Q. 配信にてぇてぇは必要ですか?~合コン企画「ベストカップルGP」に騙されて出演したVtuberの末路~
きなこ軍曹/半透めい
夢見るな の場合
A1
「……あー……勝ちたかったなぁ……っ」
明かりも点いていない部屋に一人。椅子の上で足を抱えながら、熱くなる瞼を膝に押し当てる。そうしないと何かが溢れてしまいそうだった。ヘッドホン越しに微かに聞こえるパソコンのファンの音。胸にぽっかりと大きな穴が空いてしまっているような気がした。
私たちは負けた。誰の目から見ても明らかに、完膚なきまでに負けてしまった。負けた理由は沢山あれど、相手が悪かった、仕方がないよと皆が励ましてくれるだろう。でもそうじゃない。一番の理由は、私が。私のせいで負けたのだ。
だからこそ足を引っ張ってしまったことが悔しくて堪らない。もし、私がもっと素直だったら、素直になれていたら、この結末は変わっていたのだろうか。変えることが出来たのだろうか。そんなことを考えたところで何の意味もないことくらい分かっている。それでも考えずにはいられない。もし、もう一度でも機会があるのなら、今度こそちゃんと自分の気持ちを。
『────────』
ヘッドホンから響く着信音。滲む視界越しに、画面に映る彼の名前が見えた。
「っ……! …………ふぅ。あー、あー」
袖で目を擦り、息を整える。少しだけ鼻声だが、これくらいなら気付かれることはないだろう。もし気付かれたとしても、それを指摘するような彼ではない。
意を決して、通話を開始する。彼は、私に何を伝えようとしているのだろうか。私は、彼に何かを伝えられるだろうか。
◇
『めっっっっっちゃ面白い企画すんねん! ホントにとんでもないやつやから! 絶対リアタイしろよ! 絶対やからな!』
30分前に聞いた悪友の言葉を思い出す。うんざりするほど念押しされ、逆に見る気が無くなったような気がしなくもない。それでも高校時代からの付き合いがある相手にお願いされれば無理に断るような性格ではないし、向こうもそれは理解しているはずだ。
そして現在、目の前のPC画面の中では、二次元のキャラクターが表情豊かに映し出されている。所謂Vtuberというやつだ。現実の素性を隠しながらも、動画投稿サイトを通して全世界に活動を発信する彼らのことを、今や若い世代で知らない方が珍しいだろう。その内の一人である、このキャラクター。全体的にどこかチャラそうな感じで、女性心をくすぐりそうな悪い笑みが特徴的な男性Vtuber。そんな彼の口から随分と聞き馴染みのある、というかさっきまで散々イヤホン越しに聞かされた声が聞こえてくる。
『合コン企画! 第一回「ベストカップルGP《グランプリ》」をここに開催する!』
「まじでとんでもない企画じゃんか」
キャラの下に小さく表示されている、【カナタ・ノミラーイ】。それが彼の名前だ。見た目通りのチャラい男だが、配信を盛り上げるためなら手段は選ばず努力は惜しまないという強引な配信スタイルで、賛否両論を集めながらも人気Vtuberの道をひた走っている。
今や多数存在するVtuber事務所の中で、比較的新しい部類に入りつつも中堅以上の地位を獲得している「ぜろいちに」に所属し、二年という活動歴からは異例のチャンネル登録者数45万人を突破した、とネットニュースでも話題になっていた。
そんな悪友カナタが大々的に打ち出した、合コン企画。
Vtuberは、曲がりなりにも人気商売。だからこそ暗黙の了解というものが存在する。
『パートナーを作るべからず』
勿論、例外的な側面があることも事実だ。既婚者のVtuberだったり、彼氏彼女持ちを公言しているVtuberだっている。だが、あくまでも例外だ。限りなく少数派であることは間違いない。実際、クリスマスに配信しなかったというだけで炎上してしまったVtuberもいるくらいだ。
ましてや企業勢ということを考えれば、今回の企画もよく事務所がオッケーを出したなという感想しかない。リスク以上のメリットが何かしらあると考えたのだろうか。確かに反響は多そうではあるが。現にライブ配信の視聴者数はゴールデンタイムということもあってか、五万人を超えている。
『本当なら先に企画説明をすべきかもだけど、今回は参加者を先に発表していくぞ! まずはこちらぁ!』
カナタの煽り文句と共に、画面にデカデカと一人の女性Vtuberが映し出される。
『ぜろいちに、いや、全Vtuberの中でも圧倒的にセンシティブ! これまで一体何人の男どもを掌の上で転がしてきたのか――【
『どうもぉ~。ぜろいちにの清楚担当ぅ、藤野紫でぇ~す。今日はよろしくお願いしまぁ~す』
:むらさき姉さんキターーーー!
:待ってたよ姉さーん!!!!
:一番合コンに連れてきちゃいけなさそうなタイプ来たwww
:嘘つけwww絶対に清楚担当だけはないだろwww
:清楚はそんな艶っぽい声は出さんねん
:清楚(どすけべ)
紫さんの登場で、コメント欄は大いに盛り上がりを見せている。その姿はとても清楚とは言い難いもので、露出は多く煽情的で、太ももを締め付けるタイトスカートの切れ目からは微かに紫色の下着がチラついている。言わずもがな、胸もとても大きい。
『続いては彼! 握力100のゴリラマン! ぜろいちにのパワー担当――【ベリムーサ・ベリベリ】!』
『皆さんこんばんは。ぜろいちにのゴリラ担当、ベリムーサです。今日は女性の皆さんを優しくエスコートさせていただければと思います』
:ゴリラ担当きたwww
:ベリ兄貴ちーーーーっす!!
