第10話 座学の授業
今日から授業が始まる。
午前中は、座学かららしい。
一限目は歴史らしい。
この国の歴史だオーウェン王の前の歴史と言ってもいい。
紛争ばかりしていた古い歴史だ。
講師の先生が入ってきた。
「皆さん今日から宜しく! それでは、いきなりだが、問題です!」
タブレット端末を操作すると壁に映し出されたのは問題文だった。
『二世代前のアーロウ帝国だった時代は紛争が絶えず、人が多く死にました。この戦争を終わらせたとされるダンガルブル。後に王となりますが、この王様の種族は何だったでしょう?』
あー。これねぇ。
普通の歴史文献には載ってないんだよねぇ。
数少ない文献にしかない。
「では! リオンくん、どうぞ?」
「えっ? ぼく?」
「はい! どうぞ?」
「手、挙げてませんけど?」
「うん? どうぞ?」
これは答えないとダメなやつなんだな。
「えっと……竜人族……だと」
「正解です! 素晴らしい! みんな拍手!」
皆が散り散りに拍手をする。
なんなんだこの人は?
僕を目立たせたいのか?
「このダンガルブルという竜人はとても強く。一人で紛争を止めたとも言われています。その後王となり、後に仲良くなったオーウェンが種族差別をしない人だった為、王に抜擢したといわれていますねぇ」
その講師は再び僕を見ると。
「普通の文献には書いてませんから、よく知ってましたねぇ」
ニヤリと笑いウインクした。
何アピールなのあれ?
僕にどうしろと?
「ねぇ、なんかさ、さっきの話リオンくんみたいだね。強くてお人好しで」
「そうかな?」
エリスさんがそう言ってくれるのは嬉しい。
ダンガルブルは聡明な人だったと言い伝えられている。それ以来、力に溺れてはいけないと竜人族を諌めたんだとか。
僕が竜人だと知っているっていうアピールかな?
あっ……そうか。受験の時に父さんがリオン・ドラゴニルって出したんだ。そりゃそうか。じゃないと受験できないか。
だから知ってたんだ。
ってことは、担任も知っているはず。
だから、ワザワザ僕を呼んだんだな。
そういえば、寮の受付でもドラゴニルって言われていたな。
僕は負けない。
目立たないぞぉ。
「では、この問題わかる人はいるかな?」
チラホラ手を挙げている。
「ではー、リオンくん!」
手ぇ挙げてないって。
「わかりません」
「ん? リオンくん!」
「だから、聞いてませんでした」
「ん? これだよ? リオンくん!」
なんだよこの講師。
「勇者です」
「なんだ分かるじゃない! さすが!」
全部僕に振る気か?
正気の沙汰じゃないぞ。
この問題は今ある食文化の影響をもたらしたのは誰でしょうという割りとみんながわかる問題。
過去に僕と同じように転生した勇者がルーメンとかを広めてくれたという。感謝しかない。しまいには魔王とも和解してくれたんだとか。
そのおかげで、今は色んな種族が集まっているというわけで。
その後、当てられることは無かった。
一体何だって言うんだ。
◇◆◇
先生side
最初のあの問題を分かるということは間違いなく英才教育を受けている竜人だな。
あれは相当期待されてここに来たんじゃないのか?
「どうだったよぉ? 座学は?」
担任のお出ましだ。
「楽しかったですよ。最初の難問は無理やり解かせてリオンの凄さをみんなにわからせてやって、その次も無理やり当てて答えさせました。これで、リオンが凄いことはわかったでしょう」
「いやぁ? この前の決闘で分かったんじゃねぇの? 魔法食らっても無傷、斬撃食らっても無傷。そんなやついるかぁ? 普通」
「ま、居ませんよね」
不思議なのはなんであんなに目立ちたがらないのかってことですねぇ。
強さもあるし頭もいい。ひけらかすよりはいいのかもしれない。
竜人と言えば最強種として有名で、力があれば国の戦力とされて騎士団長なんかも任せられるような逸材だろう。
そもそも竜人は人口が少ない。子供が産まれにくいからだ。その分長生きするんだが。
竜人という種族に後ろめたさを感じているのかもしれないな。街で普通に竜人を見たら、みんなが恐れおののくだろう。
普通に接してはくれないよな。
竜人と言うだけでひれ伏すような人だっているだろう。それは望まないということかな。
でも、何故あんな服を着てまで竜人であることを隠すのか。
「アイツは、あんな服きてまでなんで隠してんだろうな?」
「何故でしょう? 何か過去に嫌なことでもあったんじゃないでしょうか?」
◇◆◇
昔のリオンside
僕はどうして背が高いんだろう。
目立つから嫌だな。
「お前邪魔なんだよ!」
「どけよ! のろま!」
「図体だけでかくて使えねぇな!」
色々な言葉を投げかけられて。
それで僕は下を向いて歩くようになった。
できるだけ猫背で。
中学を卒業して高校に行っても、言われることは変わらなかった。
「木偶の坊が!」
「気持ちわりいんだよ!」
「巨人族!」
悪口はエスカレートしていった。
僕はますます猫背になった。
そんな僕を両親は褒めてくれた。
身長のことも。
心優しいところも。
どこに行っても邪魔にされた僕は異世界に爪弾きにされたんだと思う。
あの世界からも邪魔だったんじゃないだろうか。
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