第15話 ヒフガへ④ 

 集会場に戻ると、いくつかのパーティーが出発の準備をしていた。冷静な表情のハイゼが僕たちを出迎える。すぐさまハイゼはニールに何かを伝えた。

 ニールは僕とディラの肩に手を載せてこの後の予定を告げた。

 車が準備でき次第ヒフガに出発するということだ。車といっても動物が牽く馬車のようなものであろう。車にはフリダラとラザのパーティーが乗り、他のパーティが護衛する体制でヒフガに向かう。陽が沈む前には到着できるという。


 村長とラザが一緒に出てきて、村長に握手を求められた。接触していれば会話のできる魔法を習得していたのだが、ニールの通訳を通して周囲に聞こえるように会話した。

 

 村長は村を救ってくれたお礼と、報酬分配のお礼を言った。僕も食事と服と木樵の供養のお礼を言った。そして、この村で入手出来る最高のものということで軍刀と鎧と兜を頂いた。村長のお孫さんからは、花の首飾り、さらに帝都までの無事を祈ってもらった。恐縮したが、援助のお陰で村が助かりますと加えた。必ず帝都まで無事に到着しますといって、ありがたくご厚意を受けることにした。


 村人に見送られて村を出る。この村に来たときと出るときで随分違うものだと思った。ニールに脇差しを返すつもりだったが、帝都まで持っていて欲しいと返却を拒否された。ヒフガで幼竜のフリダラを換金したら、ニールに何か護身用の武器を買ってあげようと思った。


 車の乗り心地は快適なものではない。自家用車のようにサスペンションがないので地面の凹凸の衝撃をそのまま拾う。それでも疲れていたのか、ニールは僕に寄りかかって眠りについてしまった。


 村を出るとどこまでも田園風景が広がる。麦よりも米に近く水が必要な植物のようだ。網目のように水路が繋がっている。石と煉瓦そしてセメントも発見されているようだ。


 田園を過ぎると堤防と見張り櫓。葛篭つづらに折れた道を登ると幾つもの木で渡した橋がある。橋脚は煉瓦とセメントで堅牢な割には橋板は貧相である。敵襲の時のは木を外すのだろう。川幅は広く100m近くあるように見える。対面の堤防は渓谷の崖のように岩肌がむき出しである。


 対面の上流を見ると小高いところに集落が見える。“水の民”とディラが教えてくれた。

 水の民は川に住む魔物と唯一交流ができる民族で、魔物達もここを縄張りとする魔物と争うことを避けて、陸系の魔物は先程まで滞在した村の方には侵攻しないということだ。確かにブンゲも亀のような魔物だった。

 また、温泉のある地域だけあって、火山活動も活発で、飛翔系統の魔物も村にはほとんど来ないということだった。


 ハイゼが何か僕に向かって何か言った。

 当然こちらの言葉は理解できない。


 <つづく>


※連続公開5日目

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