第36話 リーダー選任

 聞こうとするもいつの間にか集合時間になっていたようで、ぞろぞろと残りのメンバーが集まった。

 松江まつえはDODよりAZKを推しているようで、嬉しそうに音頭を上げる。


「「おはようございます!」」

「よう、揃ったなAZZアズ KICKSキックス!お前らには期待してるぞ」


 松江のはあまり合宿中姿を現していなかったせいか、中には彼を覚えていないメンバーもいた。

 真喜屋まきや高戸たかとに恐る恐る聞く。


「えっと…あおちゃん、この人誰やっけ」

「松江さん。審査員されてた方だよ」

「あかん!全然覚えてなかった〜すんません松江さん〜!」

「いいんだ。今日からはワシが忘れられないくらいみっちりしごくからな」

「ひぇッ⁉︎許してください〜⁉︎」

「DODの担当は鮫山さめやま。そしてAZKの担当はこのワシだ。お前達、よろしく頼むぞ」

「えっ、松江さんが?」


 そう、鮫山が最終選考で5人落とすことを惜しく感じ、ひどく悩んだそうだ。落ちる5人にも何か出来ることはないかと。

 そこで河岸かわぎしと松江と意見を出し合い、まとまった。

 新しくグループを作ること提案したのは松江だった。


「俺がこのグループを作ったと言っても過言じゃない」

「過言だ」

「鮫山テメェが泣きついてきたから提案してやったんだろうが!悪ぃがワシはETSUエツなんかよりこっちのグループのが上手くいくと見てるぜ」

「コイツらのポテンシャルは認めるがDODとやりあう気か?」

「AZKがDODメンバーにタイマンで負けた弱小グループって言いてえんだろうがワシはそうは思わねえ。ワシはコイツらに可能性を見出してやる」

「そこまで言ってないだろ…」


 AZKメンバーが今の会話で何も感じないわけがなく、DODに対する対抗心が湧き上がり、袖山そでやまが発破をかける。


「もう負けない!確かに私達は現DODメンバーに遅れを取ったけど、この新グループという機会をいただいた以上は全力で戦うよ!」


 続いて菊月きくづきも捲し立てる。


「そうだよ!DODにはもう負けない!だって…このままじゃ…悔しいもん…」


 だが高戸はそもそもの論点が違うのではと気付く。


「みんな、打倒DODみたいになってるけど、同じ事務所の仲間だよ?争う必要なんて…」


 しかし鮫山がそれに対して解答を用意していた。


「いいや、戦ってもらう。元々そういう計画だったからな」

「えっ?そうなんですか?」

「そうだろ松江?AZKを担当すると言い出したのは」

「もちろんだ。AZKはDODより上に上がる」

「じゃあ私達は…悦叶さん達と戦うんですか⁉︎」


 松江がAZKの結成を決定したのも、鮫山に対する対抗心のようなものがきっかけらしい。

 鮫山の作るDODを叩き潰すことに生を見出していた。


「はっはっは!そういうことだ!グループ名のAZZ KICKS、それはDODってこった!」

「な…」

「そんな意味が…」


 鮫山が痺れを切らし討論を続ける。


「で、リーダーはどうすんだ」

「だから言ってんだろ、高戸で決まりだ」

「お前がよくてもチームがなんて言うかわからんだろ」


 しかしAZKのメンバー達も高戸が適任だと思っていたらしく何も意見が出てこない。


「…高戸、いけるか?」

「はい。光栄です。しかし、リーダーとは何をするのでしょう?」

「何も考えなくていい。自然と板についてくる。元々素質はある」


 こうして高戸がAZKのリーダーを担うこととなった。

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