贋作ガンダム00

標的がふたつ並んでいた。

右の標的のほぼ中央に銃弾が撃ち込まれた。

男の声がした。

「アリ、お前は優秀な戦士になれるぞ。よくやった。次はアミールだ。撃ってみろ」

左の標的にも銃弾が撃ち込まれた。だが、中央からほど遠い周縁の部分に当たった。

男の声がした。「アミール、お前はダメだな、アリを見習え」

地面に寝そべった状態で、三脚の付いた軍用ライフルを構えているのは5歳程度の双子である。

兄のアリは天才的な射撃の腕を持っていたが、弟のアミールはさっぱりだった。

ふたりの後ろをクルマが通った。

男が言った。

「サーシェスさんが帰って来た。今日はここまで」

双子は即座に遊びにいった。

アリが言った。

「かくれんぼしようぜ」

アミールが応えた。

「オー。かくれんぼしようぜ」

ふたりはみなしごだった。

そして、この村ではたったふたりの子供だった。

クルマから降りたサーシェスは男に言った。

「村長の家で会議だ。幹部を集めろ」


リビングではサーシェスと部下のテロリストが何やら話込んでいた。

サーシェスが言った。

「軌道エレベーターの建設予定地に行ってきた。世界中からエンジニアが集結している」

タバコに火を点けながら言った。

「あいつらを皆殺しにする。これ以上石油の価値が下がったら、アラブはやっていけない」

部下のひとりが言った。

「問題は手段だ」

サーシェスが言った。

「ガキを使って自爆テロをやる。射撃のヘタなガキにやらせる」

部下が言った。

「アミールにやらせるのか。アリの方はどうなる?」

サーシェスが言った。

「射撃の上手い方は戦士として育てる。俺たちの部下になってもらう。以上だ」

サーシェスと部下がぞろぞろと村長の家から出てきた。

それを双子の片方が見ている。

サーシェスが言った。

「お前どっちだ?」

子供が言った。

「アミール」

サーシェスがたずねるように部下の方を向いた。

部下が言った。

「こいつはアミールです。間違いありません」

サーシェスが言った。

「つまりどっちだ」

部下が言った。

「つつつまり、射撃が下手な方です」

サーシェスは子供に向かって言った。

「来い」

その子は少し怯えながらサーシェスについていった。


サーシェスがその子を連れて再び村を出た。

しばらくして村長の家のチャイムが鳴った。

村長の妻がドアを開けると、双子の片方が立っていた。

「おまえ、アリだね。何の用?」

子供が言った。「アリじゃないよ。僕はアミール」

「なんだって!?」

声が聞こえていたのだろう、奥から村長が血相を変えてやって来た。

村長が言った。「お前、本当にアミールなのか」

アミールが言った「アリが居なくなったんだ。村のスピーカー使って、アリを呼んでほしいんだ」

村長が言った。

「アリは...アリは遠い国へ行ったんだ。もう戻ってはこない」

アミールが言った。

「遠い国ってどこ?」

村長が言った。

「天国というんだ。いい子はみんな...勇気のある子とか、やさしい子は天国にいくんだ」

アミールが言った。

「僕は?」

「お前はまだ、天国に行っちゃいけない」

村長はアミールを抱きしめてこう言った。

「お前は今日からアリと名乗るんだよ。誰かがアリを呼んだら、お前が返事をするんだよ」

村長の妻は立ち尽くし、ただ泣いていた。











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