:本日もお勤めご苦労様です! 兄貴!!
:見た目に反して、物腰は穏やかなのがギャップで良いんだよなぁ
:ゴリラは優しい生き物って有名だろ。怒らせたら怖いだけ
:あれ、兄貴って既婚者じゃ……?
:お、浮気か? 嫁に報告しろwww!!
:言葉には気を付けた方がいいぞ。潰されるぞ(物理)
ベリムーサさん――通称「ベリ」さんは筋肉ムキムキのイケオジだ。脚色してムキムキに描いてもらっているかと思いきや、何とリアルと大して違わないらしい。そして何よりも驚きなのが、企業勢であるにも関わらず、彼は既婚者であり、それを公言しているのだ。年齢的な部分でそこあたりの制約が他よりも少なかったのかもしれないが、それでも事務所の狭き門を突破できるだけあって魅力溢れる御仁である。
『続いてはこちらぁっ! 生意気言わせば天下一品! ぜろいちにの生意気担当――【
『誰が生意気担当やねんッ! ちょっと登録者数が多いからって調子に乗りやがって! こちとら先輩やぞっ!』
『あの、はやく挨拶してもらっていいすか? 時間限られてるんで』
『っ!! みんなやっほー! ぜろいちにの小生意気担当、召巻イナムでっす!』
:やっほーーーーー!!!!
:イナムちゃーん! 今日も可愛いねー!!
:生意気から小生意気にちょっとレベルアップ?したな
:そもそも名前が「なまいきむすめ」のアナグラムなんだよな
:しっ! 本人は知らずに可愛い名前だって気に入ってるんだから!
:草
:草
:そんな秘密があったのか。初めて知ったわ
映し出されたのは制服を身にまとったJK系Vtuber。生意気生意気言われているが、実は頑張り屋さんな部分がリスナーから大人気だったりする。何となくだがカナタの配信スタイルに似ている気がするので、カナタの妹的な立ち位置だと勝手に認識している。本人に言ったら滅茶苦茶イヤな顔をされそうだ。ちなみにカナタが三期生で、紫咲さん、ベリさん、イナム嬢が二期生である。
『どんどん行くぞぉ! 続いては、かけっこなら負けないぞ! ぜろいちにのショタ担当――【シュン・ショータ】!!』
『みんなこんばんわ~! ぜろいちにのシュンでーす! 別にかけっこに自信があるわけじゃないけど、他の皆に負けないように頑張るよー!』
:シュンくーん! 今日もがんばって~~~!!
:お姉ちゃんが応援してるよ~~~!!
:012にショタ担当なんていたのか
:俺も初めて知った。なんというか……可愛いな
:おまわりさんコイツです!!
:なっ!冤罪だ!!
シュンくんは見た目がかなり幼い男性Vtuberだ。リスナーの男女比率がなんと2対8という驚異的な数の女性視聴者を抱え、彼女たちは「お
『正直もう疲れてきた! が、まだまだ行くぞぉ! 見た目は子供、頭脳も子供。ぜろいちにのロリ担当――【まみむ】!』
『みんな~! まみむだよぉ~! 今日もいっしょに頑張ろうね~!』
:まさかのwwwまみむwww
:年齢制限大丈夫なのかよwww
:じ、事務所がオッケーしたなら良いんだよ多分知らんけど
:責任は誰かが取ればいい!
:誰か(カナタ)
圧倒的ロリ。その一言に尽きる。見た目、声、言動その全てが女児を相手にしているように錯覚してしまうロリ系Vtuber。合コン企画に何とも言えない犯罪臭がしてきた。ちなみにシュンくんとまみむちゃんは、カナタのひとつ後輩の四期生である。
『そして次はぁ!! ぜろいちにの一等星、皆の未来を輝かせるぜッ――【
:うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおカナタァァァァァ!!!
:今回の企画立案者 兼 責任者ぁぁぁ!!!
:なんか一人だけ紹介文がカッコいい気がしなくもないwww
:他メンバーの目が明らかに細くなってて草
:ほんとだwwwめっちゃジト目じゃねーかwww
:でも実際、カナタの人気凄いからなぁ
:それはそう
:活動歴そんななのに、事務所のトップに迫る勢いだもんな
:アンチも多いが俺は応援してるぜー!!!
:うおっ、気付いたら視聴者数めっちゃ増えてんじゃん!
:もしかしたら10万超すかもな
コメントの言う通り、今や視聴者数は9万人近い。そして、これだけの視聴者を集めたのが他ならぬカナタだというのだから、悪友として鼻が高い。星のように輝く彼はこれからも業界やリスナーを照らし続けるのだろう。それを近くで応援できるというのは何とも幸運なことだ。
『まだ終わりじゃないぜぇー! ガチ恋勢も少なくない、本企画のダイナマイト! ぜろいちにのツン担当――【夢見るな】!!』
『ダ、ダイナマイト……? ツン担当……? し、知らないうちに不名誉な称号ばっか付けられてる気がしますが、夢見るなでーす。みんなばんわー』
:あれ、カナタの後にまだいるんだ
:ってことは今、男3女4って感じか
:って夢見マ!!!???
:こーれは荒れます
:よく事務所もオッケーしたなぁ
:人気ではあるんだけどね……
:今回の企画に呼ぶにはガチ恋勢が結構多そうなイメージある
:そのイメージで合ってるで
:このコメントは削除されました
:ツン担当なのは間違いない!
