転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院に通います~

ゆる弥

第一章 学院入学編

第1話 僕が竜人?

 僕は何も無い無気力な日々を送っていた。髪で目を隠して友達もいない。学校に通ってはいるがただそれだけ。


 いつものように下を向いて歩いていたらドンッと衝撃が体に走りよろめいた。


 下は真っ暗。マンホールかなにかに落ちてしまったんだろう。驚きのあまり声を出そうとするが出ない。


 真っ暗な空間が続くと急に周りが明るくなった。


「オギャー! オギャー!」


 僕は気が付くと産声を上げていた。

 これは体が勝手にそうしてしまう。


「おぉ。元気な男の子ではないか! 賢そうだなぁ!」


「あなたに似て強くなるといいのだけど」


「大丈夫! この子は強くなるぞ!」


 父親と思われる人の体には鱗のようなものが付いていて普通の人間ではなさそうだ。


 これはラノベであった俗に言う異世界転生か?


 その謎は数ヵ月後に判明した。僕の種族は竜人というこの世界では最強の種族らしい。


 世界には人族、獣人族、魚人族、魔人族、巨人族、地人族。長耳族、木人族、竜人族が居るんだって。


 なんでわかったかって言うと、今のうちからと言ってもう座学を僕に教えてくれているんだ。普通はこんなことしないんだって。


 なんでも、賢そうだからというそれだけの理由みたい。


 立てるようになると訓練が行われるようになった。剣術や格闘術、そして竜魔法にダンジョン攻略。十五年の日々はあっという間だった。


「リオンには、一週間後のオーウェンダイバー学院の入学試験を受けて欲しい」


「学院ですか? それって竜人族は居るのですか?」


「居ないだろうな。我々の種族は全人口のほんのひと握りしかいない希少な種族だ。俺もリオンにはこの里を離れて欲しくない……」


 僕もここからでたら目立ちそうだから嫌なんだけどなぁ。前に一度人族のいる街に出たらジロジロ見られて嫌だったんだよね。


「リオンは天才だが、族長と相談してな。やはりダイバー学院は卒業していた方が良いという結論になった」


 父親は親バカでいつも僕を天才だと褒める。言われた事はできていたが、そんな天才だとか思ったことはない。


 オーウェンダイバー学院っていうのはオーウェンっていう国の、ダンジョン攻略の仕方を学ぶ学院で、卒業生は有名なダイバーになっているんだって。


 ダイバーっていうのはダンジョンに潜る人だからダイバーっていうらしい。


「わかりました。試験を受けてきます」


「これが、受験票だ」

 

 受験票を受け取り、その日の内に準備をしていたら、母が服を持ってきてくれた。僕が顔の頬にある鱗が見えるのが嫌だと母に言っていた事があったそうだ。


 鱗が見えないような襟を立てた黒い服を用意してくれていた。それを着てさらに後ろに結んでいた緑色の髪を下ろせば目も見えなくなる。


 竜人の目は特徴的だからすぐに分かってしまう。


 ここからオーウェンの王都までは七日くらいかかる。だから父も今日言ったのだろう。


 竜人の里はかなり深い山の中にあるが、不便なことは特になかった。この世界は思っていたより便利で、魔道具でなんでも出来てしまっていた。


 だから、この世界にもスマホのような魔道具があったりもする。持ってはいないけど。


 オーウェンの王都までは山々を越える必要がある。それも、A級の魔物が出る地帯である。魔物はF、E、D、C、B、A、Sとランクが上がっていく。


「オォォォォ」


 魔物の咆哮が聞こえる。

 こっちに来るか?


 どんどん近づいてくる。狙いは僕みたいだ。


「喰らえ。竜の咆哮。竜魔法 ドラゴニックキャノン」


 近づいてきたのはサイクロプス。大きい巨人の魔物だ。


 手をかざしてエネルギーをため、発射する。凄まじい光を放ち発射されたエネルギーはサイクロプスの上半身を吹き飛ばして行った。


 今日も体は好調である。でも、目立ちたくないからこの魔法は学院では使えない。なんとか誤魔化して通さないとね。


 野営をしながら山々を越えてようやく王都が見えてきた。遠くからでもそびえ立つ城が見える。この国の王様は人族なんだって。


 良い人みたいなんだ。種族で差別はしないんだって。それがこの世界では一番大事なことだと僕は思っている。


 門のところには獣人のゴツイ門番が立っている。みんなに王都へ入る理由を聞いているみたいだ。


 僕の番になると目が鋭くなった。


「何用でこの王都にきた?」


「ダイバー学院の試験を受けに来ました」


「受験生だと?」


「そうです」


「なぜそんな格好をしている?」


「これは目立たない為です。母が作ってくれました」


「そうか。通っていいぞ」


 緊張したけど、通れてよかったぁ。

 これで街の人たちからもジロジロ見られないと思うし、母に感謝しないと。


◇◆◇


 門番の獣人は震えていた。


 本能でわかる。

 さっきのが学院の受験生だと?

 あれは遥か上の生き物だ。

 体が震える。


 あの怪しい格好はよくわからない。

 目立ちたくない!?

 嘘だろう!?

 あんな服に髪を下ろしていれば逆に目立つと思うが……。


 さっきの受験生は、街に入ると意気揚々と街を闊歩している。だが、周りの人達は恐れおののいて遠ざかっている。


 逆に目立ちたがり屋なのか?

 あの受験生なにものだ?

 あんな逸材が入るのか。今年の学院には。


 リオンは既に王都で有名になりつつあった。


 怪しい黒襟として。

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