七章 王家勲章の行方

 おほりめぐらした小高いおかの上に、身を横たえるきよだいな王城。

 その王者に視線を集めるように、丘の周囲には放射状に街路がのびる。石造りの建物が、街路と街路のすきめる。

 王城へ続く八つの巨大な街路には、石がきつめられ、そうされている。

 砂糖菓子品評会は、八つの街路の一つ。最もはばの広い、王城正門へと続くがいせんどおりで行われる。城門の正面にある広場には、白いテントが張られ、その下には一段高い座が設けられている。品評会に出席する、王家の人々のための席だ。

 王都の人々は、お祭り好きだ。

 王家の人々が姿を見せるという理由だけで、広場には民衆がひしめいていた。

 民衆の視線の先にあるのは、王家の席に座る、王とおう。それと王女王子たちだ。きらびやかな衣装とそのはなやかな容姿にため息をつく。

 王家の席の前には、白い布がかけられたたくが横並びに並ぶ。その上には、ひとかかえもある砂糖菓子が、ずらりと置かれている。

 どれもこれも、しきさい豊かでせいな細工がほどこされているはずだ。

 ただし今は、すべての砂糖菓子に布がかぶせられているので、中身をかくにんすることはできない。

 それぞれの砂糖菓子の背後には、それを作った職人たちがひかえている。王のぜんに出るとあって、みないつちようでめかしこんでいる。

 立派な毛皮のベストを身につけた、ジョナスの姿もある。

 砂糖菓子品評会は、ダウニングはくしやくが取り仕切る。先国王の時代、内務大臣としてらつわんをふるった老人だ。今は一線を退いているが、それでも現国王もしんらいをよせる老臣である。

 老臣は職人たちが整列し、また、王家の人々が着席したことを確認した。

 しんを始めるべく、かいさいの宣言をしようと、ダウニング伯爵が立ちあがりかけた時だった。

 観衆の一部が、どよめく。

 何事かとまゆをひそめた老臣の目に、観衆の中に突っ込んでくる、一台の箱形馬車が映る。

「危ない!!」

「馬車を止めろ」

 たちが走り出すと、馬車をあやつっていたがらむすめが、づなを引きしぼり馬を止めた。そして御者台を飛び降りると、衛士たちのうでをすり抜けるようにして広場にけこんできた。

 彼女の背後には、彼女を守るように、くろかみの青年がいた。

 少女は、ダウニング伯爵のいるテントの前に駆け寄ろうとした。

つかまえろ!」

 衛士の一人が、少女の腕をつかんだ。しかし、少女を守っていた黒髪の青年が、衛士の腹にりをり出した。衛士が背後にき飛ぶ。

 腕を解放された少女に向かって、

「行け!」

 青年がさけぶ。少女は、なおも走る。

 少女のあとを追わせまいと、やりを構えた衛士の前に、青年が立ちふさがる。

 人々はそこで、やっと気がついた。青年の背には、美しい羽が一枚ある。

「あの娘に、手を出すな!」

「おまえ、……ようせい!?」

 全力で走っていた少女は、ダウニング伯爵のいるテントの真っ正面で、足がもつれた。そのまま体勢をくずし、前のめりにたおれこんだ。

 しかしそれでも顔だけをあげて、息をきらしながら必死に叫んだ。

「砂糖菓子品評会開催は、まだ宣言されていないとお見受けしました。ならばまだ、参加は可能なはず。わたしも参加いたします。砂糖菓子職人。名はアン・ハルフォード。出身は、しよう!」

 テントから飛び出した衛士たちが、転んだままのアンを押さえつける。

「貴様、不敬である!!」

 目を丸くしているダウニング伯爵の背後から、陽気な笑い声があがった。

「来ないと思ってたら、これはこれは、なかなか派手にご登場だな!! おまえさんはまったく、おもしろやつだよ。アン」

 聞き覚えのある声に、アンは目を見開いた。

 ダウニング伯爵の背後から、一人の青年貴族が姿を現した。銀色のしゆうを施した、正装。それはまぎれもなく、銀砂糖しやくの身につけるもの。

 それを身にまとっているのは、野性味のある茶色のひとみをした、見覚えのある男。

「ヒュー!?」

「マーキュリー。知っている娘か?」

 ダウニング伯爵が、ヒューにたずねた。

 ──マーキュリー?

 アンはヒューの顔ばかりを見ていた。

 ──ヒュー・マーキュリー!? マーキュリーこうぼう派のおさで、現、銀砂糖子爵の!?