:た、たまにデレるやろがい!!
:デレ(同性限定)
:やっぱり今回の企画にはあんまり合ってなさそうな気がするけどなぁ……
:まあ同期に比べたら登録者数も少ない方ではある
:まあユメミンはこの前ちょっと燃えてたし……
:それでも箱の中ならガチ恋勢は多い方よね
:五期生はやばい、ガチ恋勢が多すぎる
:このコメントは削除されました
:炎上不可避
「夢見るな、か。名前だけは聞いたことある気がするけど、声とかは初めて聞いたなぁ」
スクリーンに映し出されたのは、黒髪ロングに明るい茶色のメッシュが特徴的な、どこかツンとした面立ちの女の子だった。声は少し低めな気もするけど、十分に女の子らしい可愛い声だと思う。こんな子もいたんだなぁと知れただけでも、今回の企画は大きな意味があったと言えるだろう。
しかし、何やらコメント欄がざわついている。どうやら彼女は、所謂ガチ恋勢なリスナーを多く抱えているらしい。それが原因で今回の企画が荒れないか、リスナーたちも心配しているのだ。既にコメントの何件かがモデレーターによって削除されているのを見ると、あながち杞憂というわけでもなさそうなのが恐ろしい。
『さて、事務所からの参加者は以上だ』
『ん? 数え間違いじゃなければ男の数が少ない気がするが?』
『そうねぇ。私、イナムちゃん、まみむちゃん、るなちゃんの四人に対して、カナタくん、ベリさん、シュンくんの三人しかいないわよぉ?』
:どゆこと?
:急に誰かが予定キャンセルしたとか?
:もしくは単純に女子が一人多いように設定されてる企画ってこと?
参加メンバーのことについては出演者も詳しく聞いていないのか、不自然な男女の人数差に、リスナー共々首を傾げている。
――――ティロンティロン♪ ティロンティロン♪
その時、普段から使用している通話アプリが着信音をあげた。有難いことに交友関係は狭くないので、今回のように急な着信があることも決してゼロではない。にも関わらず、だ。とても、とても、とても嫌な予感がした。
恐る恐る、通話アプリを管理しているサブモニターに目を向ける。そこには【カナタ・ノミラーイ】の名前とアイコンが表示されている。
『あー、実は最後のひとりは事務所に所属してないんだ。もちろん事務所には許可は取ったけど、個人勢っていうイレギュラーな存在ではあるから秘密にしといた。驚いただろ?』
画面の中の悪友は悪戯が成功したような笑みを浮かべている。それが誰に向けられたものなのか。他の出演者? リスナー? きっとどっちでもない。
:個人勢マ?
:このメンツの中に入れる個人勢Vtuberとかいたっけ?
:いや、どちらかと言うと入れられるって方が正しくないか?
:でも売名的にはめちゃくちゃ良くない?
:じゃあお前この中に入りたい?
:本っ当に入りたくない
:だよな
:というか、主催がカナタなら普通にあの人じゃないの?
:誰?
:だれ?
:……ああ、あり得る
:え、だれ?
:なるほど、あの人か
:カナタがよく話してる、ってかコラボしたりしてるじゃん
:ああ、あの人か!
『男性Vtuberが選ぶ「彼女にしたいランキング」において、男でありながら数多の女性Vtuberたちを抑えて第二位にランクインした個人V――――【
大きな叫び声と共に、この一年間で一番見てきたと言っても過言ではない男性Vtuberの写真が映し出される。その間も、着信音は鳴り続けている。
『ここで更に面白い情報だ! 何と、
:は?
:え、やばすぎん?
:はwww?
:陽くん見てるー?w
:陽くん見えてますかー?
:カナタ鬼畜すぎて草
:二位すごいけど草
:あまりにも可哀そう(´;ω;`)
:何も知らない
:また運の悪さが出ちまったか……
:友達運なさすぎて草
:まじで通話かけてんじゃんwww
『あれー中々でないなぁー? 絶対リアタイしてるはずなんだけどなぁー? もしかしてトイレにでも行ってるのかなぁー?』
:棒読みやめいwww
:あまりに白々しすぎる
:これは不運属性が輝いてるな
……どうやら予想は一寸の違いもなく的中してしまったらしい。そう、今スクリーンに映し出されているのは、自分のVtuberとしての姿。個人勢Vtuber【
『――――あ、やっと出た』
「やっと出た、じゃないよ。何やってんのさ」
『放送は見てんだろ? ってことは何するかは分かってるよな?』
「いや、企画説明もまだしてないから何やるかは分かってないよ。出演者の一人に組み込まれてるらしいってのは把握できたけど、そもそも何で僕が選ばれたのか聞いていい?」
『え? だって陽、一年くらい活動してるわりに炎上らしい炎上とかしたことないじゃん? この機会に少しくらい燃やしてやろうかと思って』
「まじで何やってんの!?」
:草
:あまりにも草
:不憫すぎて草
:誰かこいつ止めろwww
:事務所はなんでオッケーしたんだwww
:陽は普段穏やかなのに、カナタと絡むときだけ割と勢い激しいよなw
:長年の信頼関係ってやつか
:信頼関係(ちょっと燃やすか)
:草燃えるて
:陽くん知らない人向けにネット記事コピペ貼っとく↓
・・・・・・
活動歴約一年の個人勢Vtuber、
企業に属していない完全フリーな立場でありながら、それに迫るだけの実績を数多く達成する彼は、単純な登録者数以上に認知度が高い。
