第29話 「星矢」さん

【登場人物紹介】

これまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。


真鍋星矢(せいや)…社会人二年目。自分の優柔不断な性格を変えるため、副業でバーテンダーという新たな世界へ飛び込む。春花に告白したが保留にされている。



多田愛未(まなみ)…社会人一年目。あざと系女子。星矢を誘惑してもて遊んだと思われ、距離を置かれている。



中野春花(はるか)…社会人一年目。ストーカー対策として星矢と恋人のフリをしていた。星矢の告白は一旦保留にしている。



春日部博(ひろし)…星矢の良き相談相手。愛されキャラだがモテはしない。



内間君恵(きみえ)…星矢の上司。星矢に告白したがあっさり振られてしまった。



堤健司(けんじ)…星矢が副業で働くバーのマスター。オネェ。人生の先輩的存在。



町田孝之(たかゆき)…星矢のバーでの教育係。星矢の一個上。お客さんで来ていた内間君恵に恋をする。



今西絢音(あやね)…星矢のバーの常連客。男の欲望を詰め込んだかのような女性。星矢を誘惑するが失敗。




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 今日は星矢と春花のデートの日。そして同じ日にたまたま内間さんと孝之もデートをしていた。二人は神楽坂のランチに来ていた。席についた瞬間、内間さんは愛未に提案された事を思い出した。




〜内間君恵の回想〜


「例えば〜。ご飯系のデートだったら、席についた瞬間に自分の好きな本とかを読んでほしいな〜って感じで貸してあげるんです!」


「えっと〜。それには何の目的が?興味ない可能性もあるよね?」


「内間さん、今まで恋愛してきましたかー!?男の人は好きな人の趣味にも興味持つものなんですよ!内間さんが好きだって渡した本に興味を示すかどうかで相手の本気度も図れますし感想伝えるために電話したいとか言って電話する口実にもなります!さらに本借りてるってことはそれを返すためにまた相手がデートに誘いやすくなるんですよ〜」


「な、なるほど!!」


内間は本気で「この人すごい!!」と思った。それを一緒に聞いていた博と春花も感心していた。春花はメモまで取っていた。


「多田さんはいつもそこまで考えてるの?そこまでしてモテたいの?」


「何もせずに相手が好きになってくれたらそれに越したことありませんよ?でもそんな事ないんです。私たちは可愛くなるためにメイクを勉強したりしますよね!相手の好みに合わせてメイクを変えたり髪型変えたりもしますよね?だから私はいつも私がやってることが打算的とは思いません!女の子が着飾るためにメイクするのと同じ感覚だと思ってます」


内間も春花も博もこの時には愛未に尊敬していた。確かにあざとい行動は嫌われる要素にもなると思うが戦略の一つという考え方もできるからだ。


そして愛未は内間の耳元で囁いた。


「それと、星矢さんは意外と露出多い服にそんな興味示しませんよ?」


内間はビクッとした。大阪出張の時、星矢を意識して露出多い服を着て行ったからだ。あの時の内間は男の人ならとりあえず露出の多い服着ていけば落ちるという固定概念があったのだ。


さらに愛未は続ける。


「相手の好みに合わせて、それと同時に自分を出していく事が大事なんです。慣れたら意外と楽しいですよ!」


………一生着いていきます!多田愛未さん!!………


天邪鬼な内間だが、何故か愛未の言いなりになっていた。愛未には同性までも惹きつける力があるのかもしれない。まさに魔性の女だ。




        〜内間の回想終わり〜



愛未に言われた通り、内間は孝之にオススメの小説を渡した。湊かなえの『夜行観覧車』という小説だった。


「これ、ミステリーなんだけど。良かったら読んで!」


「内間さん、ミステリー好きなんすか?」


「まあ読む方だね!」


「ほんとっすか!じゃあ今度ミステリー展行きませんか?」







一方、星矢と春花はデートで犬カフェに来ていた。

星矢がかなり緊張していたが二人で犬と遊んでるうちに慣れてきた。


「ペットがいる家族って憧れるなぁ」


春花が犬を抱きながらそう呟いた。


「わかる!ペット飼いたい。かわいいよね!」


「ですよね〜」


星矢と春花の距離は犬カフェで犬と遊ぶ事によってかなり縮まった。


 その後、二人は原宿のクレープのお店に入った。席に着いた時、春花も愛未の作戦を使った。


「真鍋さん!いや、星矢さん!これ、私の好きな漫画なんですけど良かったら読んでくれると凄い嬉しいです。感想とかも語り合いたいし!」


そう言って渡されたのは『ワンピース』だった。


「え、ワンピースじゃん!俺、全然読んだことなくてさ。ずっと読みたいと思ってたんだよね」


「ほんとですか!これ、とりあえず1巻〜5巻まであるので良かったら!」


「やった〜。感想とか今度電話するね!」


 春花は自分の好きな漫画に星矢が興味を示してくれた事が嬉しかった。

星矢も春花が「真鍋さん」から「星矢さん」と言い直してくれたことに嬉しかった。春花も自分とのこれからの関係を前向きに考えてくれてるのだろうと確信できたからだ。




 愛未の本貸し作戦のおかげで星矢と春花のデートも上手くいっていた。







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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。


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