「はい。その娘は確かに、ただの砂糖職人です。ご心配なく。あちらの妖精は、この娘の護衛です」

 するとダウニング伯爵は、槍を構える衛士たちに向かって手をあげた。

「よい、そなたらは控えろ。この娘は、参加希望者だ」

 シャルを取り囲んでいた衛士も、アンを押さえつけていた衛士も、命令に従い後ろにさがる。

 アンは起きあがると、その場にひざまずいた。

 ダウニング伯爵は、アンに目を移すといた。

「見れば年若い。その若さで、参加の口上。よく心得ていたな。だれに教わった」

「母に。わたしの母は、銀砂糖師でした」

「なるほど。参加の口上は、作法通り。しかし参加には、手順があるのを知っているか?」

「はい。参加の口上をダウニング伯爵に述べ、しかるのちに、銀砂糖子爵が、国王陛下のお目よごしにならないうでまえの砂糖菓子職人かいなかを、簡単な作業をさせることで見きわめます。それで認められれば、参加を許可されます」

「そうだ。その手順は、昨日終わっている。しかもすでに、国王陛下は臨席されて、今しも品評会は始まろうとしている。今からそなたの技量をためすには、時間がない」

「できるだけはやく、課題はこなします。だから、お願いです!」

 必死の様子に心を動かされたらしく、ダウニング伯爵は、ヒューに相談するかのように彼に向きなおった。

「どうする、マーキュリー」

「今から、課題をさせる時間はありません」

 にべもなかった。アンはくちびるみ、顔をせた。

 しかしヒューは、にやりと笑って続けた。

「しかし、ダウニング伯爵。幸運なことに、この娘の技量は、わたしが先日、試しております。国王陛下のお目汚しには、ならないと存じます」

 その言葉に、顔をあげた。目が合うと、ヒューは軽くウインクした。

 ダウニング伯爵は、うなずいた。

「よかろう。銀砂糖子爵が認めるならば、参加を許可しよう」

 そして砂糖菓子が並ぶ卓を指さした。

「ではたる三つ分の銀砂糖を、衛士に言って広場のはしに運ばせなさい。そして、そこへ自分が作った砂糖菓子を並べて後ろに控え、王家の方々のご判断を待ちなさい」

「はい。ありがとうございます」

 立ちあがると、ぺこりと礼をして、すなぼこりにまみれた服をはたく。

 広場の中央へ進み出たアンに、観衆と、参加の砂糖菓子職人のこうの視線が集まった。

 参加する砂糖菓子職人たちは、みなめかしこんでいる。

 しかしアンときたら、体に合わないだぶだぶの男物の服を着て、かみも顔も汚れている。細い体が余計に細く見えて、ねんれいよりはるかに幼く見える。そして見たこともないような、美しい妖精を連れている。

 あれはいったい、何者だ? 好奇の視線が、そうささやきかわしている。

 アンが並ぶように命じられたのは、しくも、ジョナスの横だった。

 ジョナスはこわばった表情で、ことの成り行きを見守っていた。

 となりにアンが立つと、強がるようにせせら笑った。

「やあ、アン。僕の服、よく似合うじゃない。それはそうと、砂糖菓子はあるの?」

 アンはキッと、ジョナスをにらみつけた。

「おかげさまで。この服は役に立ったわ。わたしのことはご心配なく、砂糖菓子はある」

「じゃあ、早く卓に並べなよ。どこにあるの?」

「ここよ」

 アンは前に進み出ると、白い卓の上に、布をかけた小さな固まりを置いた。

 それを目にした観衆や、砂糖菓子職人のあいだから、しつしようれる。

 ジョナスも、ぷっと吹きだした。

「ま、時間的に、できてせいぜいその程度だね。君の度胸には感心するよ、アン。そんな子供のおやつみたいな大きさの作品で、参加するなんて」

 アンは正面の王家のテントを見つめたまま、答えた。

「あなたにも感心するわ、ジョナス。他人ひとの作品を出品するなんて、はじらずにもほどがある」

「なんのことか、わからないね」

「銀砂糖子爵。ヒューの目を、せると思ってるの? 医者宿で、彼の目の確かさは思い知ってるはずよ」

 ほんの少し、ジョナスの表情が引きつる。しかしすぐに、口もとをゆがめて笑った。

「参加申しこみの時に、ヒューが銀砂糖子爵だと知っておどろいたけど。奴は、半年前に銀砂糖子爵になったばかりだよ。銀砂糖子爵になりたてで、えらぶってるだけさ。今回持参したを見ても、何も言わなかったよ、彼」

「わかってないはずないわ」

「どうかな」

 アンの作品が置かれたのを見届けたダウニングはくしやくは、手をあげて宣言した。

「ここに砂糖菓子品評会を開催する。国で最もすぐれた砂糖菓子職人には、銀砂糖師のめいあたえることを約束する」

 品評会を取り仕切る役人が、職人たちに指示を出す。

「皆のもの。国王陛下に、砂糖菓子をご覧いただくのだ」

 その言葉と同時に、すべての職人は自分の砂糖菓子をおおう布を取り去った。

 並ぶきらびやかな砂糖菓子に、観衆からため息が漏れる。

 国王は座のひじけに体重を預け、面白くもなさそうに右から左へと、ざっと砂糖菓子をながめる。

 と、王の視線が止まった。身を乗り出す。

 その視線は、ジョナスとアンの方を向いていた。

 ──まさか、お目にとまった!?