また、雑談やゲームなどの配信もそつなくこなし、特に他Vtuberとのコラボ配信では幾度となくコラボ相手のチャンネルを伸ばしてきた実績もある。
家事全般が得意な点も含めて、リスナー以上に同業者たちからの信頼が厚い。
先日開催されたVtuber格付け企画の中で、男性Vtuberでありながら、「男性Vtuberが選ぶ彼女にしたいVtuberランキング」で2位にランクインし、トレンド入りを果たした。
・・・・・・
コメント欄で何やら解説してくれている有難いリスナーが目に入る。が、申し訳ないことに今はお礼を言う余裕すらない。怒涛の勢いで企画専用の通話サーバーに入れられ、他メンバーがいる通話に参加することになった。
「こ、こんにちはー。お疲れ様ですー」
『お疲れさまです。お久しぶりですね、陽くん』
「あ、ベルさんお久しぶりです! 先日はお世話になりました」
『いえいえ、こちらこそ。ちなみに陽くんは他の方とも面識がある感じですか?』
『私はあるわよぉ。といっても少しだけどね。配信者のマルチサーバーでちょっと……ね?』
「紫咲さんとはご挨拶だけさせていただきましたね!! ご挨拶だけ!!」
『私もそんな感じ~』
「ですね! あ、でもイナムさんには以前、ゲームでアイテムをいただいたことがあったような……」
『あれ、そうだっけ? 忘れちゃったてへぺろ』
『ボクとまみむは一緒にパーティゲームしたことあるよ~』
『陽にい、また遊ぼ~!』
「ぜひぜひ! シュンくんとまみむちゃんがお元気そうで安心しました!」
『…………わ、私は初めまして、ですよね?』
「夢見さんとは初めましてですね! こんな大舞台に部外者が急に押しかけてしまって本当に申し訳ないです……」
『い、いえ、私は全然大丈夫です。というか話を聞く限りではむしろ被害者ですよね……?』
:個人勢とは思えない交友の広さ
:なんでこいつ個人勢なの?w
:普通に企業勢の一員で違和感ないわ
:ベリさんとは割と最近絡んでたよね?
:お互い常識人枠だから気が合うんだろうねw
:ライバーはなんていうかまあ、変な人が多いから……
:でもベリ兄貴ゴリラやで
:潰されるぞ(物理)
:姉さんwww
:無駄に意味ありげに言うなやw陽くん困ってるやんw
:「ご挨拶だけ(二回目)」
:何もなかったという圧がすごい
:イナムがアイテムを誰かにあげてるのは意外だな
:いや、怪我してる陽を見つけて、法外な値段で回復アイテム売りさばいてただけやね
:カスじゃねーか!!
:さすが俺たちの生意気担当だな
:シュンまみむ陽のパーティゲームは面白かったなぁ
:終始ほのぼのしてて良きだった
:あのちびっこ二人をちゃんと纏められるのもなかなかいないよなぁ
:シュンくんは全然良い子やけどね
:まみむがまみむ過ぎる
:さすがにるなちゃんとは初対面だったかぁ
:るなちゃんが珍しく余所行きな対応してる
:むしろそこが繋がってなくて安心したガチ恋勢は少なくなさそうw
:このコメントは削除されました
:それはそうw
:運以外はスペック高いもんな、陽
:運は最悪(定期)
:カナタと付き合いがあるのは運がいいのか悪いか
:悪い
:どちらかと言えば悪いんじゃね?知らんけど
:最悪やね
:き、決める時は決める男だから……!
『――さて、とりあえず最低限の顔合わせも済んだことだし、遂に待ちに待った企画説明をしていきましょうか!』
「……ええ?」
スクリーンに映し出されたスライドを見て思わず引いてしまう。というか出演者の方々はこれを教えてもらった上で出演しているのだろうか。だとしたらさすが配信者というべきか、いやでもこれはちょっと度を越えているような気がしなくもないというか。
――――
【ベストカップル
男女各四名ずつ、合計八人のVtuberたちによる合コン企画を開催します。
リスナー投票によって、四つの組み合わせを決定。
各組のVtuberは企画期間中、カップルコンビとして活動していただきます。
具体的な企画の流れは以下となります。
①前半戦(2週間)
合コン開催。投票によって各組合せを決定。
カップルでの活動開始。
参加者全員での合同企画。
②インターバル(1週間)
自由期間。カップルで過ごすもよし、それ以外の相手と絡むもよし。
③後半戦(1週間)
カップルでの配信。
参加者全員での合同企画。
最終日、リスナー及び審査員による投票後、結果発表。
合計約一か月に及ぶ長期企画です。
珍しい推しの姿を見るもよし、新しい推しを見つけるもよし。
リスナーの皆様方、存分にお楽しみください。
――――
「やっぱりとんでもないなコレ」
出演者が分担してスライドを読み上げていく中、マイクをミュートにして思わず愚痴る。何度見返しても大炎上な予感しかない。当然ながら長期企画であることも今初めて知った。
:ん~、これは炎上!!^^
:ほんとに事務所の許可もらってるのかよ?w
:ぜろいちには良くも悪くも積極的だから……
:そしてこれに巻き込まれる陽きゅんかわいそす
:いや、さすがに何も聞いてないってのは嘘じゃないの?
:微妙なラインだなぁ
:カナタならやりそう
:陽くんならやられそう
:やられそうは草
『あ、一つ言い忘れてたわ。今回の企画をするにあたって、リスナーの皆に一つだけ注意事項があるんだったわ』
:注意事項?
