未来に続く宝物
夢野楽人
プロローグ
お盆。
私は休暇を利用して家族とともに、親戚の家にやってきた。
近くには祖父母が住んでいた家があったが今はもうない。ただ跡地には一つだけ残っているものがあった。
墓参りのついでに、それを見に行くところだ。息子をつれての散歩。
辺りは静かで、時折カエルや蝉の鳴き声が聞こえてくる。
澄み切った青空と田園を見てると心が洗われるようだ。あぜ道が至る所にあって、遠くには山の姿がはっきり見える。
ゆっくりと風景を眺めているだけでも楽しい。都会の忙しさを忘れさせてくれる。
地元の神社が見えると、楽しい思い出がこみあげてきた。
祖先を敬うお盆祭はもうすぐで、大勢の人で賑わうことだろう。息子も楽しみにしている。
やがて大きな公園が見えてきた。
「うわー! おっきな公園だね、早くいこうよ、お父さん」
「用事がすんでからな」
「うん!」
息子は遊びたくてうずうずしている。四歳児はやんちゃだ。かくいう私もそうだった。
昔は何もない広場。その風景を私は知っている……。
それから曲がりくねった道を歩き、旧実家の跡地についた。唯一残っているのは大きな蔵。
私は鍵を取り出して観音扉を開けると、息子が走って中に入ってしまう。
「きゃ、きゃ、きゃ」
「あーこらこら危ないぞ。中は暗いからな」
備え付けてある懐中電灯をとって、格子戸を開けていくと物置蔵の中が明るくなった。
中にあるのは昔の食器と調理器具など。あとは古い長持や箪笥が置いてある。
御先祖が使っていたものだ。見ているとタイムスリップしたかのように感じる。
蔵には遺品と思い出の品々があり、今は私が大事に受け継いで、帰省するたびに中を見に来ていた。
特に異常はないな。いずれは息子に蔵をゆずりたい。
「お父さん、あれはなに?」
「おお、これは懐かしい」
息子が見つけたのは木製の古い道具箱。私は棚から取って床に下ろし、蓋を取って開ける。
「これって
「そうだ昔のおもちゃだ」
「へー」
息子は興味津々、現代の物とは違って手作りだから珍しいのだろう。
私はある紐を取って昔を思い出す。
「ねーねーお父さん。これは、どうやって遊ぶの?」
「ああ簡単だよ。父さんも昔、ある人に教えてもらったんだ。その人はな……」
私は恐くて不思議な話を語り始めた……。
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