自宅警備兵団と伯爵家の三姉妹

健野屋ふみ(たけのやふみ)

第1話 絶賛不登校中のぼくが

学校に行きたくない!

学校に行きたくない!

学校に行きたくない!


ぼくは心の奥で叫んでいた。


「だったら、こっちにおいでよ・・・悪いようにはしないよ」

そんな声が聞こえた。


それは優しく、そして妖しい声だった。

危険な声のように思えたが、ぼくはその声に従った。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ぼくの名は、吉岡凛太郎。

凛ちゃんと呼ぶのは止めて欲しい派だ。


そんな絶賛不登校中のぼくが

「ここは異世界か?」

と思った時には、すでに最高級の重装備を備えていた。


ぼく自身には良く解らないが、多分、見た目以上に凄い装備なのだろう。

ちらちらと視線を感じる。もしかしたら伝説上の武器レベルなのかもしれない。


元の世界で見たアニメやラノベの世界観を思い浮かべた。

酒場に行って、あの樽のようなジョッキで何かを飲んでみたい。


その酒場はギルドのすぐ隣にあった。

でも、酒場はもう閉店の雰囲気を醸し出していた。

でも一杯だけ!

酒場に入ると、何気に視線を集めた。


これが畏怖か?


多分、間違いない。

畏怖の視線と呼べるものを、初めて感じた。


女子の店員がぼくの装備をチラッと見た。

「何言します?」

「じゃあビールを」

と人生初のビールを頼んでみた。


100%のオレンジジュースが良いのだが、この最高級の重装備の状態で、ジュースはないよね。


女子の店員が、樽のジョッキのビールを持ってきた。

「それにしても騎士さまは、凄いオーラ出してるね」

「騎士?オーラ?」

「ちょっと暗黒系騎士ぽいけど」

「暗黒系騎士?」

「今まで何してたの?」


何を答えるべきか?

集まる畏怖の視線と、ぼくから出ているであろう暗黒なオーラに、合う答えを!

と考えた結果、


「俺の経歴?とある場所で特務機関・自宅警備兵団に所属していたよ」

うん、合格だ。嘘ではない♪

公式サイトもちゃんと作っていたし。

自宅警備兵団員もちゃんと存在してた。

会った事はないけど。うん完璧だ。


「特務機関・自宅警備兵団って?」

「えーと、特務機関だから、聞いたことがないのは仕方ないね。まあ精鋭中の精鋭って感じかな」

「ふーん、あのさ頼みたいことがあるんだけど」

「ん」

「警備して欲しい自宅があるの」


自宅の警備?

最強の装備だとしても、いきなり魔物と対峙するより、楽かも。


「いいですよ」

「ありがと、じゃあお店終わったら一緒に来て」

「うん」



つづく

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