:誹謗中傷はやめろとかだろ?
:そんなことわざわざ言う必要あるか? 普通にマナーだろ
:その普通が通用しない相手がいるってことよ
:それはまあ、、、
:でも注意されたからといって効果があるとも思えんけどな
:やる奴は注意されてもやるし、やらん奴は注意される前からやらん
:それは本当にそう
コメント欄ではあまり肯定的な意見はないが、出演者からすれば注意喚起してくれるだけで大いに有難い。いかにカナタがぶっ飛んでいると言っても、最低限のリスク管理能力はあったということか。もしかしたらそれすら本人が考えたものではなく、事務所に用意されたものなのかもしれないが。
『――この物語はフィクションです!』
「それは別に魔法の言葉でも何でもないからね!?」
思わずミュートを解除してツッコんでしまった。
◇
『ここからは組み合わせ決定に向けて、各自5分ずつの自己紹介タイムな! 他のVtuberに何か質問したい奴とかいたら遠慮せず聞いてくれ! じゃあまずは俺からな』
あれよあれよと企画は進み、ついに自己紹介タイムまで来てしまった。通話に出た時点で諦めていたことではあるが、やっぱり逃げることは出来ないらしい。
『ぜろいちにの一等星とは俺のこと、カナタ・ノミラーイだ! 雑談も嫌いじゃないけど、個人的にはゲームとか何かをしながら配信することが多いな。気軽に「カナタ」って呼んでくれ。あ、でも一応言っておくと活動歴は2年で、チャンネル登録者は55万人な? 60万人超えたら3D配信やりま~す』
:カナターーー!!
:うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!
:初手登録者マウントは草
:これが無けりゃ女子人気も高そうなのに……
:リ、リスナーは喜んでるから
:3Dマ!?!?!?!?!?
:がちでなにもしらない【ぜろいちに公式】
:公式知らないは草
:いっぺん怒られろ
『うわ、最初からそんなマウントとって恥ずかしくないの? そんなんだから、女性Vが選ぶ彼氏にしたくない男性Vで一位なんだよカナタは』
『てめイナムっ! それは言わない約束だろーが!』
:草
:草
:そんな不名誉な称号があったのかwww
:あれ、配信でそんなの発表されてたっけ?
:あー、配信で発表されてなかっただけど、アンケート項目自体は他にもあったってどこかのVが話してた気がする
:なるほど
:つまり暴露、と
:うーん、これは自業自得
:弁護の余地なしです
『あーもうどうせだから次お前な! ほらあくしろよ』
『ぷぷっ。……ごほんっ。ぜろいちにの女子高生担当、召巻イナムです! ゲームとか歌配信をメインに活動してますっ! 「保護者」のみんなも、そうじゃないみんなも配信を楽しんでくれたらいいなっ。あ、活動歴は2年半で、チャンネル登録者数は45万人だよっ?』
『おえっ……気持ち悪い……』
『そんなことを言ってはダメですよ。せっかくイナムさんが可愛く自己紹介なさってるんですから』
『じゃあベリさんはあいつの猫撫でボイスが売ってたら買う?』
『それはまあ……。わ、私には妻がいますから』
『ベリさん!? フォローするなら最後までして!?』
:イナム~~~~!!
:かわいいぞ~~~!!
:ごめん、俺は無理だった……
:大丈夫だ、俺も無理だった
:これがあの、訓練された保護者のみが耐えられると噂の……
:とんでもない破壊力だったぜ、思わずイヤホンぶっちぎってしまった
:じゃあどうやって配信聞いてんだよwww
:スピーカーに変更したのかお前w
:ベリさんですらフォローできないレベルだからしゃーない
:妻がいます(震え声)
:お前なんで合コン企画来たんだよw浮気だろw
突然外された梯子にイナムさんの叫び声が響く。まあ好みは人それぞれと言うし、さっきみたいな声も誰かは好きだと言ってくれるだろう。ちなみに自己紹介の中にあった「保護者」というのは、イナムリスナーの通称だ。女子高生キャラだからとか、そういう感じの理由らしい。
『では流れ的に次は私が。ぜろいちにのオジ担当、ベリムーサ・ベリベリです。普段はラジオ配信が多いですね。お悩み相談なんかも行っていますので、お便りはマシュメロまで。……あっ、活動歴は2年半。チャンネル登録者は30万人です。よろしくお願いします』
『ベリさんの配信は寝ながら聞くのが好きなんだよねー。なんか声が落ち着くっていうかぁ』
『まみむさんもお聞きくださっていたとは。これはうっかり変なことは言えませんね……』
『えーーー! 全然気にしないでいーよー。楽しそうに配信してるのを見るのが好きだから~』
:オジ担当だったりゴリラ担当だったり大変だな
:めちゃくちゃ良い人なんだけどね
:ただし既婚者である
:そしてここが浮気現場
:ベリ兄貴、絶対活動歴のくだり忘れてただろwww
:変な間あったよなw
:慌てるベリさんギャップ萌え
:まみむとの絡み悪くないな
:父と娘みたいな安心感あるわ
:それだわ
『じゃあ次はまみむの番だね~! ぜろいちにの天使担当、まみむだよぉ~! パパママ見てる~? 普段の配信ではパパママたちと一緒にゲームしたり、お話とかしてるよ~。活動歴は……登録者は20万だ~!』
『活動歴忘れちゃだめでしょ……僕と一緒で一年半ね』
『あ~そっか~! シュンくんも一年半なんだね~同じじゃーん』
『同期だからね!!』
:活動歴忘れるマ?