 アンのどうは、速まる。

 王はダウニング伯爵を手招きすると、その耳元に何事か囁いた。

 ダウニング伯爵は頷き、アンとジョナスに向かっていった。

「そこの二人の職人。ジョナス・アンダー。ならびに、アン・ハルフォード。砂糖菓子を持って、国王陛下のぜん近くへ」

 ジョナスとアンの視線が、からみ合った。

 観衆は首をかしげ、囁きあう。

「あっちの立派なのは、とうだな。群をいて、できがいい。けど、なんであんなちっこい砂糖菓子を、王は御前におしになるんだ?」

「さあ、ここからじゃよく見えねぇ」

 ジョナスはの力を借りて、国王の前に置かれている台の上に、砂糖菓子を運んだ。きんちように顔を強ばらせながら、跪く。

 アンは背後にいるシャルに、頷いた。

「行ってくる」

 シャルは頷き返してくれた。

 アンはそっと手に包むようにして、砂糖菓子を持つと、国王の御前へ行った。台の上に砂糖菓子を置くと、跪く。

 国王はゆったりと立ちあがると、台の上に置かれた砂糖菓子をのぞきこんだ。

「不思議だな。ここへ来てみろ、マーキュリー」

 低い声が、銀砂糖子爵に呼びかける。呼ばれたヒューは、王のかたわらに近寄ると、頷く。

「どちらも、同じ職人の手でつくられたもののように、作品のくせが似ておりますね」

 その言葉に、ジョナスがぎくりと身をすくませる。ヒューの目が光る。

「陛下は、どちらがお好みですか?」

 ヒューの問いに、国王の目が細まる。国王は小さなようせいを見つめていた。

「余は、こちらが好きだ。今にもこわれそうで。はかなげで。それでいて、生き生きしている。こんな美しい砂糖を見たことがない」

「はい」

「余はこの砂糖菓子が一番だと思う。どうか。この職人が、銀砂糖師にふさわしいと思う」

 アンは顔を伏せつつも、まさか、まさかと、鼓動が高鳴る。

 しかし。

「その砂糖菓子は、本当にらしいですわ国王陛下。ですが……」

 国王の背後から、おうの冷静な声がした。

「ですが国王陛下。祝祭のかなめとなる砂糖菓子、大きくはなやかなものを作る必要がございます。この小さな作品を作る技量があっても、大きな作品を作る技量があるかどうかは、疑問です。銀砂糖師にふさわしい資質はなにか、お考えになった方がよろしいかと存じます」

「それは、そうだな……」

 しばしのちんもく。アンの鼓動は、速さを増す。

「決めた」

 国王は口を開いた。

「余は、決めた。こちらの職人が、銀砂糖師にふさわしいとしよう。こちら、名は?」

 ダウニング伯爵が、告げた。

「ジョナス・アンダーにございます」

「では、余は宣言する。余はジョナス・アンダーの持参した砂糖菓子に、王家くんしようじゆするものとする。この作品を作った者が、今年の銀砂糖師である」

 観衆がどよめく。

 ジョナスが顔をあげた気配に、アンは力が抜ける。

 ──当然か。

「では、アン・ハルフォードはさがりなさい。ジョナス・アンダーはここに残りなさい。衛士たちが、アンダーの精製した銀砂糖三たるをこちらに持ってくる。こちらでその三樽の銀砂糖を、国王陛下にご覧にいれ、三樽の銀砂糖とあなたの砂糖菓子を、けんじようするのです」

