第9話 お礼とお世話係
今日はトレントとゴーレムにお礼をしている。
フェルとスラはゴハンを上げるとすごく喜んで
くれるからいいのだけど、この2人は頑張ってくれているのに
お礼ができていなかった。
だから召喚書を読んで、何をすれば喜んでもらえるのかを
調べて、それを実行している。
トレントは枝の剪定であった、いらない枝をきって整えて
もらうのが大好きらしい。
トレントのおかげで、食料が安定しているのだ。
このくらいの事、手間ですらなかった。
トレントのおじさん顔が
にんまりと笑っている。
うん。喜んでくれていてよかった。
ゴーレムは背中に生えてしまう雑草を抜いてほしという
要求だった。彼のおかげで堀は一日で完成した。
それに土を操るという能力は応用も利くだろう。
草を抜いてやると、腕を振り上げて喜んでくれた。
表情は変化しないが、感情豊かだ。
・・・ただ、良いことばかり起きている訳ではなかった。
たくさん動き、汗を掻いた後に起こる問題。
そう、お風呂入りたい問題が、今、
僕の中で浮上してきている。
この村には当然お風呂というものはなくて、
川で水浴びをして体を綺麗にする。
でも川の水はとてもつめたくて、
現代のお風呂を知っている僕にはとても
じゃないが、耐えられない。
ああ、はやくお風呂入りたい。
でもお風呂を作るとなると難易度が高い。
お風呂場はゴーレムの力でなんとかなるだろう。
でもたくさんの水と、それを湧かすだけの火力、
そしてその火力を維持するだけの燃料が問題だ。
やろうと思えばできないわけじゃない。
でもそれを毎日やる労力を考えると、
とても現実的ではないのだ。
とほほ~。
だから今日も僕は冷たい川で
汗を流す。
でも、くよくよしていても仕方がない。
出来ることをやっていくだけだ。
あと、この村についても色々と分かってきた。
この村の人口はだいたい30人くらい。
僕以外はみんな獣人という種族らしい。
猫のような耳と尻尾があるのが特徴だね。
そしてこの村の近くに他の集落はないそうだ。
なんでも人間界では獣人は奴隷にされているらしい。
だからこんな山奥の危険な所でひっそりと
暮らしているのだとか。
かわいそうなものだ。
自分を壊さない事を大前提にして、
助けて生きたいと思う。
ちなみにこの村の名前だが、
ついさっきタク村に決まった。
元々名前などなかったらしいが、
僕の名前をとって命名してくれたらしい。
うれしいような、恥ずかしいような。
でも歓迎されていることは、悪いことじゃない。
彼らの期待に応えられるよう、
できるだけ頑張りたいかな。
次の日。
「タクマさん!今日から私があなたのお世話をします!」
そういってラナちゃんが小屋の中にはってきた。
お世話?
なんの話だろう?
「みんなで話あって決めたんです!
タクマさんにはお世話になってばかりだから、
せめて身の回りのお世話くらい私達がしようって。
それでその大任に私が就きました!」
ラナちゃんはエッヘンと胸をはる。
ついでに耳と尻尾もピン!と立っている。
「ありがとう。でも、あまり困ってはないかな?」
「ええ!ソンニャア~!」
彼女の負担になってしまっては申し訳ないと
ことわろうとするが、ラナちゃんはものすごい
ショックを受けているようだった。
尻尾も耳も垂れ下がる。
う~む。
確かに、善意を無下にするのもよくないよな。
それに彼女自身が望んでいるなら、負担など気にせずに
してもらったほうがいのか。
「ごめん。やっぱりお願いするね」
「ほんと!やった!私頑張るね!」
再び彼女の耳と尻尾がピン!と立つ。
元気で明るくて、見ていてとても嬉しく
なる子だなと思いました。
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