:長いならともかく、まだ一年やぞ……
:そこも可愛いよ、まみむちゃ~ん!
:シュンくんが同期であることを忘れられてて草
:ちびっこ組が同期なのか
:そそ、012は半年ごとに新人が来るからね
:パパママって?
:まみむリスナーの呼び方やね
:あーなるへそ
『それじゃあ次は僕が自己紹介するね。みなさん改めてこんばんわ! ぜろいちに所属のシュンです! 普段の配信はRPGゲームとか、ペケモンとかをメインに配信してるよ! 良かったら個人配信も見に来てね~! 活動歴はまみむちゃんと一緒で一年、登録者は20万です!』
『シュンくんとは直近でペケモンでコラボしたのよねぇ。残念ながら色違いは出なかったけどぅ』
『紫咲さん! その節はお世話になりました! 色違い残念でしたね、僕の運がもっとあれば……!』
『いいのよぅ。シュンくんと一緒に遊べただけで楽しかったわぁ』
二人のコラボ配信は異色のコンビとしてもSNSで話題になっていた。色違いが出るまでの耐久枠だったらしいのだが、残念ながら目的のペケモンは出ず、次の予定もあるということでお開きになったらしい。第二回を望む声がSNS上で多く見受けられた。
:色違い配信は残念だったよなぁ
:捕まえられなかっただけで色違い自体は出たんだけどな
:そなの?
:急所に当たったせいでHPがゼロに……
:あっ……
:運が悪いのは
:第二回やってくれないのかなぁ?
:全裸待機待ったなし
:っ110番
『じゃあ次は私ねぇ。皆さんご存じ、ぜろいちにのセンシティブ担当ぅ、
「相変わらず艶っぽい話し方ですね……いや、それも大いに魅力的ではあるんですけど」
『あら陽くん。この前は色々と、ねぇ?』
「本当に挨拶しかしてないんですけどね!? でもこういう機会に改めてお話させていただけるのは有難いです」
『ふふ、相変わらず嬉しいこと言ってくれるわねぇ』
いかにもエッチなお姉さんというような感じで、実際に話していると妙な雰囲気になっていくような気がしてならない。それでもリスナーのことを大切にしつつ、節度を以て発言する彼女の配信スタイルはとても好ましい。事実、今回の企画参加者においてカナタに次ぐ登録者数を抱えており、男性人気だけでなく女性からの支持も少なくないようだ。
「では、僭越ながらご挨拶させていただきます。個人勢として活動しています、
:今回も期待してるぞ~!
:企画を目いっぱい盛り上げていってくれ~!
:このコメントは削除されました
:正直誰と組むのか楽しみではある
:Vtuberの中で数少ない常識人枠がここで生き残れるのか…!?
:このコメントは削除されました
:でも実際、1年半で登録者15万超える個人勢なんている?
:いるかもしらんが、俺は知らん
:かなりの上澄みであることは間違いない
:カナタとコラボとかもしてるから、その人脈バフとかもあるっちゃある
:でもそこの人脈は正直あまり羨ましくはないな…
:なんてことを言うんだ…って思ったけど、今回騙されてるっぽいしな
『あー、もしかしなくても私が最後か。
「夢見さんのお名前はお聞きしたことがあったんですが、それ以外は本っ当に何の情報もないんですよね。本当に申し訳ないです……。ただ、さっき初めてお声をお聞きしたんですが、とても素敵で聞きやすいな~なんて思ってました」
『っ!? あ、ありがとうございます……?』
:陽くんはナチュラルに人を褒めるからなぁ
:Vtuberの中で人気なのも正直分かるわ
:このコメントは削除されました
:彼女にしたいVtuberランキング、2位(男)
:でもコミュ強、気が利く、家事全般できる、とか普通にめっちゃ良くね?
:女だったら天下取ってた説ある
:このコメントは削除されました
:男でもいいから全然彼女になってほしい
:分からんでもない
:このコメントは削除されました
:るなちゃんと絡むだけで炎上しそうではあるか
:ちょっと話しただけじゃねーかw敏感すぎだろw
:嫌なのは理解できるけども、もう少しマナーを守ってコメントして欲しいぜ
:それな
:このコメントは削除されました
『あーーー……なんだっけ。そっか自己紹介か。ぜろいちにの常識人担当、夢見るなです。今回の企画は前から楽しみにしていたので、リスナーも最後まで楽しんでいってもらえたらと思います。普段はゲーム配信をしてます。活動歴は1年、登録者は20万人です。よろしくお願いしまーす』
:安定の低音ボイス
:低音ボイスってそんなに言う程か?普通じゃね?
