贖罪

雨乃よるる

ごめんなさい。

 死にたいと言ってはいけないんですか。

 幸福なのは義務ですか?

 真綿の中に身を沈めている僕へ、腰は痛くありませんか。


 僕は贖罪のために反省文を書いているらしい。小説という名の。


「僕はいじめられたことがない」

 これだけ手の中で転がした夜。


 ごめんなさい。



 ごめんなさい。





 帰らせてください。教室から。















 ごめんなさい。









































 もういいですか?







 ごめんなさい。

       。

       。


       。


        小説も、


       。

書けないなら、





       。 助けることも、

  億劫なら、 ■んで償えばいいですか?
































 身に覚えは?

 死ぬほどあります。

 償いますか?

 償いたくありません。

 一生不幸で構わないですか?

 いいえ、幸せになりたいです。


 ごめんなさい。


 それ自体が罪だと言いたいんですか。そうならそれでいいです。


 ごめんなさい。ごめんなさい。


 こんな貧相な反省文でごめんなさい。


 はいそうです。明日にはまた笑顔に戻ります。悪いですか?


 救われるのは今じゃないと意味がないんです。常に。


 頭が悪そうに見えますか? そうです。そこらへんのバカより僕はバカです。


 いつになったら帰らせてくれるんですか。


 僕には家がありましたよね。


 おかしいです。

 おかしいのはあなたですよ。

 いいえ、おかしいのは僕ではありません。


 ごめんなさい。調子に乗りました。


 じゃあ、僕が心を込めて作った歌を聴いてください。


 話はそれからにしましょう。


 「」

 幸福なのは権利ですよ。正確には幸福追求の権利です。

 法律の話は訊いていません。僕は法に生きていないから。

 illegalですか?

 いえ、結果的に合法になっただけの人間です。

 それはとてもいいことですね。

 そうでしょうか?


 合法と非合法を見極めて生きることこそ社会性なのでは?


 私はすなわち人間じゃないんです。人間にしてもらっているだけにすぎないんです。

 でもあなたは人間です。

 それは生物学上の話。私は人間ではありません。懲役から解放してくれませんか?


 人間ではないものに贖罪の能力はありませんよね?


 答えてください。人間ではない私は、罪に問われませんよね?


 問答無用の死か、慈悲や逃走の末の生存しか選択肢は残りませんよね?


 答えてください。私には贖罪の義務があるのか。




 あります。

 どうして。

 まず、あなたは人間です。そして、自分を人間ではないと偽ったことが罪に当たります。


 わかりましたか?

 わかりません。人間であることは義務なんですか?

 人間であることは【権利】ですよ。

 幸福なのは?

 【権利】です。

 文字を綴ることは?

 【権利】です。

 贖罪は?

 義務です。

 息を吸うことは?

 【権利】です。

 その、字面の、【】をひっぺがしたらどうなるんですか。

 




 この先はお答えできかねます。







(着信音、夜中に飛び起きる私。)


(電話口からは男の声。)


(「あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ 、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ 、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますふ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぎ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはい」)











 (唐突に電話が切れる。)


 寂しいと思った。彼が死んだように繰り返す声が耳を打たないことが。













(あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐあなたはいますぐ、 あなたじゃいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ、 あなたはいますぎ、あなたはいますぐ、あなたはいますぐ……)













「あなたはいますぐ」


 私はそれを、お守りの中にしまった。


 それっきりだった。


 おわり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る