第3話

入学式から一カ月。


あの後、私はレイス様と同じクラスとなった。彼は私のことを覚えていて何度も体調を気遣ってくれたのでそれについては改めてお礼をしたが、それ以外は必要以上に関わらないよう気を使いながら過ごしてきた。




ただの田舎貴族である私は本来ならレイス様と関わるなど夢のまた夢のような話だが、やはりシナリオの力か何かと彼と関わる機会が巡ってくる。そのため全く交流ゼロとまではいかなかったが、まだクラスメイトの範疇に収まっているはず。




…そう思っていたのに、今日ベロニカ嬢から放課後に自分のもとに来るよう、お呼び出しを受けた。正確には本人ではなく彼女の友人からそのことを聞いたため、彼女がどのような意図で私を呼び出したのかは分からない。


しかしあまりいい内容ではないであろうことが、伝言を預かっていた令嬢の表情から読み取れた。




不安を抱えながら約束の時間に指定された場所である中庭のガゼボに向かうと、既に到着していたであろうベロニカ嬢は一人でベンチに腰掛け手元の本に視線を落としていた。




この学院内では家柄や立場に関わらず誰もが一生徒として扱われ、自由に交流することとなっている。だからこそ私のようなものも王族であるレイス様と同じ教室で学んでいるのだが、家柄を全く気にするなというのはこの貴族社会では無理な話だ。




つまり、子爵家の私が侯爵家のベロニカ嬢を待たせるなどあってはならないことである。


私はまだこちらに気付いていない様子の彼女のもとに急いで駆け寄り、頭を下げる。




「お待たせして申し訳ございません!」




謝罪の声で私に気付いたであろう彼女はちらりとこちらを見ると読んでいた本を閉じ、




「そんなに待ってはいません。


それに私が早く来ただけだから、気にしないでちょうだい。」




と言った。こちらに気を使わせないためなのか、皮肉なのか、頭を下げている私には彼女の表情が見えないので言葉の真意は分からない。




要件を尋ねるべきかと悩んでいると、一つ気になることがあってね、と前置きしたうえで




「あなた、レイス様とずいぶん親しいと聞きました。」




ベロニカ嬢が言い放つ。こちらを見据える目は冷たい。


ああ、シナリオに抗うためレイス様との関わりを極力失くそうと努力してきたけど、それでもだめだったようだ。もう彼女からの敵意からは逃れられないのだろうか。

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