第8話 ズルイ
---下校
「ねぇ、あんた。一緒に帰ろ。」
「え、一緒にですか?」
「なに、嫌なの?」
「いえ、いいですよ。一緒に帰りましょ。」
少し恥ずかしかったが、嬉しくもあったため、許諾した。
「私も電車だから、誰かと一緒に帰ってみたいなって思ってさ。」
「…? 僕、電車に乗って来たって言いましたっけ?」
「ドガッ」
「くっ…。」
これで今日、脛を蹴られたのは五回目だ。
「…あんたさ、もう敬語じゃなくてよくない? 私達もう仲良いじゃん。」
「え、えぇ…。」
「んじゃ、明日会う時は初対面じゃないからもう敬語禁止ね。」
「…分かりましたよ。」
俺と堀さんは駅へ向かう。
「登校する時、桜はちゃんと見た?」
「見ましたよ。すごく綺麗ですよね。」
「橋の上とか河川敷にベンチあるんだけど、そこに座りながら桜見るとすごく気持ち良いよ。」
「でも、人多くて座られてそうですよね。」
「まぁ、かなりの観光名所だから色々な所から人が来るからね。タイミング合わないと空いてないかもね。」
「ですよね。」
「ねぇ…。明日の帰り、何か食べ物持って来て、ベンチに座って食べない?」
「えっ、でもベンチ空いてないかもしれないんじゃ…。」
「明日は学校終わる頃まで雨降ってるから、多分ベンチには人座ってないと思う。」
流石に、出会ったばかりの人と二人でご飯を食べるのは少し恥ずかしい。
「ねぇ…。いいでしょ?」
堀さんが顔を赤らめながら近づき、誘ってくる。
「わ、分かりました。いいですよ。」
強気な堀さんのイメージとは反対の弱々しい姿に、俺は負けた。
「ふふっ、やった。」
堀さんはずるい人だ。
---駅に着き、電車に乗る。
帰宅ラッシュの時間帯ではないため、電車にそんなに人はいなかった。
四人席と二人席が空いていたが、堀さんが真隣に来ると緊張するため、俺は敢えて四人席に座った。
「…はぁ。よいしょ。」
勿論、堀さんはそんな事お構いなしに、俺の隣に座ってくる。
「ほ、他にも席空いてますよ…。」
「なに。別にいいじゃん。そんな事言ってたら明日のベンチでご飯食べる時、食べ物喉通らないよ。」
「そ、それはそうですけど…。」
「あ、そーだ。明日の話とかしたいから連絡先交換しよ。」
「あ、ですね。交換しましょ。」
スマホを開き、SNSのアプリで友達登録をした。
「私、久しぶりに連絡先交換したかも。」
「俺もです。」
少し開いてる電車の窓から、春らしい香りが流れてきた。
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「孤独人は目を瞑ると逢える君に良い悪戯をしたい」を読んでくださり、ありがとうございます。
第九話は、妹の綾の中学校に綾を迎えに行きます。
次の話が掲載され次第、もしよければ読んでみてください。
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