第6話 鬼!悪魔!
(おいおいおい、どこまで行っても人の気配なんかないじゃないかよ? どころか、森がより深くなってないか?)
あの「緑色の子供たち」を倒した後移動を開始してから数十分が過ぎているはずだ。時間が良く分からないが、太陽が元の世界と同様の周期であるなら、現在は正午を少し過ぎたところだろう。木々の間から見える日の光は頭上の真上から少し傾いているように思える。
(くそっ、せめて水場がないか? いい加減、のどがカラカラだ――)
森の木々の間を歩き続けてきたが、あれ以来、「生き物」には出会っていない。それは幸運だと言える。もしまた戦闘になったら、さすがに剣の切れ味が心配なところだ。
一応、木の葉や草木の葉などで血糊は拭き取ったが、刃こぼれが酷い。どうしたって切れ味は落ちる。
その時左腕がぽわんと光を発する。
レグナスは一瞬鞘に納められた剣の柄に手をかけようとした。
左腕に手甲が現れたら、『戦闘態勢』になったということだと、先程の件で理解しているからだ。
しかし、左手には「手甲」ではなく、違うものが浮かび上がる。
それは左手から数センチ離れた場所に「浮かんでいる」ように見えた。
(これは――。ん? もしかして、周辺地図? どうして今? あ、僕の意思に反応したってことか?)
地図らしきものはおそらくのところ
(ん? これは! 川じゃないか!?)
よく見ると、自分の体の向いている方角に、二本の平行線が描かれているのが見える。それは、自分の目の前を横切るように左から右、もしくは右から左へ横たわっていた。
(この方角で間違いないよな? とにかく、本当に川かどうか確かめてみよう!)
レグナスはそう決めてその方角に向けて歩み始めた。
さすがに足取りが速くなる。
なにせ、のどの渇きはもう限界に近い。
もし川なら、魚がいるかもしれない。魚がいれば食事がとれる――。
昨日(?)ホンノージに急襲をかける直前に腹ごしらえをしてから何も食べていない。のどの渇きが癒えたら、食事のことも考えなければならないだろう。
地図は開いたままだった。
どうやって閉じればいいかわからないが、もし閉じたいと思ったら閉じれるものだとしても、開き方もわからなければ次に確認ができなくなる可能性もある。
ここは、少し不格好だが、開いたままにしておく方が得策だ。
徐々にその「平行線」が近づいてくる。
すると、やがて、水音もかすかに聞こえ始めた。
(やっぱり、川だ――!)
レグナスはいてもたってもいられなくなって、駆け出した。
「平行線」はもう目前だ。
(もう少しだ!)
と、そう思った時だった。
「が! と、とまれぇ!!」
レグナスは大声で叫んでいた。
「ぬううう! おおおお!」
がしぃ! と、かろうじて土、いや、岩を掴む。
「ま、じかよぉおおお!」
確かに川だった。それは間違いない。
水音も聞こえる。
しかしそれは自分の遥か足の下からだった。
川は、谷の底を流れていたというわけだ。レグナスは危うく、その谷底へダイブするところだったのだ。
「こ、この、ゼクス! お前、本当に神なのか? 悪魔の間違いだろう!! く、くそっ!」
レグナスは崖の際に手をかけて宙吊りの状況になりながら恨み言を言い放つ。
もちろんゼクスからは何も反応がない――。
が、代わりに、左腕の地図が消え――。
(おいおいおい、シャレになんねーぞ? 今この状況で、かよ――?)
左腕にはあの黒紫の手甲が現れた――。
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