会社を辞めて騎士団長を拾う
あかべこ
第1話
会社に退職届を出した日、俺はすべての肩の荷が下りた感じがした。
入社一か月で普通の会社員に向いていない事を悟り、早期リタイアを目指して貯蓄や投資で一千万貯めることを目標に頑張ること5年。
「自由だ……」
ぐっと伸びをして青空を見上げる。
冬の終わりの青空を見上げながら自分で勝ち取った自由を心から感じる。
大学の途中から今まで暮らした狭いアパートの部屋はもうすっかりがらんどうになり、玄関の台車に積まれた少ない私物を車に積み込めばサヨナラだ。
「じゃあな、俺の部屋」
部屋に向かってそう声をかける。
これで俺の東京生活はおしまいだ。
****
限界まで荷物を詰め込んだ軽自動車で北へと突っ走る。
都心から高速道路で2時間弱、最寄りのインターからは30分。茨城県北部の山間部にある古い民家が俺の新しい住処になる。
「ただいまァー」
ここは元々祖父が暮らし、3年前に祖父が死んでからは空き家になっている。
生前祖父にこの家に住みたいと告げると祖父は趣味の日曜大工の腕を生かし、元大工の友人の助力を得て改装に取り組んだ。
おかげで築年数こそ経っているが隙間風に悩まされることなく水回りもわりと綺麗で、祖父には本当に感謝しかない。
もろもろの感謝を込めて仏間に置かれた祖父母の仏壇に手を合わせる。
「さて、荷ほどきするか」
今日持ってきた分の荷物を全部ほどき、事前に決めておいた場所にどんどん入れておく。
スマホの充電器だとか毎日使うケア用品だとかは事前にこっちに持って行くと不便だし、今日持って行くしかなかったんだよな。
これでもう大丈夫だよな、と思って引っ越し作業のリストを確認して気づく。
「あ、役場と銀行行かねえと」
銀行はともかく役場は明日土曜だからたぶん休みなんだよな。
こういう面倒くさいことは早めにやっておくに越したことはないし、車のガソリンもちょっと不安だ。
(ガソリン入れて役場行って直売所で野菜買うか……)
そう思いながら玄関を開けて外に出ようとしたその時、足元に赤い血が滴っていることに気づく。
足の引きちぎれたプレートアーマーの白人が玄関の前でぶっ倒れていた。
「……は?」
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