「はい」

 興奮にほおを紅潮させ、ほこらしげに胸を張るジョナス。

 その顔をちらりと見てから、アンは今一度王家の人々におをして、砂糖菓子を手にした。

 ジョナスの三樽の銀砂糖が、国王の前に運ばれてくる。

 アンがそれに背を向けたしゆんかんだった。

「な、なんだ!? これ!?」

 国王の御前にふさわしくない、とんきような声をジョナスがあげた。

 アンは思わずふり向いた。

 ジョナスの目の前に運ばれた樽の一つから、ぴょんと勢いよく飛び出たものがある。それを目にして、ジョナスも国王も、ダウニング伯爵も、目を丸くした。

 飛び出したのは、てのひらだいの妖精。銀の髪に、青いひとみ。ミスリル・リッド・ポッドだ。

 アンは息をむ。

「これはどういうことだ、アンダー!?」

 驚きから覚めたダウニング伯爵は、ミスリルが飛び出した樽を覗きこみ、る。

「銀砂糖がひと樽分。そっくり、ないではないか!」

「そ、そんな鹿な」

 うろたえるジョナスにかわって、国王の御前にひれしたのはミスリルだ。

「ああああああ!! お許しください国王陛下のだん様! 俺はこのご主人様、ジョナス・アンダー様にお仕えする、しがない労働妖精でございます。ご主人様は銀砂糖の精製がドへたくそで、作品を作ったものの、銀砂糖は規定の量、できなかったのでございます。それで、俺が目くらましの術を使えるからと、銀砂糖が樽いっぱいに見えるようにしろと命じられ。樽の中に入れられたのでございます。けれど俺は、国王陛下の旦那様をだますなんざ、おそろしくてできません!!」

 おいおいおいおい、しばがかった仕草で、身をよじり。どこで準備したのやら、小さなハンカチまで取り出して、それをみしめてごうきゆうしている。

 アンは、ぽかんとした。

 ──なんでミスリルが、ここに? なにしてるの!?

 そして気がつく。

 泣きわめくミスリルのおなかが、張りけんばかりにぱんぱんに張っている。

 ──もしかしてミスリル。樽いっぱいの銀砂糖を、食べた……?

 ミスリルがなぜ、ジョナスが持参した銀砂糖の樽の中にいたのかは、わからない。

 けれどこんな芝居をしている理由は、一つしか思い当たらなかった。

 アンのために、してくれたのだ。

 作品をとられたアンのために、しかえしをしてくれようとしているのだ。

「これは、いんぼうだ!!」

 ジョナスは立ちあがると、王の御前だということも忘れたらしく、大声でさけんだ。

「この労働妖精は、ここにいる、この職人! アン・ハルフォードの使えきしている妖精です。そのことは、銀砂糖子爵もご存じのはずだ!! 僕と彼女は、知り合いです。彼女は自分が銀砂糖師になりたいばかりに、僕に様々ないやがらせをしています! これも、彼女の陰謀だ」

 あんまりな言いがかりに、ぜんとしたアンのうでを、ジョナスが乱暴に引っぱった。

「来い!! この、きよう者!!」

「痛っ!!」

 悲鳴をあげたアンを見て、ミスリルが顔色を変え、ばっときた。

「卑怯者はどっちだ!? アンを放せよ、このろう!!」

 泣いている芝居をやめて、ふんぜんと叫ぶ。

 するとジョナスが、勝ち誇ったようにミスリルを指さした。

「ほら、ご覧ください!! この女とこの妖精は、最初から知り合いだ。まずこのふざけた妖精は、そつこく殺すべきです」

「そんなことは、させないわ!」

 ジョナスの言葉にかっとして、つかまれていた腕をふりほどく。

 アンは、王家のテントに向きなおった。

 ミスリルを殺せと言われ、ここまで卑怯な真似まねをされては、もうだまってはいられなかった。

「確かに、あの子はわたしと知り合いの妖精です。こんなことをしたのも、わたしのためにです。その理由が、あります。この人、ジョナス・アンダーが、自分の作品だとしようして出品しているのは、わたしが作った作品なんです。彼が、わたしの作品をぬすんだんです。彼が、盗んだ作品で銀砂糖師になろうとするのを、この子は止めてくれようとしたんです」

「僕が盗みをしたなんて、うそだ!」

「このうえさらに、噓をつくの!?」

だまれ! 噓つきは、おまえだ!」

 アンとジョナスは、激しくにらみあった。

 観衆も、そして王家の面々も、ダウニングはくしやくも。その場にいるすべての人々が、アンとジョナスの言葉におどろき、まどっていた。

 いったい、噓つきはどちらだ、と。

 ただヒューだけが、おもしろそうなうすわらいをかべていた。

「では、はっきりさせましょうか? 国王陛下」

 顔をしかめて、二人の様子をながめていた国王に、ヒューが言った。

「この作品を、どちらが作ったのか。これを作った職人が、銀砂糖師だ。ならば、それを見きわめましょう」

「ほう。見きわめる方法があるのか? マーキュリー。あるならば、やってみるがいい」

「はい。では」

 ヒューは、かたわらにひかえている自分の従者らしき男に、何事かを命じた。そして王家のテントを離れると、アンとジョナス、二人の前にやってきた。

「医者宿の夜と、同じことをしてもらうぜ。ただし、今回はお題がある」

 国王のぜんには、小さなテーブルが運び出された。そしてその上には、冷水を入れた二種類の容器と、砂糖菓子を作るのに必要なへらや定規や、大小のめん棒などが手早く並べられる。

