金!暴力!!SIX!!!

栄川浩一

第1話 怪異ハンター京のウォーミングアップ

俺の名前は久留間京(くるまけい)

現代の怪異ハンターをやっているアラサーだ。


怪異ハンターとは、ネット上の有志が集まって結成したグループである。

メンバーは各々、独自の探索方法で怪異の存在をかぎつけると

ハンター同士に情報を共有しあったり、協力して怪異の解明・解決に挑むという組織だ。


構成員は老若男女、職種も学生から社会人まで幅広い

言ってしまえば、暇な連中のたまり場だ。

しかし集まる人間は皆熱心であり、情報交換や共有の場は非常に役立つため

お互いの利益になることもあるというわけだ。


そこで、俺はある記事をネット上に昨日投稿した。その記事とは

怪異【迷い猫】を発見、解決した というものだ。






◇◇◇






最近、野良猫がこのあたりをよくうろうろしているという目撃情報を

近所の人の声から耳に入る。この情報を聞いて俺はピンときた。



怪異ハンターを10年近くやっている俺の勘が言っている…


これは……【怪異】だ!



早速準備に取り掛かることにした俺はネットで情報を集めることにした。

すると意外なことに目撃情報が数多くあった。


目撃場所は様々で、街中から公園、果ては学校の敷地内まで様々な場所であった。

俺はこれらを元にして野良猫がいるという周辺の調査を開始することにした。


すると案の定、公園のベンチに野良猫を発見したのだ。


そこで俺は猫の鳴き真似をして相手を油断させつつ、

餌を与えながら近付き、後を付いていくことに成功したのだった。


そこまではよかったのだが

俺はすでに怪異の術中にハマっていた。






「ここは…どこだ…?」


俺は今、どこかの街中にいる。

周りに霧がかかっているようで遠くをよく見渡せない

現状を把握をしつつ、ポケットから飴を取り出して口に咥える。



「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚に異常なし。

 五感に訴えるものではない。


 時計を見る限り俺は3時間ほど猫を追っていたことになる。

 恐らく時間を忘れるほどの魅了能力にかかっていた。


 携帯は圏外、当然か。


 遠くの景色がハッキリしていないところを見ると 

 経験上、このテリトリーからの脱出はほぼ不可能

 獲物を長時間拘束して疲弊したところを襲うタイプ。






 そして、


 俺が魅了を解いたことに猫も気づいている!」



猫はすでにこちらに振り返り俺の様子を伺っている。


徐々にその体を大きく変化させている

サイズはすでに俺よりも大きくなっており、見下ろされている。

全身が赤黒く染まり、どこか影がかかったような姿に変化させながら

徐々に俺との間合いを詰めてくる



人VS猫…いや虎かそれ以上といっても過言ではない怪異と1対1

武器はなし、手ぶら

逃げ場もなし



「にゃああああああああああああ!!!!!」

怪異は威嚇の声をあげると俺に飛びかかってくる。


圧倒的不利に見える状況だが

俺は百戦錬磨の怪異ハンター

この程度の修羅場などいくらでも潜ってきている。


俺は冷静にポケットから【あるもの】を取り出した。






◇◇◇






以上が。私が遭遇した怪異【迷い猫】の記事だ

仲間からのコメントが届く




Comment No.1


『怪異【迷い猫】の記事を読みました。


 猫の怪異とはいえ

 猫じゃらしとちゅーるで懐かせての解決とは…

 

 平和的な解決でとても良いですが、

 怪異のテリトリー内は危険なので

 念のため武器を携帯した上で事に臨んでください。』


Posted by ハルメイ





Comment No.2


『野良猫がよく近所をうろついてる これは怪異だ!

 ↑ねーよ


 猫の鳴き真似をして油断させる

 ↑ねーよ


 猫じゃらしとちゅーるで解決

 ↑ねーよ


 これは明らかにネタ記事 ハルメイ釣られてて草

 本当にあった事だけ投稿しろ』


Posted by 無名の怪異ハンター





Comment No.3


『いやベテラン怪異ハンター京さんの記事なら信憑性がある

 これがベテランのテクニックなんだろ


 いや、ないわ

 直観で怪異を感じ取るのは分かる

 猫じゃらしとちゅーるで解決もぎりぎり納得はいく


 ハードボイルドを売りにしている京さんが猫の鳴き真似って…』


Posted by 無名の怪異ハンター





Comment No.4


『野良猫探してくる』


Posted by 無名のキャットハンター







怪異【迷い猫】は消滅した

猫の気が済むまで遊び相手になってあげて

満足した時、怪異という呪いが解けてただの野良猫に戻ったのだ。


その後、野良猫はどこかへ去っていった

これが記事の結末だ。





怪異とは悪意を持った何者かによって怪談話や恐怖体験、都市伝説を

再現して生み出された現代の呪いである。


・アクロバティックサラサラ

・くねくね

・八尺様

・トイレの花子さん


有名どころではこのあたりだろう

アクロバティックサラサラとは戦ったことがあり、

かなり苦戦したから印象深く記憶に残っている。



俺たち怪異ハンターはハルメイをトップとした

表向きは怪異の解明・解決するお遊びグループだが

裏では怪異を生み出し、日本に混沌をもたらそうとしている何者かを追っているグループだ。



その手掛かりを掴むために俺たちは日夜怪異の情報を集めている。


「ん?俺宛にメッセージが届いている…しかも緊急の用事か」





俺はメンバーの一人から緊急の連絡を受け、ある現象の調査を頼まれた。

その怪異の名は……『SIX』




怪異【迷い猫】

・飼い主がいるが何かの理由で自宅に帰れなくなった迷子の猫

ではなく

猫に化けて魅了能力で人間を誘い、

自身のテリトリーに獲物を迷い込ませてから襲い掛かる食人怪異


・弱点 人懐っこい



※怪異でなくとも野良猫は危険ですので専門の知識を有している方以外は

手を出すべきではありません。

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