第七話 はじめまして。ザイロス様

 馬車はクロッセルに着く。

 馬車から降り、馬の横に行く。


「送ってくださりありがとうございました」


 そう言って俺は執事の人に頭を下げた。


「こちらこそ、危ない所を助けていただきありがとうございました」


 執事の人も頭を下げる。

 執事の人が馬を引っ張り、馬車は街道を行く。去り際、窓越しにユウキに手を振った。ユウキは依然としてクールな表情だが、手を振り返してくれた。


 さてと、懐かしのギルドに向かうか。


 離れていたのはたった1年だけど、あの神竜の中の1年は永遠に感じるぐらい長く感じたからな。すんごい懐かしく感じる。この街もすんごい懐かしい。


 ――と、ギルドの前まで来たわけだが。


「こんなんだったっけ?」


 なんか、ギルド本部の外装が変わっている。

 看板は変わらずだ。だから俺が所属していたギルドに間違いはない。しかし、こんな派手な感じだったか? 壁に金箔塗ってあるし、薄紫のベールが掛かっているし。


 と、とりあえず入ってみるか。


「いらっしゃいま――せ!?」


 本部に入ると、受付嬢のライラちゃんが俺を見て驚いた。懐かしいなぁライラちゃん。眼鏡っ子な美人さんだ。こんなオッサンで役立たずな俺にも丁寧に接してくれた。

 ただ……服装が派手になってるな。受付嬢はギルドに指定された制服を着るわけだが、その制服の露出度が広くなっている。ロングスカートではなくミニスカートで、シャツも胸元が空いていて、へそが出ている。


 メンバーも変だな……昔は男が7で女が3ぐらいの割合だったのに、今は男女比が逆転してる。明らかに女性が多い。しかも美人ばかりだ。


「し、失礼しました。リザードマンの方に会うのは初めてでして……」

「いや、構わないよ」

「あれ?」

「ん? どうしました?」

「すみません。知っている方に声が似ていたもので……」


 凄いな。俺の声を覚えていたのか。


 俺は迷っていた。ダンザ=クローニンと名乗り、事情を説明するかどうか。

 俺は1年前に死んだことになっているだろう。ほぼ間違いなく。

 そんな俺がリザードマンになって帰ってきた……なんて、絶対に馬鹿にされる。

 ザイロスとかは確実に面白がるだろうからな。アイツらにまた舐められるのは癪だ。

 やっぱ黙っとこう。その方が話もスムーズに進みそうだ。


「俺はザクロと言う者です。このギルドに入団したいのですが」

「入団希望ですか。そうなると、入団試験を受けて貰いますけど……」

「入団試験? そんなの昔は……あ、いや。このギルドは入団試験がないと噂で聞きましたが、ガセだったんですかね」

「昔はそうだったのですが、ちょうど半年前にギルドマスターが変わって、方針も変わったのです」

「マスターが変わった!? ギンさん……前のギルドマスターになにかあったんですか!?」

「はい。ギンマスターは老衰で亡くなり、新たにザイロスという方がギルドマスターになりました」


 ザイロスが今のギルドマスター!?

 いや、それよりギンさんが……くそっ! あんなに世話になってたのに死に目に会えないなんて……そりゃもう80超えてたもんな。大往生だ。悪いギンさん。後で絶対墓に手を合わせに行くよ。


「ザイロスさんがマスターになってから、弱い人間は要らないと……特に男性は厳しい基準でテストするようにと言われてまして……」

「男だけ、ね」


 ライラちゃんの言葉の節々には毒を感じる。ライラちゃんも今のギルド方針に納得いかない様子だ。

 この制服もアイツの趣味だな。ギルドを私物化しやがってあの女好きの変態が。

 本部内にザイロスの姿はない。クエストで出てるのか、はたまた女遊びでもしてんのか。


「その、どうしますか? 正直、私はここへ入ることは、おススメできません」

「それを受付嬢に言わせるとはな」

「え?」

「入るよ。入団試験受けさせてくれ」

「……わかりました。ではこちらでお待ちください」


 来客用のテーブルへ案内される。


「ちなみに試験内容って聞いてもいいですか?」

「試験内容はギルドマスター、ザイロスさんが相手を見て決めます。なので、試験内容はザイロスさんがいらっしゃるまでわかりません」


 完全にアイツの気分次第かよ。最悪だな。


「了解です」


 椅子に座り、待つ。

 周囲の視線が痛い。見知った顔もそこそこいるが、誰もまぁ、そりゃ俺だと気づかないよな。

 しかし、変な空気感だ。どこかギクシャクしている。男は隅の方で飲んでるし、女は女でやけに派手な服を着ていて、それでいて顔は暗い。


 こんな空気……ギンさんのギルドじゃない。


「おーい! ザイロス様が帰ったぞぉ~!!」


 聞きなれた、聞きたくない声が響く。

 入り口の方を向く。ザイロスが両脇に美女たちを侍らせてやってきた。中にはカリンとムゥもいる。


「ん~? なんか、爬虫類臭いやつがいるなぁ~?」

「はじめまして。ザイロスさま」



 ――――――――――

【あとがき】

『面白い!』

『続きが気になる!』

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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!

小説家になろうでも連載中です!

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