08

 数日後、聖法庁から騎士や司法官が大勢遣って来た。同時にオーヴィリア大教院にも捜査の手が入ったらしい。こうして、オーヴィリア大教院から「聖女の涙」が盗み出された事件と、リズドア教会の周辺地域で頻発した強盗事件、「聖女の涙」強盗未遂犯達の行方不明事件の容疑者として、漸くマリオン法士が逮捕されたのである。

 マリオン連行後、聖法庁傘下の土地や建物を管理する「聖領省」、文化財の調査も担っている「文化管理省」の人間が合流し、本格的に地下回廊の調査が開始される。そして、その調査中に先頃行方不明となった人々が、地下回廊の隠し部屋の一室で変わり果てた姿となって発見されたのであった。



  ◇◇◇



 リズドア教会の近隣には小さな森がある。「聖女の涙」を狙う者達の一部が、潜伏していたこともある場所だ。今はエリスがその森の中に潜んで教会の様子を窺っていた。彼女が立っている場所はリズドア教会の敷地よりも高い場所にあり、壁の中を少しだけ覗き見ることが出来る。其処彼処に上質な法術衣を着た者達が闊歩している光景を目の当たりにして、エリスは眉間に皺を寄らせた。法士との付き合いが多いエリスだが、一応は敵方である魔術師の端くれ。気分の良いものではない。

「やあ、お疲れ様」

 背後から声を掛けられ、エリスはしかめっ面で振り返った。案の定、其処にはヴィンリンスが立っていた。教会内に居る法士達とは違って法術衣を身に着けておらず、頭巾の付いた外套を纏って遠目では正体が分かり難い様にしている。同じ聖法庁の所属であっても、他部署の者に自分の存在を知られたくはないということなのだろうか。彼の言動には不審な箇所があるが、今回の彼の仕事内容が後ろ暗い物であったのは真実なのかもしれない。

「……来たわね」

「そんな嫌そうな顔をしないで。それにしても、君にしては珍しい失態だね。経験豊富な君でも、流石に今回の立ち回りは難しかったかな。だから協力するって言ったのに……」

 普段通りの何かを企んでいるような笑顔を引っ提げてエリスに近付き、隣に並ぶ。彼もまたエリスが先程迄眺めていたリズドア教会へと視線を送った。

「見てきたようなことを言うじゃない」

「実際見てたからね」

「……」

 彼の胸倉を掴み、問い質してやりたいことがあった。だが、喉元迄来ている言葉を本当に口から出して良いものか、エリスは悩む。彼は断じて味方ではない。その上、狡猾だ。上手く誤魔化されて、余計に混乱させられることになる恐れがあった。だが悩みはしたものの、結局怒りを吐き出したい欲求が勝った。

「ねえ、司法省の監視って貴方?」

「え、何それ?」

 ヴィンリンスは心底驚いた様子でエリスの方へと振り向いた。

「この前、リズドア教会に来た司法官が言ってたのよ。『監視を付けていたから引継ぎは不要』って」

「うわあ、また誤解を招くようなことを……。て言うか、司法官に直接会ったの? 捕まるよ」

「よく言う。貴方が根回ししてくれたんでしょ」

「多分クロエもね。まあ、私としては君とは今後とも良い付き合いをしていきたいから」

 思いの外あっさりと、ヴィンリンスはエリスの言葉を肯定した。そして、エリスがクロエの名を聞いて微かに顔を顰めたのに気付き、彼が原因でエリスが疑心暗鬼に陥っていることを察した。