:まあまあ
:というかデビューしたの一年前なんや、もっと長いと思ってたわ
:実際、知名度の割に活動歴は短いんよな
:それだけ人気ってことやな
:だからこそガチ恋勢も多いのか
:一年で銀盾2枚分なら十分すぎよ
:同期はもっと人気なの考えると五期生やばいよ
:るなちゃんは炎上もあったから……
:というか他に比べるとテンション低めw
:まあそれでこそ夢見るなよ
:むしろこれでもいつもよりかは幾分かマシだけどな
:るなちゃん余所行きな感じするよな
『さて、ひとまず全員の自己PRも済んだということで、いよいよ本題に入ろうか! 皆ももう分かってるよなぁ? 炎上不可避! カップル決めコーナーだぁぁぁ!!!』
ド派手なSEと共に、軽やかなBGMが流れ始める。コメント欄の勢いも凄まじく、目で追うのがやっとだ。視聴者数もいつの間にか10万人を超えている。いくらゴールデンタイムだからとはいえ、同時視聴者数が五桁を超えるなんて滅多にない。それだけ企画が期待され盛り上がっているということなのだろうが、それに比例してプレッシャーも大きくはなる。何が言いたいかというと、とても胃が痛いです。
『最終的にはリスナーからの投票で組み合わせを決めんだけど、それだと味気ないんで、まず初めに出演者には自分が付き合いたい相手を発表してもらいます! いやー燃えそうだねぇ』
『『『『『『「……はい?」』』』』』』
カナタ以外の全員がものの見事にハモる。どうやらこれに関しては他のメンバーも知らない情報だったらしい。本当にこいつはどれだけとんでもないことをやらかせば気が済むのだろうか。そもそも事務所にはきちんと説明しているのだろうか。
『さっきの自己紹介順とは逆にひとりずつ発表してもらうけど、後出しとかできないように通話サーバーにいるマネージャーにDMで名前を送ってくれ!』
突然のイベントにコメント欄は大いに盛り上がっている。リスナーが楽しみにしている以上、配信者としては期待に応える義務がある。相変わらず配信の盛り上げ方が上手いというか、カナタの右に出る者はいないんじゃないかとさえ思えてくる。個人的にはもう少し正攻法でも良いのではないかとも思うが。
『よし、マネージャーによると全員出揃ったみたいだな!』
『仕方なく』
『せめて前もって教えてもらいたかったわぁ』
『まみむはどっちでもおっけー!』
三者三様の意見がある中で、一人目の発表者である夢見さんの写真が現れ、続いてテロップがデデンとSEと共に現れる。
【夢見るなの回答:カナタ・ノミラーイ】
『おっと~! まさかの初っ端から俺が登場! だが当然といえば当然! 何たって俺だからながはは!』
『えーーー!? るなちゃん絶対やめといた方がいいって、こんな奴! 今からでも遅くないよ!』
『いや遅ぇーよ!? というかイナムが出しゃばってくんじゃねえ! お前の出番はまだだ!』
:でも実際るなちゃんがカナタ選ぶのってちょっと意外かも
:まあ、ショタ、既婚者、部外者って考えると消去法だったんかも
:なるほど、それならあり得る
:んーでも個人的にカナ×るなは解釈違い
:それはそう
『じゃあここで本人にどういう理由か聞いてみましょう!』
『えっ、理由とか聞かれる感じですか? あー、なんというか、単純に他の方と絡みが無かったので……』
『え、俺の魅力に惹かれたとかではなく?』
『あー…………っす』
『え、泣いていい?』
:それは草
:草
:唐突に始まるカナ虐
:っぱカナ虐は定期的に摂取しないとなぁ
『つ、次だ次ぃ!
【
『あらぁ?』
『――っお前ド変態だな!』
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
:ド変態は草
:そういう企画なんだから良いじゃねーかw
:でも普段の陽からすると確かに意外ではあるか
:てっきりイナムか夢見あたりに行くかと思った
『弁明があるなら聞いてやるがどうする?』
「あのね、違うんだよ本当に。紫さんとは前に挨拶だけさせてもらったから、この企画を通してもう少しくらいは親しくなれたらな~って思ったんですよ! ――――――――っていうのは建前でして」
:ん?
:おっと?
:流れ変わったな
「紫さんには大変失礼かと思ったのですが女性陣の中で一番炎上しなさそうだな、と。……いや本当に申し訳ないです!」
『あらぁそういうことだったのぉ。全然気にしないわぁ。むしろ正直に話してくれて嬉しいわぁ、ふふっ』
:それは仕方ない
:当然の選択だったか
:ガチ恋、JK、ロリの中からだったら多少危険でも紫姉さん選ぶしかないわw
:ここの絡みはちょっと見てみたくはあるなぁ
:陽くんには純粋なままでいてほしい気がしなくもない
:確かに系統は全然違うな
:性癖歪まされそう
:間違いない
そんなこんなで配信は続けられ、皆の回答が出揃った。
【夢見るな】
回答:カナタ・ノミラーイ
理由:辛うじて絡みがあったから
【陽】
回答:藤野紫咲
理由:辛うじて炎上しなさそうだから
【藤野紫】
回答:陽
理由:自分色に染めてみたくなったから
【シュン・ショータ】
回答:夢見るな
理由:女性陣の中では一番まともそう
【まみむ】
回答:ベリムーサ・ベリベリ
理由:パパみたいだったから
【ベリムーサ・ベリベリ】
回答:まみむ
理由:娘みたいだったから(他だと浮気になりそう)
【召巻イナム】
回答:シュン・ショータ
理由:え、だってショタ可愛いじゃん?ぐへへ
【カナタ・ノミラーイ】
回答:召巻イナム
理由:本っ当にタイプじゃないけど、配信は盛り上がりそうだから
こうやって並べるとなかなか壮観である。何組かはお互いに指名しあう形になっており、リスナーたちの興奮気味なコメントが多く流れていた。有難い話である。とはいえ、これらの結果はあくまでこれから行われる投票の事前情報に過ぎず、結果に影響を与えるものではない、らしい。指名しあってる組くらいはそのままでも良いんじゃないかなと思わなくもない。陽×紫とか、ベリ×まみとか。いや本当に炎上はなるべくしたくないです。
『さて、そろそろ投票が終了するぞ! 皆はもう投票は済ませたかー?!』
:うぉぉぉぉぉおおおおおお!
:ちゃんと投票行ってきたよ!!
