第24話 それぞれの戦い
ワイルドベアを解体した後にまた林の中へと身を隠して洞窟を探していた。
しかし、そんなにちょうどいい洞窟なんて見つかるはずもない。
それはそうだろう。学院で用意したジャングルだ。隠れるのに都合のいい場所などあるはずもない。
魔物を狩らせるのが目的なのだから。
ひとまず、頑丈そうな木へと登り、このジャングルの全体の広さを把握しようと試みた。
高い木に登ってみたのだが、端が見えない。
それは空間魔法で拡張されている空間だからなのか。
こんな広い空間で自分のクラスメイトと会えるのか?
それは甚だ疑問だった。
となれば、僕はこの木の上とかでしばらく隠れていればいいんじゃないかな?
これはいい案だと思った。
どうせ合流できそうにないのなら別に動かなくてもいいだろう。
木に背を預け、座って遠くを観察する。
爆発が各所で起こっている。
皆、頑張ってるなぁ。
そこに行けば誰かいるんだろうけど……。
うーん。行きたくないなぁ。
◇◆◇
エリスはその頃奮闘していた。
「敵を切りさけ! ウインドカッター!」
ビッグボアに向けて風の刃を放つ。
その刃は多数の傷を体に刻んだ。
しかし、まだ立っている。
息の荒いビッグボアはこちらへと突進しようと身構えている。
「効いてないの!? もぉー!」
「ブォォォォォ!」
叫んでいる間に迫ってくるビッグボア。
横へと飛んで避ける。
もう血が飛んでくるの嫌だからやりたくなかったんだけど……。
再びこちらに方向を変えて向かってくるビッグボア。
「敵を切り裂くわよ! ウインドブレイド!」
手に風の刃が出現し、迫り来るビッグボアを真っ二つに切り裂いた。
そのかわり、血を浴びちゃったけど。
ビッグボアは鼻を取らなきゃ行けない。
解体とかすんごくやりたくないけど、ポイントの為だから仕方がないわよね。
討伐部位を取得していると、後ろから木の擦れる音がする。
振り返るとゴールドのバッチの男子生徒が。
ライバル視しているクラスの生徒だ。
咄嗟に飛びのき魔法を放つ。
「ダウンバースト!」
上空から地面へと打ち付ける様な風を起こす。
男子生徒は舌打ちをすると行動を制限されながらもゆっくりと前へと歩いてくる。
私は急いで林の中へと隠れた。
近接戦闘だと分が悪い。
こういう時は逃げるにかぎるのよ。
森の中を駆け抜けていく。
前方に何かいる。
スティールウルフだ。
鋼の毛をもつウルフで私の魔法とは相性が悪い。
「ウインドカッター!」
正面へと魔法を放ち、弾幕とした。
怯んでいる間に横を駆け抜ける。
気配を消して木々の間を駆け抜け、見つけた草むらへと逃げ込んだ。
様子を伺うと匂いを嗅いでいるようだが、魔法の風をこちらへと送っている。
風下になるので匂いは行かないはずだ。
諦めて私が来た方向へと駆けて行った。
爆発音が響き渡り、衝撃が草むらを揺らす。
さっきの生徒がやったのかな。
けっこうヤバい奴だったかもね。
こっちには追ってこないみたい。
よかった。
ほっと胸をなで下ろす。
はぁぁ。こんなんで合流できるかなぁ。
空を見つめると素早い何かが横切った。
「? なんだろ? 今の。まぁいっか」
最高ポイントの何かは空を飛んでいるようだ。
◇◆◇
その頃、バアルは愚痴っていた。
「あぁー。ちゃんと待ち合わせの合図とか決めておけばよかったなぁ」
これじゃあ、合流できるかわからない。
この森、結構広いと思うんだよなぁ。
切れ目が見えないんだよね。
ひたすら横へ行ってみたんだけど、印をつけた木に出た。これはループしているということ。境目がわからない。
困ったなぁ。
「グルルルル」
ん?
あれはC級のティラノか。
頭を重そうにしながらノシノシと歩いてくる。
剣術も魔法も鍛えたんだ。
オレならできる。
剣を構えた。
横へ構える。
思いっきり引き踏み込む。
「おらぁぁぁ!」
──ガギンッ
ただの切りつけでは傷もつかない。
ランクが高い魔物も混じっているみたいだね。
頑張って鍛えた剣さばきでもダメなのか。
魔力を剣へと纏わせる。
「ダークソード」
ティラノが踏みつけてきた。
咄嗟にバックステップで避ける。
黒くなった剣を脚へと叩きつける。
抵抗なく剣は脚を気を落とした。
バランスを崩したティラノは頭を地面へとたたきつけもがいている。
「トドメだ!」
首を切り落とすと討伐部位である牙をくり抜いてマジックバッグへといれる。
ちなみにティラノはCランク相当で、一年生には本来討伐できない魔物である。
そんな魔物をジャングルに入れておくなよと思うのだが、そこがこのダイバー学院のスパルタ具合が現れている。
「うーん。リオンくんに向けてちょっと合図出してみようかな?」
魔力を手にため、上空へと投げた。
上へ上へと上がっていく闇の玉。
破裂音が響き渡ると四方に闇が散った。
◇◆◇
リオンはその闇玉をしっかりと見ていた。
打ち上げられた闇の玉を見ていた。
「あぁー。あの器用なことができるのはバアルくんかな? なんか合図っぽいし、行ってみてもいいかな」
というか、気がついて居たのに行かなかった時の方が恐い。あとから何を言われることやら。エリスさんもきっと探してほしがっているだろう。
カーラさんもちょっと心配。
「リオンくーん!」
木下を見るとカーラさんが居た。
なんという偶然。
「カーラさん、近くにいたんだ!」
「たまたま見つけたぁ! よがったよぉぉぉ」
急に涙を溜めて木にしがみついた。
恐かったんだろうね。
よく生きのびた。
木から飛び降りる。
「あぁ。泣かないで。良かった見つかって。あのさ、バアルくんがいるみたいだから一緒に行って合流しよう?」
「うぅぅ……うん……」
涙拭きながら頷いたカーラさん。
なんだか守ってあげたくなる?
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