ずっと一緒だった幼なじみにサヨナラされたら、チアリーダーたちにめちゃくちゃ愛されはじめた(お試し版)

上谷レイジ

短編版(本編の第1話~第9話途中まで)

プロローグ

「ん……、ちゅ……」


 高校のチアリーディングチームの部屋で、僕こと清水優汰ゆうたはポニーテールの女の子と口づけを交わしていた。

 初めてのキスとくれば、唇と唇が触れ合う程度のものだろうと思っていた。

 しかし、そう思ったのも束の間だった。


「れろ……、れろ……」


 彼女のキスは初めてとは到底思えないものだった。

 慣れているのか? と思ったけど、彼女の手の震えは僕の体に伝わってくる。

 彼女も本当に初めてなんだな、キスするのは。


「れろ、れろ、んちゅ……」


 手の震えだけではなく、彼女の甘い吐息と彼女の脈打つ鼓動が僕の体に伝わる。

 彼女に触れるだけで、僕の胸の鼓動が高鳴っているのを感じる。

 彼女が僕に「好きだ」と告白してから、何分経っただろうか。おそらく十分、いや、それ以上は経っただろう。

 この時間が永遠に続くのかと思ったら――。


「ぷはぁ……、はぁ、はぁ……っ」


 彼女は少しずつ顔を離した。

 僕の唇と彼女の唇の間には、何度も舌を絡めた証拠が垂れ下がっていた。これが、銀の糸なのか……。


「ごめんね、加減が分からなくて最初からこんなことしちゃって。幻滅した?」


 彼女はベンチに置いてあったスポーツタオルで口を拭うと、僕に向かってこう話した。

 幻滅なんてするわけがない。あの時僕があのセリフを口にしていなかったら、彼女は大きな失敗を犯していたかもしれない。

 だから僕は胸を張って、彼女に言った。


「そんなことないさ。高橋さんは高橋さんだから」


 そう、初めて会ったあの日から、彼女は彼女らしかった。

 長身でスタイルが良いにもかかわらず、可愛らしさが詰まった顔。そして――。


「ありがとう、優汰君にそう言ってもらえると嬉しいよ」


 そう、僕に抱きつくこの大胆さ。

 捨てる神あれば拾う神あり、かな? いや、ここは人生万事塞翁が馬が正しいか。

 それにしても、なぜこのようなことになったのだろうか――。

 僕は頭を振り絞って、彼女とはじめて出会ったあの日のことを思い出した。

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