Case 2 B川 Y美・Z翔

【Case 2 B川 Y美 Z翔 28歳女性 3歳男児】


 はい、いらっしゃいませ。アフターライフ不動産の久世くぜ永遠子とわこと申します。B川 Y美さま、Z翔くんでいらっしゃいますね? どうぞお待ちしておりました。


 この、上りエスカレーターにお乗りくださいませ!

 あ、おぼっちゃま、そっちの下りエスカレーターじゃないですよっ!


 エスカレーターは危ないので、お母さんとしっかりお手を繋いでくださいね!


 では、まず、今日はどのような経緯でこちらに来られましたか?


 え、不動産屋には特に用事はなかった、と?

 私は一軒家に暮らしているから?


 そうでございましたか。

 ご覧くださいませ。きっと、B川様の見たことのないところかと思いますが……。でも、ご安心くださいませ。ここは、きっとB川様に安心の暮らしを提供することをお約束します。


 と、言われても、びっくりしますよね。怪しいですよね。心なしか顔色も悪いようです。

 え? お子さんと家で仲良く遊んでいたと思ったら急に頭に痛みが出てきて、気付いたらここにいた? 


 それまでは、私もZ翔も元気だったのに、なぜ?

 かすかに記憶にあるのは、ある見知らぬ男性の顔?

 なるほど。ここにはほとんどのお客様がお一人で来られます。まして、若いお客さんはほとんど来られません。


 お辛かったでしょうね。私も悲しいです。本当にご愁傷様です。

 でも、もうここなら安心です。永遠の安らぎをお約束します。


 🧸


 このクリスタルカウンターのアイランド型システムキッチン、それにおもちゃでいっぱいのこども部屋、いかがですか? 

 お母さまの大好きな料理も、Z翔くんの大好きなおままごとも、お好きなだけできます。

 でも、もしこのキッチンが壊れてしまったり、もっと広いおもちゃのお部屋をお求めの場合は、いつでも弊社にご連絡ください。

 素敵な物件をお届けすることを確約します。


 え? パパ?

 ごめんなさい。それだけは、どうしても難しいのです。

 私まで涙が出てきてしまって。笑顔だけが取り柄なのに、申し訳ございません。


 では、楽しいアフターライフをお過ごしくださいませ。

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