守るべきもの(2)

本能寺には、実はノブナガ様もご存知ないであろう抜け道が用意されていた


…祖父が草の者に命じて勝手に作ってしまったのだが

ノブナガ様が好んで本能寺を宿所にされているので万が一に備え京のタキガワ屋敷の付近と本能寺が繋げられていたのだが、もちろんタキガワ一族以外こんな抜け道を知るはずもなく

見つかったら手打ちは免れんだろうが…


そして抜け道を通り本能寺にやってきたは良いが…



既に水色桔梗の旗指物に完全包囲されておりました(笑)

流石はミツヒデ…と感心してる場合じゃなかろう!


抜け道を出た時、掛軸の下で音がした

…なにかを倒してしまったようだ

ふと見てしまったが、これは茶入か?

本能寺に置いてあるということは名物好きのノブナガ様のこと、天下の名品なのであろうから割らずに済んでよかった

…とはいえ今は戦の最中、そんなことを言っている場合でもないが脱出時に邪魔になると致命的なので、今のうちにたまたま袂に入れていた風呂敷で回収しておく


建物内を少し進んだところで、この場の空気に似つかわしくない1人の巨漢が槍と矢筒を抱え走り回っているのに出会った


「!! ヒデカーズさーん どーしてこんなところに!?」


ヤスケである

元は遠く離れた異国の生まれのようだが、宣教師の奴隷となりヒノモトに連れてこられた

肌が黒く巨大な身体で目立つ男であったため、最初は肌を黒く塗っていると思われ擦られたが全く肌の色が変わらぬことを面白がったノブナガ様が引き取り、護衛のひとりとして使えることとなった

わしも以前から何度か話したことがあるが、気の良い男である


…話は後だ、時間がない

ノブナガ様のところへ案内を頼む


ノブナガ様は小姓のランマル達と共にミツヒデの軍勢と戦っていたが多勢に無勢、時間の問題であった


突如火縄銃で援護に入ったわしにランマルも一瞬驚いていたが、本来いないはずのわしがいることで何かを察したのか後退してきた


「ヒデカズ殿!…拙者達が時間を稼ぐ故、ヤスケ殿とともに、殿のことをお願い申す」


ノブナガ様と共に室内へ下がり、ランマル達が壁となり戦う


室内で後退しながら抜け道の存在や現在の状況、ノブタダ様を安土に向かわせたことを報告


「…で、あるか 是非もなし よくノブタダを安土へと落ち延びさせてくれた」


…大殿、無念なれどランマル殿達が時間を稼いでくれている間に寺に火をかけ、こちらに用意した衣に替え抜け道から落ち延びましょうぞ


ノブナガ様の衣は抜け道のない部屋に脱ぎ捨て、そこに火をかけ抜け道からわしが前、ヤスケを後としノブナガ様を挟む形で本能寺を脱出した

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