第10話 皇太子
フェイス・ラッターの裁判の結果に彼女は驚かなかった。
彼は騎士団長の地位を剥奪され、領地を没収された。
しかし爵位は剥奪されなかった。それは予想外だった。
つまらない。 ライアはそう思いながら裁判官の法廷を出た。通りの向こう側を誰かが歩いていることにまったく気づかず、考え込んで頭を下げたまま、その人とぶつかってしまった。
「痛い…」 彼女は何かくだらないことを言おうとしたとき、銀白色の髪と不機嫌そうな深緑色の瞳をした人物が向かってくるのが見えた。
「ライア・ド・カリスは帝国の最初の月、イラ皇太子殿下とご対面。」彼女は優雅に礼をしたが、相手は感心していないようだった。
「あなたが第五王女なんですね。」イラはいたずらっぽい笑みを浮かべて言った。「フェイス・ラッターを本当にめちゃくちゃにしたそうね。」
ラッター家は常に皇后と敵対していたが、皇后の傀儡であることを望まなくなった皇太子は、ラッター家と何らかの密約を結び、多くの有力者と密かに親交を深めていた。
皇太子がそんな口調で話しかけてくるのも無理はない、何しろ皇太子の計算を台無しにしたのは自分なのだから、と彼女は思った。
フェイス・ラッターが皇太子の捨て子になることは間違いなかった。
ヒドゥン・レイダーズの標的であるイラ・ド・カリスは、もちろん皇太子として非常に傲慢な人物で、皇太子を支持する貴族たちとクーデターを企んでいる。
皇帝の後継者としての権利を持つレイアは、皇太子のとげとなり、ことあるごとに皇太子をあざ笑ってきた。
「ここ数カ月、第五王女の冷酷な噂を耳にしたが、空疎な噂ではないはずだね。」イラは笑い、身をかがめ、ライアにしか聞こえない大きさでこう言った。
「あの役立たずでバカなカロニアよりは少しは賢いけど、その賢さで俺を陥れようとしない方がいい。」
皇太子が去った後、ライアは大声で笑った。この王室にまともな人は一人もいなかった。
彼女が宮殿に戻ると、遠くから言い争う声が聞こえた。よく見ると、またカロニアだった。不運だった。
「ライア・ド・カリス、帝国の第二の月、カロニアの第二王子殿下とご対面。」彼女はお辞儀をしてから立ち上がると、目の前でおしゃべりしているカロニアに無関心な視線を向けた。
「それで、第二王子殿下が今回再び訪問された理由は何ですか?」
カロニアの後ろに隠れるリリス・フィロを見て、ライアは相手が再び自分の宮殿に不法侵入してきた理由の半分を理解したようだった。
「自分で見ろ。」カロニアは怒りに任せて新聞紙を遼の顔に投げつけたが、ライアはそれをいとも簡単に受け止めた。「またお前悪戯してるんでしょ?」
ライアは慌てることなく新聞を広げ、注意深く読んだ。
『社交界の花、リリス・フィロの秘密と闇。』
「それが私の許しを請いに来た理由なの、カロニア?」 彼女は読み終えた新聞を傍らのメイドの手にさりげなく手渡した。「確かな証拠もなしに、よくも私に会いに来たわね。」
彼女はカロニアの後ろですすり泣くリリス・フィロを見やり、もし彼女が不吉な人間だと知らなければ、本当に倍苦しんでいるのだと信じかけていただろうと感じた。
「カロニア殿下、きっとライア殿下がやったんじゃない......」泣きじゃくるリリスはカロニアの服の角を引っ張った。「誰かがわざとやったに違いない。」
ライアは目を丸くした。
「そう、そう、誰かがわざとやったの、その誰かとは、あなたよ、子爵、リリス・フィロ嬢。」彼女は首を横に振った。「証拠を仕掛ける新しい方法を思いつかない?」
リリスのすすり泣きとカロナヤの叱責に突然の間があり、それからリリスはすすり泣きから泣き声に変わった。
「アンジー、今日はこの仕打ちに答えてもらうわよ!」
襟首を掴もうとしたカロニアの手を、リアが手を伸ばして握りしめ、へし折った。
ハンカチを取り出し、何食わぬ顔で手を拭きながら、地面に倒れて泣き叫ぶカロニアと、泣くのも忘れて怯えるリリスを見て、ふと、その光景がとても滑稽に思えた。
「第二王子殿下を送り返せなさい。」
「以後私の許可なく誰かを入れた衛兵は全部解雇する。」 彼女は軽蔑の目でカロニアを見て言った。
「子爵、リリス・フィロ嬢、お前も早く消えれ。」
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