「クロエのことを考えているのかい? 余り責めないであげてね。彼には彼の事情があるのだから」

「分かってはいるけど、今後こういうことが続いてもらっては困る。今回は問題なかったけど、状況によっては致命傷になりかねない」

「うん、だからさ。私と同じ対応で良いんだよ。適度な距離を保って、ね」

「だから、分かってるって」

 苛立ち紛れにエリスが言葉を返した時、リズドア教会の方から、わっと喚声が聞こえた。双方とも教会の方を見る。だが、何が原因で声が上がったのかは分からなかった。

「騒がしいなあ」

 エリスとの会話を楽しんでいたヴィンリンスは、水を差されたと感じたのだろう。珍しく不機嫌そうに吐き捨てた。

「今は騎士や司法官だけじゃないからね。犠牲者が複数出た所為で外部の人間に隠し通せなくなっちゃって、野次馬も大勢押し掛けてきてるのよ」

「ふーん」

 折角エリスが説明してやったというのに、相手の返事には心が籠っていない。内心かちんと来たが、過ちを指摘する程に仲の良い間柄でもなかったので、彼女は踏み止まった。

 一方のヴィンリンスは気紛れに話題を変えた。

「そう言えば、ねえ、聞いたかい? 地下の犠牲者、死んだのは『聖女の涙』が原因じゃないんだって」

「それって、マリオン法士が自発的にってこと? 何故?」

 思い掛けない内容だ。不快な気分が一瞬で吹き飛ぶ。

「うーん、これはあくまで勘――私の想像なのだけれど、彼はただ『聖女の涙』に操られていただけじゃなく、『聖女の涙』に刻まれたデーメテーラの姿に魅了されていて、最終的には『自分だけの聖女を奪われまい』という思考に至ったんじゃないかな。だから『聖女の涙』に近付く者達を悉く排除していった、と」

 ヴィンリンスは、美しい恋物語を語る時の様な甘い口調で言ったが――。

「何それ、気持ち悪いわね……」

「そういう反応なんだ」

 エリスの評価は辛かった。価値観は人によって異なるもの。ヴィンリンスは期待していなかったエリスとの隔たりを目の当たりにして、苦笑した後に肩を落としたのであった。



  ◇◇◇



 同じ頃、リズドア教会の敷地内を老齢の法士が、とぼとぼと歩いていた。周囲には誰も居ない。皆、聖法庁から来た高位の法士達や地下回廊の調査状況に興味津々で、其方を見物する為に出払っているのだ。法士に有るまじき俗念である。普段ならば彼等の行いを窘める所であるが、今の彼にはそれを行う気力と体力が残っていなかった。

 ここ暫くは、教会長を務めるこの老人にとって非常に過酷な毎日であった。田舎にそぐわない残酷な事件の事後処理に追われて休む間もなかった。だが、果てしなく続くと思われた仕事も中央の役人達が幾らか引き継いでくれて、漸く僅かな時間ではあるが休みを取ることが出来るようになった彼は、頭の中をぼんやりとさせたまま建物の外へと出たのである。

 歩を進める度に身体が軋む。自分の年齢と能力の限界を嫌という程思い知らされる。彼は思わず足を止めた。全てが終わったら教会長の職を辞して隠居しようかという思いが浮かんだ。否、彼自身が望まずとも遠くない未来にそれは実現するであろう。責任者の仕事の一つは責任を取ることなのだから。

 教会長は深々と溜息を吐いた。その時、ざっと土を踏みしめる音が聞こえ、彼は音のした方へと振り向く。すると、そこには年若い尼僧が一人立っていた。

「貴女は?」

 そう尋ねてはみたものの、答えは直に思い浮かんだ。リスドア教会に尼僧は居ない。故に、恐らく彼女は聖法庁から来た役人の一人なのだろう。

 どういうつもりか、尼僧は教会長の問い掛けに答えなかった。代わりに胸元に提げていた円形の徽章を摘まみ上げた。外周の或る部分に尼僧の指が触れると、蓋になっていた徽章の上面が持ち上がる。中から現れたのは、黒蛇に巻き付かれた剣の絵であった。剣の奥には聖法庁の紋章を簡素にした図形が描かれている。

