第8話 初めての買い物

 あの後は担任が挨拶に来て「初日から決闘とは熱いクラスだなぁ! ハッハッハァ! なぁ! リオンよぉ!」と笑って帰って行った。


 あんな感じの人が担任で大丈夫だろうか。

 なんで僕の名前を叫んだのか分からない。

 あの人は戦闘の試験官だったはず。

 目立つからやめて欲しいんだが。

 

 バアルくんに聞いたんだが、このクラスは成績が優秀なクラスらしい。


 僕は筆記試験合格点のぴったりを目指してたから1番下のはずなんだけどなぁ。


 順位表が貼られていたらしく僕の所だけ筆記がプラスされていたんだとか。何故なのかは誰も分からない。


 思い当たる節がないかと聞かれた時に思ったのは、一番最後の問題は全部の教科、書いたと思うと言ったらバアルくんは笑っていた。


 あれが解けるのはその教科の先生ぐらいじゃないかなぁ。僕も一問しか分からなかったしって言われた。


 うわぁ。それかぁ。やっちまった。

 なんで目立ってしまうんだ。

 下のクラスが良かったなぁ。


 バアルくんが言うにはこのクラスは凄く羨ましがられるクラスなんだとか。だから、昨日みたいな出来事は滅多に起きないみたい。


 僕のせいじゃないよ。うん。


 そんなこんなで次の日。

 バアルくんと一緒に部屋を出て寮の下でエリスちゃんと十時頃待ち合わせをした。


 バアルくんはなんだか爽やか系。

 青っぽいTシャツに白いシャツ。

 紺のパンツをはいてチョーカーを首から下げている。


 なんでも似合っていいね。

 僕はそんな格好はできないよ。

 目立つから。


「おまたせー」


 エリスちゃんはまた可愛らしいけど動けそうな感じ。

 大きめのカットソーにショートパンツでブーツ履いてる。

 肩に小さいバックもさげて。


 なんかキマっていてカッコイイなぁ。


「リオンくんは、そのままなんだね?」


「うん。僕、この服が好きで……」


「そっか。よーし! いこー!」


 深く聞かないエリスさんとバアルくんに有難いなと思いながら、走っていくエリスさんを追った。


 学院から繁華街まではそこまでかからない。ご飯の時間まで何をするかと言うと、買い物をしたいんだそうだ。


 女の子はみんな買い物が好きな生き物なの?

 僕は買い物の良さがあまり分からない。

 お金無くなるし。

 汚したら洗わなきゃいけない。


 僕の服は一日に一回リフレッシュの魔法が発動するし、汚れは修復で取れる。これ一枚で解決できちゃうんだから便利だよねぇ。


 これの術式入れるの結構大変なんだって。

 バアルくんが言っていた。


「ねぇ、この店見ていい?」


「うん」


 僕は手を引かれて店の中へと引っ張られた。僕が見るような服屋ではないと思うのだが。一緒に入った方がいいんだろうか。


「これどう?」


 エリスちゃんは小花柄のワンピースを体に押し当てて聞いてくる。

 なんだか妖精みたいだな。

 というのが率直な感想。


「とっても似合うと思うよ」


「そう? じゃあ、カゴに入れよう」


 そんな感じで時間はすぎて。

 荷物が多くなると思いきや。

 なんと下げていた小さいカバンはマジックバックだったようで。


 学校のよりも大きさは小さいが結構な容量入るようだ。凄いな。お金持ちのマジックバックは。


 感心していたらバアルくんも袋を下げている。


「あれ? バアルくんも服買ったの?」


「あっ、うん。二人でそっちの店見てたから、オレはあっちの店行ってた」


 一緒にこないのかよぉ。

 僕とエリスさんだと僕が目立っちゃうじゃん。

 道理で居ないと思ったぁ。


「えぇー! いいじゃん! あっちは男物多かったもんね!」


「そうそう。いい感じのがあってさ」


「ねぇ! リオンくんは服買わないの?」


 二人で話していたのに急に僕に話を振ってくる。油断も隙もない。


「んー。僕はこの服があるから」


「そっか。じゃあ、ルーメン食べに行く?」


「いこう!」


 僕の気分はルンルンになった。

 ルーメンが食べられる。

 三人で店に入るとカウンターが空いていた。


「まいどー! カウンターへどうぞ!」


 並んでカウンターに座る。


「リオンくん、まいどーって言われてるじゃん」


 笑いだしたのはエリスさん。

 つられてバアルくんも笑い出す。


「どんだけ来てたのー?」


「合格発表までは毎日?」


「そりゃ、まいどー言われるわよ!」


 エリスさんに突っ込まれてしまった。

 僕のおすすめでいいと言うので、豚骨を頼んだ。ここの店はこれが美味しいんだよね。


 配膳されると早速口に流し込む。


「んー。やっぱり美味しい」


「ふふふっ。そうやって食べるんだねぇ」


「うん。これだと口元しか見えないでしょ?」


「ふふふっ。たしかに」


 笑っているエリスさんは可愛らしくて、こんな可愛い子とご飯食べてるなんて嘘みたいだなぁ。バアルくんという友達もいて。


 嬉しいけど、視線が集まっている気がするんだよなぁ。

 目立ってなきゃいいけど。


 食べ終わって店を出る。

 日はまだ高い。

 けど、休みの日とあって、昼間っから飲んでいる人は多い。


「美味しかったよー。リオンくんのオススメ!」


「そう? よかった。僕、好きなんだよね」


「オレも初めて食べたけど、美味しいね」


 バアルくんもエリスさんも気に入ってくれてよかった。


「おぉー! 可愛いお姉ちゃんがいるじゃねぇか!」


 ホントに治安悪いなぁ。

 王都は。

 いつも絡まれる。


 僕はエリスさんを隠すように前に出た。


「あー! 兄貴! コイツですよ! 俺の足折ったの!」


 後ろには狼の人が杖を着いていた。

 兄貴と呼ばれる人はライオンかな?


「テメェかぁ! うちの弟分を良くもやってくれたなぁ!」


「絡んでいたから止めただけです。弟ならちゃんと悪いことは悪いと教えてください」


 僕は正論を言ってみる。


「うるせぇうるせぇ! 生意気言ってんじゃねぇ! どっちが上かわからせてやらぁ!」


 殴りかかってくるが僕は何もしない。

 金属を殴ったような音が響き、手を抑えるライオンさん。


「この感触は……まさか……」


「あっ、大丈夫ですか?」


「おい! 行くぞ! もうアイツに関わるな! いいな!」


 ライオンさんは何かを察したのか狼さんを連れて去っていった。


 これで、あの人達が静かになるといいんだけど。

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