「国王陛下が選ばれた、この作品。ここに小さなちようがあるな。この作品にくっついている、この蝶。これと同じものを、今、陛下の目の前で作れ。これでだれの手によるものなのか、作ったもののくせかくすればわかる」

「わかりました。やります」

 望むところだった。アンはすぐさまうなずいたが、ジョナスはそうはくだった。

「いいか? ジョナス」

 問われて、ジョナスはかろうじて頷いた。

 アンとジョナスは、テーブルに並んで立った。

 周囲からは、観衆のこうの視線。正面からは、王家の人々の冷たい視線が注がれる。

 銀砂糖を目の前に、アンは軽く目を閉じた。

 背中に、温かな視線を感じる。なんとなくそれが、シャルの視線だとわかった。

 ──蝶を作ろう。シャルに喜んでもらえるような、とびきりれいな蝶。

「はじめ!」

 声とともに、アンは目を開けた。銀砂糖に、冷水を加える。

 練って、銀砂糖のつやを出す。

 ──もっと練ろう。艶やかな羽が欲しい。そう、シャルの羽みたいな、美しい羽を作りたい。

 銀砂糖を手にすると、となりで、がちゃがちゃと不器用な音を立てるジョナスのことが、不思議と気にならなくなった。

 ジョナスの額には、あせき出していた。時々、舌打ちをする。

 アンは指を動かした。

 ──もっと、綺麗に。

 シャルが見ている。そのことで、ひどく安心した。だから、無心になれた。

「もう、いい」

 ヒューの声に、アンははっとした。

 顔をあげると、いつのまにか、目の前にヒューが立っていた。そしてそのとなりに、テントを出た国王も、また立っていた。

 国王は、二人の職人の手元をじっと見ていた。

 ジョナスが、手をふるわせてその場にへたりこんだ。

「アンダーの蝶は、お話にならない」

 ヒューが言った。

 ジョナスが今まで練りあげていた砂糖の蝶は、かろうじて蝶の形になっていた。

 しかし。この蝶は、けして飛ばないだろうと思わせた。あきらかに、国王に選ばれた作品よりも技量がおとっている。

 次にヒューは、アンの手元を見た。

「ハルフォードの蝶は……陛下が選ばれた作品の蝶と、似ている。でもちがうな」

 アンは、自分の手元を見た。

 美しい蝶がいた。

 国王に選ばれた作品に、ひっそりととまっている蝶よりも、はるかにつつましく、それでいて、今にも羽ばたきそうな艶がある。しきさいのない純白の蝶なのに、光の反射でにじいろにすら見える。

 国王はまゆをひそめる。

「どういうことだ、マーキュリー」

 かたをすくめて、ヒューは笑った。

「わかりません。結局、陛下が選ばれた作品を、どちらが作ったのやら」

 二人が作った蝶を、国王は見比べた。

「余が選んだ作品をどちらの職人が作ったのか、余には、明白に見えるが?」

「では、ハルフォードの蝶と、陛下が選ばれた作品の蝶。陛下は、どちらがお好みですか?」

「それは当然、ハルフォードの蝶だ。余が選んだ作品よりも、もっと……」

 そこで国王は、なにかに気がついたようにはっとした顔をした。そして、しようした。

「なるほど。おなじではないと、そういうことか」

「ええ。だから、どちらが作ったとは、断言できません」

 その言葉に、ジョナスは最後の活路をいだすように食いついた。

「ぼ、僕は、静かに一人で作業しないと、うまく作れないんです!! ですから、静かな場所で一人、時間をかけて作らせてもらえれば、陛下が選んでくださったのと同じものを、作ることができます。本当です。ちかって、本当です」