 それを見た教会長は目を見開き仰け反った。今迄実物を見る機会はなかったが、その絵柄の紋章が何を示すのか、彼も耳にしたことがあった。

「異端審問官!」

 教会長が自身に掛けられた嫌疑を理解した瞬間、尼僧は少女のものとは思えない程の怪力で彼の口を塞ぎ、隠し持っていた短剣を振り上げた。



  ◇◇◇



「あんたが見つけてくれた隠し部屋、晩年リズドア公があそこに籠っていたようでね。日記が見付かったの。リズドア公の日記よ」

 任務完了後、居室に戻ったエリスはそう言って、こっそり隠し撮りしておいた日記の画像を表示させた。画像が映し出されているのはエリスの手元にある魔導具の内部であるので、彼女と背中合わせに座っているアリアスからは見えない。あくまで、エリス自身が再確認する為の行動であった。

 球体の魔道具を覗き込みながらエリスが語った日記の概要は、以下の様なものであった。


 ――幼少の頃、両親に続き愛する妹デーメテーラを流行り病で亡くしたリズドア公は、法術師として覚醒した後に精神操作によって幻覚を見せる法術具を製作し、まるで生きた人間の様に成長していく彼女の幻影を作り出した。


「この法術具が、現在の『聖女の涙』ね」

 そう注釈を挟んだ後、エリスは説明を続けた。


 ――せめて幼い妹には生きていてほしかった。そんな願いの下に、彼は「異教徒を滅する目的以外で、神に非ざる者が物を創造してはならない」という法術師の掟を破ったのだ。

 けれども、製作後数年はまだ時折その法術具を使用して、妹の思い出を私的に楽しんでいるだけだった。歪み始めたのは幻影の彼女が子供と呼べる年齢を過ぎ、成人手前の娘の年齢まで成長した頃のこと。輝くような生命力に満ち溢れた美しい少女を見て、リズドア公の妹に対する思いは徐々に変化していったのである。

 常に彼の心を捉えて離さなかったデーメテーラ。リズドア公が法術具に与えた「生きている妹」という定義は、何時しか「理想の妹」へと、更には「理想の女性」へと掏り替わっていく。術者から「理想の女性」という新たな定義を与えられたことで、デーメテーラの幻影は「常に相手を魅了させ続ける能力」の獲得を迫られる。結果、「精神操作によって相手の好意をデーメテーラに向けさせる」という方向性を法術具が自発的に見出したと考えられる。

 また、リズドア公は常にデーメテーラと共にありたいと思うようになり、この頃法術具を自動発動型に改造している。しかし、そこで問題が発生する。製作当初の予定から外れた改造が行われたことで、法術具に内蔵されていた装置の一箇所に微小な負荷が掛かり始めたのだ。やがて、負荷が蓄積し軽度の故障が発生する。

 リズドア公が長年故障に気付かなかったことも、状況の悪化に一役買ってしまった。法術具は自身に魔力を引き込んで、更に深刻な障害を引き起こす。他者の心を魅了する法術は歪められ、他者の精神を汚染する性質が付加された。その為、デーメテーラに魅了された者は、最終的には犯罪に手を染めることさえ躊躇わなくなる。この新たな特性は、術者であるリズドア公自身をも病ませた。

 当然ながら、基となる法術具の異変はデーメテーラの幻影に設定された人格にも影響を与えた。可憐で魅力的なだけの少女は強欲で残忍、喜々として異教徒の教え――つまりは魔術を嗜む魔女へと変貌を遂げてしまったのである。


「人間じゃない彼女は普通の魔術が使えないから、術者を必要としない自動発動型魔術の応用技でも使っていたのでしょうね。故障のお陰で魔術の動力となる魔力は膨大にあったようだし」

