第27話 私とホテル行きましょ
【登場人物紹介】
これまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。
真鍋星矢(せいや)…社会人二年目。自分の優柔不断な性格を変えるため、副業でバーテンダーという新たな世界へ飛び込む。春花に告白したが保留にされている。
多田愛未(まなみ)…社会人一年目。あざと系女子。星矢を誘惑してもて遊んだと思われ、距離を置かれている。
中野春花(はるか)…社会人一年目。ストーカー対策として星矢と恋人のフリをしていた。星矢の告白は一旦保留にしている。
春日部博(ひろし)…星矢の良き相談相手。愛されキャラだがモテはしない。
内間君恵(きみえ)…星矢の上司。星矢に告白したがあっさり振られてしまった。
堤健司(けんじ)…星矢が副業で働くバーのマスター。オネェ。人生の先輩的存在。
町田孝之(たかゆき)…星矢のバーでの教育係。星矢の一個上。お客さんで来ていた内間君恵に恋をする。
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バーに今西絢音という女性が来店した。彼女は男の欲望を全て詰めたかのような女性だった。まず巨乳。色気満載。言い方は良くないかもしれないがヤりたい欲を刺激させる女性。誘われたら性欲ある男なら9割は着いていくだろうと言っても過言ではないくらいの女性。もう一言で言えばエロい。
彼女はカウンター席に座った。星矢はたまたま来店していた内間さんの接客をしていたが逃げるようにその女性の席へ向かった。
「あら、初めて見る店員さんね」
「一ヶ月前からここで働かせてもらっています。真鍋星矢という者です。」
「私は今西絢音。絢音でいいよ!」
「そんなそんな。絢音さんと呼ばせていただいます」
「あら。あなた、初(うぶ)ね」
絢音さんはそう言って星矢の頬を撫でた。
………うわ、すげえ。慣れてるな。初対面からこの距離感、誰かを思い出すな?………
「絢音さん、ご注文は何ですか」
「そうねぇ。あなたが欲しいわ。星矢くん!あなたが欲しい」
「そ、それはどういう」
「私とホテル行きましょ。」
「い、いや、、」
星矢はその時、誰かの視線を感じた。内間さんだ。内間さんがじろじろ星矢を見ていた。話し声が聞こえてるのか?ホテルに行くのを許さないと言わんばかりに睨みつける感じで見てくる。自意識過剰なだけかもしれないけど。
「うち、そういうのはやってなくて」
「うそだー!だって前、あそこの店員さんとホテル行ったもん!同意あればオッケーらしいよ?」
そう言って孝之の方を指さした。
………まじですか、孝之さん。この人とヤったんですか。正直めちゃくちゃ羨ましいっす………
「ねえ、星矢くん。今日は私に身体あずけてみない?」
…………あの、これAVの撮影かなんかですか?下品だけど俺の下半身、今、ビンビンですよ?………
星矢は絢音さんに誘惑されてる間、愛未を思い出した。愛未は正直ここまでエロくないし刺激はされないが距離の近さや誘惑の仕方等、似てる部分はあった。言ってしまえば絢音さんは自分の魅せ方を分かって誘惑してくるタイプ、愛未はモテたいと必死になってあざとく誘惑してくるタイプ。完全に愛未の上位互換である。
誘いに乗ってしまいたい。たとえ一夜だけでも。
………ダメだ。ここで誘惑に乗ってしまったら結局今までの優柔不断なままの俺と何も変わらない。………
星矢は自分を奮い立たせた。確実に愛未との経験が生きていた。
「ごめんなさい。明日好きな子とデートなんですよね。だからホテル行くと疲れて明日のデートに支障が出ちゃいそうで。それに俺は今、その子の事好きなんですよ。だから裏切れません。たとえ付き合ってなくても。」
絢音さんはかなり驚いていた。それもそのはず。誰が見たって星矢レベルの人間が絢音さんレベルの人間の誘いを断るなんておこがましいと思うだろう。星矢もそれを自覚していた。
「へぇ。あなた、凄いその子の事好きなのね。良いわね純愛って。久しぶりに見たわ。こんな初(うぶ)な子。」
「はい。ちょっと前までは色んな人に目移りしちゃうくらい優柔不断だったんですけどもう一人の人間を愛するって決めたんです」
「いいじゃない。まさか私の誘いに乗らないなんて思わなかったわ。悔しいから次もまた誘惑していいかしら?」
「良いですけど僕は誘いに応じないと思いますよ。他の人誘ってみてはいかがですか?」
「むかつくぅ!じゃ、カクテル注文するわ。ブルームーン一杯貰おうかしら?」
「かしこまりました」
今のやり取りを内間さんが全部聞いていたのかは分からない。しかし、内間さんは飲んでいたカクテルを飲み干すと少し笑みを浮かべて店を後にした。
仕事が終わると孝之は絢音さんの誘いを断った事をもったいない!と何度も言ってきたが健司さんからは「あなた、成長したわね」と言われた。
男性ホルモンを刺激するような、どこからどう見てもエロい女性。そんな女性の誘いを断ったという事実は確実に星矢の成長を実感させた。昔の星矢なら間違いなく誘いにホイホイついて行ってただろう。
愛未に誘惑され、もて遊ばれた経験が完全に活きていたのだ。
そして夜。明日は待ちに待った春花とのデート。日々の生活が充実していたからか、一ヶ月はあっという間だった。
それでも春花とのデートは本当に本当に楽しみに待っていた用事だから星矢はウキウキ気分で身支度をして布団に入った。
目を瞑る。数分経過した頃、星矢はふと考えた。
………やべえ、寝れない………
遠足前日の小学生のように気分が高まる星矢。間違いなく人生で最高レベルの不眠だった。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!感想や主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。
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