:はがきはちゃんと持ったか?
:選挙じゃねーよwww
:いやまじで組み合わせ楽しみすぎる
:同時視聴者10万キープとか久々に見たな
:普通ならこの時点で企画としては大成功なんだけどな
:この企画の恐ろしいところは、まだスタートラインにすら立ってないことなんだよなぁ
:一体だれが燃えるんだろうな
:そりゃ運がないやつだろうよ
:運……?
:あっ……
:あっ
:あっ
『よしっ!! それじゃあ一組目から発表していくぞてめーら! 【一組目】シュン・ショータ × 藤野紫ィィ!』
『えっ、ほんとに?』
『あらあらぁ、こんな子をお姉さんに任せて本当に大丈夫なのかしらぁ?』
『投票理由も合わせて発表していくぜ! えーなになに? 「おねショタは正義」「ショタを甘やかすお姉さんが見たい」「おねショタしか勝たん」とのことです! やべー奴しかいねーな?!』
:おねショタきちゃーーーーー!
:異色なのか正統なのか分かりづらい組み合わせだな
:ちなみに俺はこの組み合わせで投票した
:実は俺も
:実をいうと俺も
:あ、俺も
何ということだろうか。炎上と隣り合わせのこの企画の中で、唯一セーフゾーンになり得る存在だった紫さんが早々に離脱するというアクシデントが発生してしまった。絶体絶命とはまさにこのことだ。もはや炎上は避けられそうにない。こうなればなるべく炎上しなさそうな相手と組まされていることを願うだけだ。
『【二組目】ベリムーサ・ベリベリ × まみむぅぅぅ』
『パパぁ~!』
『まみむさん! ありがとう! 本当にありがとう! これで妻に殴られずに済みます!』
:これは妥当
:見てみろ、他とは面構えが違う
:そりゃ父娘だからな
:草
:【朗報】ベリ兄貴、浮気せずに済む
:【朗報】ベリ兄貴、嫁から許される
着々と組み合わせの候補が減っていく。残されている女性Vtuberは、召巻イナムさんと、夢見るなさんの二人。正直どちらもアウトな気がしてならないが、強いて言えば生意気ムーブが板についているイナムさんの方が有難いだろうか。
「……なーんか嫌なフラグが立ったような気がする」
ミュートにしている声は誰にも聞こえない。今は自分の枠で配信しているわけでもないので、本当に誰にも聞こえない呟きだった。
『【三組目】カナタ・ノミラーイ × 召巻イナムッ!!』
『いやだあああああああああああああああああああああ』
:叫び声助かる
:助かる
:意外と相性は悪くなさそうなんだよなぁ
:それは分かる
:ケンカップルみたいになんのかね?
:カナタも言ってたけど、この二人なら配信は間違いなく盛り上がるだろうな
:見る前から面白いの確定してるもんな
:今から楽しみすぎる
『そして【四組目】陽 × 夢見るなッ!!』
「よ、よろしくお願いします……」
『よ、よろしくお願いします……』
:明らかに当人たち困惑してて草
:えー、今回の企画における一番の炎上枠が決まりました
:炎上枠w
:このコメントは削除されました
:草生やしてやるな、燃えるだろ
:このコメントは削除されました
:ガチ恋勢、無事脂肪
:太ってるだけじゃねーか
:このコメントは削除されました
:コメント欄が途端に荒れ始めてて草
:そりゃ荒れるだろうよ
:まだカナタみたいな箱内トップクラスの人気者と組むなら分かるけど、部外者で登録者も少ない相手と組んでもメリットないからなぁ
:15万も登録されてる時点で十分すごいけどな
:企業勢に比べちゃうとなぁ、どうしても数字は見劣りしちゃうからなぁ
『さて、無事に四組のカップルが出来上がったということで、時間的にもそろそろお開きにしたいと思います! じゃっ、本企画の一番の被害者である陽くんに今後の意気込みを聞いてから、配信を締めようと思います!』
「当然のように聞かされてない無茶ぶりが飛んできましたが、えー……そうですね。こうなった以上は夢見さんと一緒にベストカップルを目指して頑張りたいと思います! ……あれ、そういえばベストカップルになったら何か賞みたいなのがあるんでしたっけ」
『あ、言うの忘れてたわ。本企画のベストカップルになった出演者の方には、事務所から公式番組の依頼がある、かも……!?』
『『『えっ!!』』』
「あれ、その場合自分は……」
『全く関係ない話だな』
「クソ企画だこれ!!」
:草
:草
:不憫すぎて草
:陽にメリットが無さ過ぎて草
:まじで被害者じゃねーかw
:というかそんな豪華な景品があったとは
:反応から察するに出演者は知らなかったっぽいな
:あれ、そういえばベストカップルってどうやって決めるんだっけ?
:リスナーの投票と審査員が結構曖昧だった気がするけど、まあその辺は少しずつ情報解禁されていくだろ
:それもそうだな
『これから約一か月半の長い戦いになるけど、皆も遅れずについてきてくれよな! 全員参加のコラボはまた二週間後に!』
:全部リアタイしてやるぜー!!
:この企画全部見たら俺、結婚するんだ
:やめろ!脂肪フラグを立てるんじゃねえ!
:これから各々でカップル配信が始まるってことだよな?
:うわ、まじでどうなるか楽しみすぎる
:これからも燃えるぞー!
:燃えるのは一部だけな気がするけどなw
『それじゃあ最後に、本企画の注意事項をご唱和ください!』
『『『『『『『「この物語はフィクションです!」』』』』』』』
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