 この部分はリズドア公の日記に記載された話ではなくエリスの推測なのだが、正しい解釈であったことが後日ヴィンリンスの口から説明されることとなる。

 エリスは再び話を日記の内容に戻した。

「彼は壊れた妹の言うことを何でも聞いたそうよ。過大な増税も、略奪や殺人までも。けれど、マリオン法士とは違って術に対する耐性があったリズドア公は、自らの過ちに気が付いた。だから、朦朧とする意識の中で何とか聖法庁に手紙を送り、聖ハイエル率いる討伐隊がやってきた時も自分から城門を開いて中に引き入れた。でも、そういった手助けを聖法庁は全て妹のデーメテーラがやったことだと勘違いしたの。リズドア公は罠だと疑われることを恐れて、手紙の差出人が自分だと分からないようにしていたから。悪事を行っている当の本人が、救いを求めているとは普通思わないじゃない」

 嫌味たらしく口の端を歪ませて、エリスは「それが新たな悲劇を生成してしまう訳だけど」と付け加えた。彼女にとっては僅かばかりの金銭が湧き出す小さな泉でしかなかったが、他の大勢の者にとってはただただ悲劇であったに違いない。

「ともあれ、こうして彼は望み通りに死を賜った。後の世に大きな負債を残して」

 ここから先はリズドア公の死後の話――ヴィンリンスが語った聖法庁の裏の記録だ。

 公式には前領主の妹とされていたデーメテーラの幻影は、聖法庁の強い後押しもあり、リズドア領の領主の地位を継ぐこととなる。彼の地の救済に協力した功績により、というのが表向きの推薦理由であったが、自分達に縁のある人物を新領主に据え、前領主よりもましな政治を行わせることによって、法術師であった前領主の為に傷付けられた彼等の威信を取り戻すことが聖法庁の真の狙いであった。だが、デーメテーラは彼等の期待に答えなかった。リズドア領の混乱は、元凶であった筈の前領主が死んだ後も続き、領民は聖法庁へ再度の救済を求めた。

 調査の末に事件の黒幕が判明し、慌てて駆け付けた聖ハイエルが、デーメテーラの正体が法術具であることに気付いたのは、彼女との戦闘の最中だったという。彼は一時的に法術具の機能を停止させるが、完全な破壊までは行わなかった。

 その後、ハイエルは聖法庁にデーメテーラ討伐の結果のみを報告して子細は伝えず、後年リズドア城跡地にデーメテーラの偉業を称える教会を建てさせた。聖法庁は自身の不手際が表に出ないよう、デーメテーラは善人のままにして置く方針を取ることに決め、彼の要望を渋々ながら受け入れた。そして、ハイエルはその教会にデーメテーラの本体を隠した。

 しかし、彼の意図に反して事件が起こる。男に対する独占欲が強いデーメテーラは、女とは相性が悪かった。事が露見したのは彼の死後、突如再起動した法術具に数人の尼僧が殺された後だったという。

 余談だが、魔術側世界に残っている「デーメテーラが不死の魔女だった」、「聖ハイエルがデーメテーラを石に封印した」といった記録はそれぞれ、彼女が法術具の生み出した幻影であったが為に如何なる攻撃も通用しなかったこと、聖ハイエルが法術具本体の機能を停止させることによって幻影を消し去るに至ったことが曲がって伝わったものだと思われる。

「『聖女の涙』――いや、デーメテーラは戻りたかったのかな。歪とは言え、お兄さんと幸せに暮らしていたあの頃に。だから、居城跡地に建てられたリズドア教会へと帰ってきた。強盗事件も過去の再現?」

「或いは後悔していたのかもね。だから、やり直そうとした。今度こそ幸せな時間が壊れてしまわないように、とね。でも、結果は同じだった。当然よね。彼女自身は壊れた法術具のまま、何も変わっていはいなかったんだもの。……なんて、あんたに釣られて感傷的に語ってはみたけれど、実際の所、法術具に意志なんてものは存在しないわ。『デーメテーラが生きていれば、恐らくこう考えたであろう』と法術具が型通りに判断し、それを映像として私達の精神上に投影したに過ぎないのよ」

