第12話 恋ってなんなのかしら



 さてはて、学園を卒業したら、私は婿を迎えなければなりません。


 なので、しばらくは社交に専念する日々、パーティー三昧です。


「……」

「ちょっとキャリー、仏頂面になってるわよ」

「だって、だって、だってね!?」

「理由は分かるけれど」


 あきれ半分に、ジャクリーン=ジョウシキー公爵令嬢が、私を宥めてきます。


 そう、私、社交界デビュー後、ぜんっぜんモテないのです!


「楽しくない」

「うちのクズどものせいで……ごめんねごめんね」

「……」


 ハジラッティ=ダメ=ナイトリー第二王女が、私の隣でハンカチを噛んでいます。


 私は二人の王子を平民に落とした脅威の令嬢。


 見た目は金髪碧眼で小ぢんまりとした人形のよう。


 しかし、実のところは王子妃教育をトップ成績で修了した、侯爵本人。


 ハイスペックで気の強い私に、男性陣が気後れして近づいてこないのです。


「ううぅ……」

「ちょっと、元気を出してキャリー」

「隣国の王子とかどう? 侯爵家は捨てることになっちゃうけど」

「婿に入ってくれそうな人はいないんですか」

「あなたのスペックに釣り合うレベルのまともな若者は、皆婚約済みなのよ……」


 そうなってくると、貴族としての地位を下げるか、政権に気を遣って婚約せずにいた隣国の王族辺りか、年齢を引き下げる又は引き上げるか。


 ついでに私の世代は、酷い話ですが令嬢にとってのハズレ世代とも言われていて、高位貴族の令息がそもそも少ない年代でもあるようです。


「もうやだ。私結婚しない」

「落ち着いて、キャリー。結婚はともかく、一回くらい恋とかしてみたいでしょ?」

「そうよ、社交をまずは楽しむことよ」


 恋。こい。鯉?


 それを思って頭に浮かぶのは、青い髪の……。


 チ、チガウシ。 


 ベツニ、アンナヤツナントモオモッテナイシ。


 ワタシ、ソンナンジャナイカラ!!


 思わず心の中で片言になっていると、ふと若い男性に声をかけられました。



「素敵なレディ。どうか私と踊ってくれませんか」




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