第39話 命がけの戦闘
お姉ちゃん?
つまり、あのちっちゃな白猫がミャロの姉のワーキャットだってのか?
「へへへ、お前らが配信しながら戦ってくれたおかげで、俺もやり方がわかって助かったぜ。こいつはな、ダンジョンの奥のかたすみでケガをしてにゃーにゃー泣いていたからな、俺が助けてやったんだ。ワーキャットだってピンときたんで、試しに多香子に吸わせてみたらよぉ……スキルが使えるようになってるじゃねえか……」
ミャロが自分から俺に抱き着いてきて、髪の毛の匂いを俺に嗅がせる。
甘くてミルクみたいないい匂いがした。
「コーキ、お願いにゃです……お姉ちゃんを、助けてくださいにゃです……」
すくなくとも、ミャロの姉は大事に扱われているようには見えなかった。
拘束用の革ひもでぐるぐる巻きにされてぐったりとしている。
真っ白な毛並みでぱっと見わからないけど、よく見るとずいぶん痩せこけているようにも見えた。
「……西村、一応聞いとく。俺はこれ以上人間同士で殺しあうのはいやなんだ。その猫はこいつの姉なんだ、放してやってくれないか?」
「ひゃーはっはっはっは! あのなー、三崎ぃ、今お前自身にオオカミの空から懸賞金がかけられてるんだよぉ。お前をぶち殺したら一億円の報酬だってよ。なー、この状況で俺とお前のあいだで交渉が成立すると思うかぁ?」
くそ、オオカミの空のやつら、一発二千万円のジャベリンを使ってたし、ほんと資金が潤沢だな。
「三崎ぃ、それのそこの猫、言っておくが、この拘束している革ひもは、お前の猫の首輪と同じ素材だ。つまり、この俺が生命活動を停止したら、この革ひもがこいつを締め付けて殺す。そこんところもよーく考えて戦えよ?」
西村はそう言って剣を鞘から抜きはらうと、にやにや笑いのまま俺に剣先を向けた。
「よし、多香子、今のうち吸っとけ」
多香子の鼻先に白猫を押し付ける西村。それをクンクンと嗅ぐ多香子。
そのあと、西村は自分の顔にちっちゃな白猫をヒモでしばりつけた。
「……ミャロ、お前も頼む」
「にゃにゃ。コーキ、ほんとに頼むのにゃですよ……お姉ちゃんを助けて……私をいくらでも吸っていいから……」
ミャロも、ポムッと子猫に戻ると俺の顔に貼り付いた。
西村の後方に控えていた男たちもAKライフルを俺に向けて構える。
震えるような緊張感。
命のやり取り。
お互いに、ワンミスでこの世からおさらばだ。
西村だって多香子だって熟練の探索者なのだ。
屈強な戦士スキルを持つ西村、攻撃魔法を得意とする多香子。
さらにはたくさんの現代兵器。
これらを相手に、いままさに命がけの戦闘が始まろうとしていた。
〈いや、とはいってもこの絵面は……〉
〈大の大人が二人して顔に子猫を張り付けて対峙してるぞ〉
〈黒猫仮面vs白猫仮面やwwww〉
〈シリアスな戦闘なんだろうけど正直吹く〉
〈まじでどんな感情で見ればいいの、この戦闘……〉
〈っていうかヒーラーが一人で前衛職と後衛職、プラス現代兵器装備の兵隊に勝てるか?〉
〈黒猫vs白猫か、どっちのがマナ量多いんだろ〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます