなを危険な目には遭わせたくない。気を引き締めていかないと!!



 ……なーんて思ってた頃が、僕にもありましたよ。



「うーん、このダンジョンはクリア難易度が高いって聞いてたからパトリック様にも付いてきてもらったんですけど……。このパーティ強過ぎますね、余裕で最下層まで着いちゃいましたよ」


 アンジェの言うように、余裕で最下層まで辿り着いてしまった。


 結局いつも通りダグラス様が先陣を切って突っ込み、僕が弾け飛ばしたりレイが斬り倒したりして、ダンジョンにいる魔物達はあっという間に倒されていったのだ。


 マックスの適切なマッピングのお陰で道にも殆ど迷わなかったし……最下層ここまで拍子抜けするほど簡単に辿り着いた。

 え、殿下? フワフワしてたよ。


「アンジェが欲しいアイテムは最下層にあるの?」

「はい、ここのフロアボスのドロップアイテムなんです。最下層のモンスターはアンデッド系が中心なんで、ここまで辿り着けばこっちのものですよ!」


 そう言って余裕の笑みを浮かべるアンジェは、スタスタとダンジョンの奥へと進んでいく。


 確かに聖女の力はアンデッド系の魔物に特効があるけど、何かアンジェこのダンジョンについてやけに詳しいよね?


 僕は慌ててアンジェの後を追ってダンジョンの奥へと進んでいった。

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