天下布武が目指すもの

「…というわけなのだ 場合によってはここアヨータヤーも戦火に巻き込まれる可能性がある

商人であることは重々承知の上だが今は少しでも多くの戦力が欲しいし、ジパングのサムライは戦に強いと聞く…金は出す故なんとか協力してもらえんか この国にとって今が危急存亡のとき 頼む!!」

国王陛下とナレスワン王子が火急の用件とのことで急ぎ王宮に駆けつけたところ、ナレスワン王子から頭を下げられた


…ワン殿は悩まれている

こうなれば、ワン殿の立場としては一刻も早くシャムから脱出したいところであろう


しかし、そうなればアヨータヤーにいるヒノモトの者達はどうなる?

戦にならなければ良いが、戦になれば好むと好まざるとに関わらず巻き込まれる

そして、我らを呼びつけた時点で恐らくナレスワン殿下の腹は決まっている

今のままでは彼我の戦力を考えると蹂躙されてしまう可能性が高そうである

我らの敵だった者達はともかく、四国遠征軍にいた者達は仲間である

我らが逃げ帰ったとて、彼らまで連れ帰ることはできないので、戦に巻き込まれて命を落としたり、生き延びても奴隷として売り払われてしまう危険もある

それを見捨ててしまうのか?

…否

やっとノブナガ様の下、戦国乱世をもうすぐ終わらせるところまできて戦なき世に近づいていたのに、同じヒノモトの人間が遠い異国の地で奴隷として売り払われるようなそんな世の中は我々の目指す天下布武ではないはず!


わしが沈黙を破る

「…ナレスワン殿下

もしタウングーに勝ったとして、アヨータヤーは奴隷を手に入れたり奴隷を商人に売り払ったりはされますか?」


「…アヨータヤーの民はこれまで艱難辛苦を舐めてきた 確かにタウングーに恨みはある

なれど、タウングーの民もアヨータヤーの民も同じ民 民草を奴隷、まして売り買いの対象になどしてはならんのだ!!」


「…そうですか

ワン殿、申し訳ないがわしはここに残ります

ワン殿の恩義には感謝しておりますし、わしはルイコスタ商会の世話になっている身

されどルイコスタ商会の人間である以前にヒノモトの人間でございます

ヒノモトの民も暮らしているこの地を他国に蹂躙され、ヒノモトの民が奴隷として売り払われたりするのを黙って見てはおれませぬ!

それに、仮にアヨータヤーを今出たとしても最悪の場合下流でチャオプラヤ川を封鎖されでもしたら、シャムからの脱出すら難しくなる可能性もあり申す

わしは一人残ってでも戦いまする!」


「なんと!」

ワン殿が驚くのも無理はない


「ヒデカズ殿…感謝致す」


「ヒデカーズさん、ワタシも戦うね! ワタシみたいな悲しい思いをする人をこれ以上増やしちゃいけないね!」


「…ふ、ヒデカズらしいの 是非も無し

我らに10倍する敵とは桶狭間のようじゃのう 懐かしいわ

ナレスワン殿 このノブナガ、若き日に10倍以上する敵軍を打ち破ったことがある 共に勝つのじゃ! ワン殿、この戦勝てばそこもとも大儲けぞ かっかっかっ」


「殿、桶狭間とは我が初陣 懐かしゅうございますな!拙者は殿に地獄までついて行きますぞ!!」


「ええぃ、こうなればヒデカズ殿とノブナガ殿に賭けてみるか!このワン、一肌脱ぎ申そう!」


「決まったようじゃな

ではワン殿、まずは一つ頼まれてくれるか

ナオぶねに備え付けてあるカルバリン砲は外すことができるかの?

外せるようであれば、台車で城に持ってきてほしい

次にナレスワン殿、城に馬と鉄砲はどれくらいあるかの?取り急ぎ、鉄砲の試し撃ちをまとめて行うなどして馬を大きな音に慣らしておいてほしい …なに、象も戦に使うのか? では象にもだ 頼む」

ノブナガ様が矢継ぎ早に指示を出していく


…なぜかこの場をノブナガ様が仕切ってしまっているが、よいのか?

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