こちら「家」です

@sho-pasta

第1話

春。

桜が散る。


最近は早いねえ、とか言っていると3月も末である。僕が、大学に進学すると同時にはじまるはずの一人暮らしの家は、まだ決まっていなかった。地方大学に進学したので必要なのだ。


春風が吹き込む暖かい和室は僕の緊張感を和ませてくる。自然と畳の上に寝転ばせていた身体とともに意識までもとばしたかった。


「ここから通うには遠すぎるしなあ」


この時期になると学生寮も満員で、安めの賃貸も埋まっている。そろそろヤバいかな、と思いながらスマホの画面をスクロールすると、一つの物件がまだ空きがあった。


閉じかけていたまぶたが再び開いた。


料金も月3万以内で、大学も10キロ圏内で、まあ、自転車で行ける距離だった。この良物件を盗られまいと、いきおいよくタップした。


安心と一種の達成感で疲れがどっと出てきた。まだ昼寝には早いと感じたが、閉じていくまぶたに勝つことはできなかった。

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