 もしこの場で、ジョナスが他人の作品を、自分が作ったものとして出品したのだと判明すれば、国王をだまそうとしたということになる。重罪だ。首が飛ぶかもしれない。

「見苦しいぞ、ジョナス」

 ヒューの言葉に、ジョナスはいっそう声を高くする。

「でも僕は、噓をついてない!! 僕が噓をついているしようなんてない!!」

「噓はついていないと?」

 静かに。国王が問うた。その重々しいひびきに、広場がいつしゆん、しんとなる。

 震えながら、ジョナスはその場にひれす。

「神かけて、噓は言っていません」

 続けて、国王はアンを見る。

「そなたは、噓を言っていないか? ハルフォード」

「はい」

 おくすることなく、アンは国王のひとみを見続けた。すると国王は、にこりと微笑ほほえみかけてくれた。

「どちらも噓をついていないとなると、これは、もはや、余にはわからぬ。証拠がないものは、断罪も出来ぬ。栄光もあたえてやれぬがな。ダウニング!!」

「はっ」

 呼ばれた老臣が、王のそばによる。

「今年の銀砂糖師は、がいとうする者がいないようだ。これで、終わる!」

 さっと国王は、きびすを返した。そして戸惑っている王家の人々や家臣達をしりに、ゆうぜんと、テントを出ていった。

 観衆は顔を見合わせた。

「どういうことだ?」

「王家くんしようは、なしか?」

「選びなおしは? しないのか」

「だって、王様がいっちまった……」

「選びようがねぇよ」

 国王は、作品を選んだ。しかるのちに、退席した。

 しかし、作品を作った人間が誰なのか、わからないまま。

 前代もん

 今年の砂糖菓子品評会では、結局、銀砂糖師に選ばれる人間はいないということだ。



 国王の処置に、あきれたような顔をしておうも立ちあがる。そしてぼうぜんとしているアンにちらりと視線を向けると、ダウニングはくしやくを呼び、何事かを告げて立ち去る。

 ざわめき、顔を見合わせていた砂糖菓子職人たちだったが、国王が品評会を再開する気配がないとわかると、あきらめて帰りたくを始めた。

 観衆もざわざわとさわぎながら、歩き出す。

 ダウニング伯爵が、ゆっくりとアンのそばにやってきた。

「アン・ハルフォード。王妃様から、お言葉である」

 はっとふり返ると、老臣はおごそかに告げた。

「来年は、祝祭にふさわしい砂糖菓子を持って来るように、と。楽しみにしているとのおおせだ」

 その言葉の意味をさとり、アンは喜びが胸に広がる。ほおが紅潮する。

「はい。……はい! 必ず。必ず参ります」

「ところで、ハルフォード。そのようせいの砂糖菓子、売る当てがないならば、わしに売ってはくれぬか? まごむすめが近くけつこんする予定でな、らしい砂糖菓子を探していたんじゃよ。六百クレスで、どうじゃ」

 六百クレス。金貨六枚。目眩めまいのするような大金だ。馬二頭と、新品の箱形馬車が買える。その金額に一瞬、くらりとする。だが、アンは首をふった。

「申し訳ありません。ダウニング伯爵様。これはある人にあげると、約束してしまったものなんです」

「六百クレスじゃよ」

「……すみません」

「そうか。残念じゃが。まあ、そのくらい変わり者でなければ、その砂糖菓子は作れまいよな。ところでマーキュリー。アンダーのしよぐうは、任せるぞ。銀砂糖子爵として、適切に処置しろ」

「お任せください伯爵」

 おおぎように、ヒューはこしを折る。

「では、ハルフォード。来年、また」

 さわやかなみを残して、老臣は背を向けた。

 ざわめきの中に取り残されたアンとジョナスを、腰に手を当ててヒューが見おろした。

「さて、と。アン。こうなっちまったけど、どうするよ。ジョナスの処遇は、俺に一任されたわけだし」

 くだけた口調で、いてきた。

「ジョナスに、何か言いたいことはないか? 俺になにかして欲しいことはないか? 俺は、国王陛下みたいにやさしくないからな。砂糖菓子職人一人、首を飛ばすのなんて平気だぜ」

 へたりこんだままのジョナスの体が、びくりとする。顔をあげずに、体をふるわせる。

 いつの間にかヒューの背後には、サリムの姿がある。ものねらうような目で、ジョナスを見ている。

 アンは首をふった。

「ヒュー……銀砂糖子爵様には、感謝してます。参加を後押ししてくださった」

「おいおい、そんなに改まるなよ。ヒューでいいぜ」

 ぽんと頭をたたかれたので、アンは肩をすくめる。

「本当に、感謝してる。ヒュー。ありがとう。ジョナスのことは、もういい。言いたいことはない。言いたいことはないけど……」

 打ちのめされた様子のジョナスは、おろかな行いのばつを、じゆうぶんに受けているように見えた。それにいまさら、何を言ってもはじまらない。

 言いたいことはない。しかし。胸にたまったものは、いっぱいある。

「立って。ジョナス」

 静かにうながしたが、ジョナスは動かない。

「立って」

 再度言うと、ジョナスは顔をせたまま、のろのろと立ちあがった。

 アンは、彼のむなぐらをぐっとつかんだ。

「ジョナス!! わたしを見て!!」

 はっとジョナスが顔をあげたしゆんかん、彼の頰に向けて一発、平手をった。

 ジョナスがびっくりして体をすくめているのを、き放す。にっこり笑ってやった。

「ああ、すっきりした! 一発、ぶんなぐってやりたかったの! これでいいわ」

「適切な処置だ!」

 ヒューは、げらげらと大笑いした。背後で、サリムがくすりと笑う。

「よし、じゃあ、解散だ!!」

 ヒューの言葉に、アンはぺこりと彼におをした。ヒューは微笑ほほえんでうなずき返した。そして二人は、同時に別々の方向に歩き出した。

 ジョナスは、ひっぱたかれた頰に手を当てて、その場に取り残され立ちつくしていた。

 そのジョナスの足もとに、ちょこちょことけ寄ってきたのは、キャシーだった。彼女はそっと、ジョナスのズボンのすそを摑んだ。



 人が入り乱れる広場の中で、アンは黒い瞳をさがした。

 少しはなれた場所で、こちらを見ているシャルがいた。

 アンは自分の砂糖を手に、ゆっくりと、彼に近づいた。

「シャル。ありがとう。今年の銀砂糖師には、なれなかった。けれど、来年またここに来る。ママを天国へ送るのには、間に合わなかったけど。でもママには、今のわたしの、せいいつぱいの砂糖菓子で、まんしてもらう」

