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犬屋小烏本部

第1話遊園地でやったバイト

ここに嘘発見器がある。はい、どうぞ。よおくご覧になってみてください。







あははっ。怒るなよ。そうだって。これ、ただの箱だ。空っぽの箱に「嘘発見器」っぽいあれこれをつけてみたんだ。

どうよ、それっぽいだろ?


話したいのはさ、別にその機械が本物の嘘発見器かってことじゃない。嘘か本当かの見分けはどこでつけるのかってこと。

まあ、聞いてくれや。




ここから一番近い遊園地、そこそこ古くて小さい、はっきり言ってショボい遊園地。そこにはおばけ屋敷がある。

聞けば開園当初からある施設で、ショボい遊園地の中でも群を抜いてボロい。そのボロさが逆にいい味出してて、まさにおばけ屋敷! って感じの建物。だからお子さまは建物見ただけでビビっちまって逃げ帰る。逆に一部の恐いもん好きにはたまらないスポットらしくて、園の客が増える週末よりも平日の方が混んでる。

やけに詳しいだろ? バイトしたことがあるんだよ、そこで。って言っても受付だけどな。

これはその時の話だ。




まず言っておく。俺はその時金欠だった。多少ヤバめの噂があるバイトにだって応募してやろうと思うくらい、追い込まれてた。アパート住まいで家賃はギリギリ。電気水道ガスは既に止まってる。それくらいヤバかった。

求人にもそのバイトは載ってなかったよ。でも誰からか話は聞いた。

あの遊園地のおばけ屋敷、受付のバイト募集してるぞ。ってさ。

なんでやろうと思ったのかはもう覚えてない。ただ、遊園地は近かったし、連絡くらいしてもいいんじゃないかって思ったんだろ。多分、な。

気づいたら俺は遊園地の電話番号調べて、かけて、バイト募集の話が本当か訊いてた。そこら辺の経緯はほんと覚えてないんだ。


あっという間にバイトには採用された。なんと言っても応募してくる奴が他の施設と比べて極端に少なかったらしい。それと、あの噂があったから。

結構広まってたあの噂だけどさ、はっきり言って嘘っぽい内容なんだよな。

ああ、知らない?

出るんだってさ、あの遊園地。


おばけ屋敷の見た目がアレだから、そこからくる噂だと思ってたんだ。で、面接の時に言われんの。出るかもしれないけど大丈夫かって。

いや、何が大丈夫かって話なんだけどさ。実際に何人もそういう体験してるらしくて。でも俺は問題ないですって答えて終了。

いくにちから来てくださいって言われて、あと、その場で業務とかの説明を受けたかな。そんだけ俺は金欠で、あっちも人手不足だった。


俺のやったバイトは昼過ぎから閉園までのおばけ屋敷受付。何回かやって、特に何も起こらなかったしさ。俺、噂は作り物の嘘だって思ったんだ。それか間違い。

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