「なるほどねえ。しっかし、何で聖ハイエルは『聖女の涙』を破壊しなかったのかなあ。後の禍根になるとは思わなかったのか?」

「さあね。ヴィンリンスと同じことを考えたとか? 法術結界の中で魔力を一通り浄化した後に修復すれば、強力な兵器として使えるかもしれないって。批判を恐れて一時的な隠し場所としてリズドア教会を建てたけど、何れは回収するつもりだったのかもね。回収前に死んでるけど」

 ヴィンリンスは語らなかったが、彼の性格を考えたらそれくらい企んでいてもおかしくはない。そして、もしエリスの推測通りであるならば、その兵器の砲口は何方へ向けられるか。言うまでもなく、敵対勢力たる魔術側世界に対してだ。彼が一応は協力者である筈のエリスに全てを伝えなかったのは、自身の計画を魔術師である彼女に知られたくなかったからなのだろう。実際に気付いてしまったからにはならず者に近い立場のエリスであっても、流石に彼女が魔術師資格を登録している組織へ報告せざるを得ない。

「ああ、それがヴィンリンスの本心か。やっぱり悪事を企んでいたんだなあ」

「まあ、ヴィンリンスだからね」

「『ヴィンリンスだから』で済んでしまうのが、あいつの一番狡い所なんだよなあ」

「ねえ」

 仮に騙されたとしても、常に悪事を成している者を信じる方にも問題があるだろう。エリスも彼に対しては最早怒りを通り越し、呆れや諦めの境地に至っていた。だが、普段悪巧みを行わない者に対しては、それでは済まない訳で。

「で、クロエの方はどうするの?」

「そうねえ」

 エリスは少し考え込む。クロエの裏切りは目下一番の懸念事項だった。

「私、彼が真実を語らなかったことについて、聖法庁の官僚としては正しい姿勢だと思っているの。何せ聖人として今尚信仰の対象となっているデーメテーラとハイエルに関わる話。かなりの大事なのよね。その割りに外野の私達に対して十分譲歩してくれたとは思う。でも、今後もこういったことを続けられるとやっぱり困る。中には命懸けの仕事だってある訳だし。だから、彼とは少し距離を置いた方が良いのかもしれないわね」

「『彼とは』なの? 『聖法庁とは』じゃなく」

「いきなりは無理よ。私は法術側に深入りし過ぎているもの。過度に警戒されて、消されでもしたら堪ったものではないわ」

「むう……」

 エリスの説明を聞いてもアリアスはまだ不満げだったが、従姉妹の頑固さを彼女は良く知っている。故に、深く追及はしなかった。

(それにしてもヴィンリンスの奴、どうして私に接触してきたのかしら。私が「聖女の涙」を売り飛ばそうとしていたから、止めようとした? それとも、私達が真実に気付く可能性があると分かっていたから? だから、味方に引き入れると見せかけて私を制御しようと近付いてきたのか? 或いは何かもっと別の――)

 結局、今回の騒動のお陰でその危険性が明るみに出た「聖女の涙」は、分析の為にヴィンリンスが所属する法術管理局研究部へ送られることが正式決定したそうだ。少なくともこの件に関しては、ヴィンリンスの計算の範囲内であったことは想像が付いた。だが、他にもまだ何かあるのではないか、何か見落としがあるのではないかという思いがエリスの頭を悩ませる。

 そんな時、背後から大きな溜息が聞こえてきた。

「なーんか、最初から最後まで聖法庁に振り回されてばっかりだったよね、私達」

 認めたくはないが、この意見にはエリスも同意せざるを得ない。個人で相手するには余りに強大な組織だ。逆に此方が卑小だから見逃されている面もあるのだろう。彼等の姿勢を侮辱と取るか、救いと取るか。

「本当にね」

 手に持っていた球体の中には、今は何も映し出されてはいない。一仕事終えた魔導具を手放すと、予め設定されていた通りに宙へと舞い上がった。まるで風に煽られた泡の様にふわふわと漂いながら。

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