 あれほど今年の銀砂糖師になることにこだわっていたのに、その思いがひようはくしたようにかすんでいた。

 あれは母親こいしさから、「母親を天国へ送る」という思いに、すがっていたに過ぎなかった。さびしさやどくをごまかすために、必死に追いかけていただけ。

 それを自覚すると、心はすっきりと晴れわたっていた。

 やっとエマの死を、受けいれることができた気がした。

 なぜなら今、目の前に、黒い瞳があるから。

 この砂糖菓子を渡して、シャルが目の前から去ったとしても。彼が一度、アンのために帰ってきてくれた事実は、消えない。この世のどこかに、いつしゆんでも、アンのことを思いやってくれた存在がある。それはとてもてきなことだった。それだけで、生きていける気がしていた。

 そしてアンは本当の自分の未来を、これから追いかけることができる。銀砂糖師になる未来。

 それは母親のようのためなどではなく、アンが自分のために選ぶ未来。

 ──わたしは、銀砂糖師になりたい。何年かかってもいいから……。

 新たな決意が心に生まれた。

 ──ママをえる、銀砂糖師になる。

「やる気が出てきたの。シャルのおかげ。ありがとう。約束通り、この砂糖菓子はシャルのものだから。返すね」

 彼が去る寂しさが、胸をしめつける。しかしやっと生まれてきた本物の希望にすがり、無理に微笑ほほえんだ。

 差し出された砂糖菓子を、シャルは見つめた。しかしすぐに、ぷいとそっぽを向いた。

「まずそうだ」

「はぁ!?」

 目をむいたアンに、シャルは言った。

「砂糖菓子は、つくられた形が良ければ、味もいい。できそこないは、味も今ひとつだ。俺は銀砂糖師が作った、特別にうまい砂糖菓子が欲しい」

「な、なによ、それ。これじゃ不満だって言うの?」

「不満だ」

「じゃ、これ以外にどうしろって!?」

 このにおよんで、なぜこんなにくらしい口をきくのか。

 シャルのれいひとみに見つめられて生まれた、甘やかな気分がすっ飛んでいく。

 するとシャルは、さらりと言った。

「来年のこの日に、もらう。それまでは必要ない。おまえが銀砂糖師になるまで、いつしよに待っててやる」

 アンは目をぱちくりさせた。

「え……? 一緒に?」

「悪いか」

 げんそうに、シャルはじろりとアンをにらむ。

「悪くは……ない。ぜんぜん。でも、……どうして?」

 どうして、と問われたシャルは、むっとして、なんと言うべきか考えあぐねているように見えた。しかし。しばらくすると彼は、降参したようにふっと表情をやわらげた。

 答えのかわりに、彼はアンの右手を手に取った。そして。

「アン」

 ささやくように、呼んだ。はじめて、名前を呼んでくれた。そのことに、アンの胸は熱くなった。

 シャルは優しく、アンの指に口づけた。いつくしむように。

 それは、なにかをちかこうのようだった。

 口づけの意味は、わからない。けれど、どうしようもないほど、どきどきした。

 シャルが、アンを見つめる。

 ──綺麗な瞳。うそのない、まっすぐな。

 生まれて初めて感じる、わきあがるようないとしさ。友達を好きなのとは、どこかちがう。

 それは、はつこいかもしれなかった。

 その時。

「おい、見たか!! 俺の一世一代の、名演技!」

 元気な声とともに、ミスリル・リッド・ポッドが、ぴょんぴょんんで、広場を突っ切ってきた。シャルはさりげなく、アンの手を離した。

 ミスリルはひときわ大きくねると、アンのかたにふわりととまった。

 アンは、申し訳なさとうれしさがどっとき出す。

「ミスリル!」

 思わずミスリルを引っつかみ、ぎゅっときしめた。

「ごめんね! ごめんね、ミスリル、ごめんね。あなたが銀砂糖を食べたなんて、一瞬でも、疑って。わたしが鹿だった。信じ続けてあげられなかった。ごめん。許して」

「おおおお、俺は、ミスリル・リッド・ポッドだ。りゃ、略すなよ。とにかく、許すも許さないも。アンのためじゃなきゃ、俺はこんな真似まねしないからな」

 ミスリルは真っ赤になりながらも、アンの手から離れると、鼻の下をまんたらしくごしごしこすった。

「でもわたしは、一瞬でも、あなたを疑った」

「へん。人間なんて、馬鹿者ぞろいだからな。アンが馬鹿なのも、織りこみずみだ。アンがあんなかんちがいしたっておどろかないし、それで俺は、恩返しの決意を変えたりしないぜ。俺はようせいだからな。簡単に恩返しをあきらめたら、妖精がすたるってもんだ」

 ものすごく失礼なことを言いながらも、胸を張る。

「あいつの悪だくみに気がついて、俺は、あいつをとっちめてやろうと考えたんだ。悪いやつだな、あいつ。はじをかかせてやろうと思って、たる一つ分銀砂糖をってやったぜ!」

 わはははは、と笑うが、ちゆうで気持ち悪そうにうっとうめく。

「樽いっぱい銀砂糖を喰うと……さすがに、きそう……うぅ」

 妖精の食事の方法を考えると、どこから、どんなものを吐くのか見当がつかない。しかし、とんでもないところから、とんでもないものを吐かれそうで、アンは身を引いてけんせいした。

「ま、俺はあんまり役に立たなかったけど……てか、アンをきゆうにおとしいれた気が……」

 りつつもミスリルは、小声で反省する。

「そんなことないよ。ありがとう。でも、どうやってジョナスがわたしの砂糖菓子をぬすんだのに、気がついたの? こっそり、わたしたちについてきてたの?」

「俺はずっと、アンの馬車の中にいたけど」

「え?」

 おどろいてシャルをふり返ると、シャルは肩をすくめた。

「ミスリル・リッド・ポッドは、銀砂糖を盗んだと疑われた後、おまえの馬車の荷台にげこんで、かくれてた。確かに、おまえの目の前からは、消えてただろう」

「そ、そういう意味……」

 ジョナスはミスリルが隠れていたアンの馬車をごうだつし、結局、ミスリルにしてやられたのだ。

 ミスリル・リッド・ポッドは、へんと鼻を鳴らす。

「忘れたか。俺は恩返しのためには、意地でもアンについていく。ごくの底まで、ついていく」

「でも今回ジョナスをとっちめてくれただけで、じゆうぶんな恩返しだよ」

「まだまだ! 俺の恩返しは、こんなもんじゃない! もっとそうだいな恩返しをさせてもらう」

「あ、ははは……。壮大な恩返し……?」

 それは、いかなるものやら。なんとなく、こわい気がした。

 シャルがぽつりという。

「ありがためいわくという言葉を聞いたことがあるか? ミスリル・リッド・ポッド」

「ないな、あいにく。おまえこそ、なんでアンと一緒にいるんだよ。ルイストンに到着したんだから、アンは情け深くもおまえを自由にしてくれたはずだろう。どこへでも、自由にいける身分だろうが。なんでここにいるんだよ!?」

「俺はかかしに、もらうものがある」

 また、かかしと呼んだ。アンはがっかりした。

 ──さっき、アンって呼ばれたと思ったのは、まさか、わたしのげんちよう

「とことん失礼な奴だな、シャル・フェン・シャル! いくらアンが、どっからひいき目に見ても、かかしにそっくりとはいえ、かかし、かかしと呼ぶな!」

「かかしをかかしと言って、何が悪い」

「なっ、おまえ!! かかし、かかしと連呼するなよ!」

「かかしを連呼してるのは、おまえだ」

「とにかく! 事実でも、言っていいことと悪いことが、世の中にはあるんだ! かかしなんて、かかしなんて!! そっくりすぎて、笑えないだろうが!!」

 力なく、アンは笑う。

「あなたたち……、二人とも失礼なんだってこと、いい加減自覚してくれる?」

 すると二人の妖精は、はたと気がついたように言い争いをやめて、おたがいに顔を見合わせた。

 ──今年、銀砂糖師になれなかった。でもまた来年来るようにと、おう様がおっしゃった。それで充分。

 美味おいしい砂糖を欲しがる、黒曜石の妖精と。

 無理やり恩返ししたがる、すいてきの妖精と。

 すくなくともこれからは、ひとりぼっちじゃないと知る。

 ──わたしは、一人じゃない。いつかは、銀砂糖師になれるかもしれない。未来がある。これは最高。

 アンは、微笑ほほえんだ。

「ま、いいか。かかしでも、カラスでも。わたし、あなたたちのために、砂糖菓子を作る。てきな砂糖菓子をね。わたし、それしかできないから」

 空は高くんでいる。

 王都の広場には、たくさんの砂糖菓子の、甘いかおりがただよっていた。

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