第3章〜逆転世界の電波少女〜⑨
「
ゲルブと同じ姿をしている親友の
「ゲルブ、大丈夫だよ」
オレの声に冷静さを取り戻したのか、確認するようにオレの目の前でたたずむ少女に視線を向けたゲルブは、再び大きな声をあげる。
「クリーブラット! どうして、キミがここに!?」
驚いたような彼の声に対して、幼なじみに似た容姿の彼女は、穏やかな笑みでゲルブの言葉に応える。
「はじめまして、銀河連邦の捜査官さん。わたしのことを知ってくれていて光栄ね」
「ボクらのセカイで、キミのことを知らない人間はいないよ……まさか、キミがトリッパーだったなんて……もしかして、キミもシュヴァルツと……」
表情こそ少し穏やかになったものの、慎重な性格は我が親友と変わらないのか、ゲルブは、大型拳銃の構えを崩さないまま、クリーブラットに対峙している。
連邦捜査官の緊迫したようすを横目に見ながら、さっきまで、オレに叱咤と激励の言葉を掛けてきた幼なじみに良く似た少女は、彼女のセカイでも有名人なのか……と、感心をしていた。
そんなオレたち男子組をよそに、彼女は、相変わらず余裕の笑みを浮かべながら応じる。
「やっぱり、そんな風に見られてるのか……わたし自身は、彼の考えている計画に興味は無いし、活動家のつもりもないんだけど……わたしの本業は、あくまで歌い手なんだけどな……」
「それは、ボクらの捜査でいずれ明らかになるだろう。必要がないなら、彼から離れてくれないか?
そんなゲルブの言葉に、クリーブラットは、
「男性捜査官にまで嫉妬されるなんて、モテモテで羨ましいわ、
と、おどけた表情で、こちらに視線を送ってくる。
彼女の表情にドキリとしながらも、その意図がまったく読めなかったオレは、気まずい想いで、その視線を受け止めるしかなかった。
「なんにしても、こっちの用事は済んだから、あとはそちらでお好きなように……わたしは、自分の仕事に戻ることにするわ」
クリーブラットは、そう言って、パステルピンクカラーの端末を取り出し、操作をし始めた。
「ちょっと! まだ、こっちの話しは終わってないよ!?」
ゲルブは、オレの幼なじみに良く似た少女に向かって声を掛けるものの、彼女は、
「ゴメンナサイ! このあとライブのリハがあるんだ! これでも、結構、仕事が忙しいんだよね」
と、笑みを浮かべて端末をタップする。
すると、彼女の全身がビクッと震え、それまでクリーブラットとして語っていた幼なじみの身体は、糸が切れた操り人形のように力無く崩れ落ちそうになる。
「
そばにいたオレは、幼なじみの名を叫びながら、なんとか彼女が地面に倒れ込む前に抱きかかえることに成功した。
「彼女の意識はしばらく戻らないと思うよ」
彼の言葉に反応し、すぐに問い返す。
「それは、屋上で意識を失った
「まあ、そう考えてもらっても問題ない。ただ、外傷はないけど、この気温じゃ風邪をひきかねないし、彼女を家まで送ってくれる? いや、この状況だと背負って行ってもらわないといけないか……」
こちらの問いかけにゲルブは、スラスラと自身の見解を語るので、その返答にうなずくしかない。
ただ、彼とふたりになったことで、オレは親友の姿をした捜査官に伝えておきたいことがあった。
「わかった……それは、責任を持って引き受けよう。それより、ゲルブに頼みたいことがあるんだ」
「なんだい?
不思議そうな表情でゲルブが問い返してくる。
支えていた
オレが、自らの考えを語り終えると、ゲルブは、さっきよりさらに訝しげな表情になり、
「キミは、ホントにそれで良いのか……?」
と、こちらの意志を確認するようにたずねてきた。
「あぁ、
オレが、自分の思いの丈を語ると、彼は肩をすくめがら、
「キミに悪意があったようには思えないし、なにも、そこまで責任を感じる必要はないと思うけどね……」
と言いながらも、
「わかったよ……ボクにできる限りの協力はしよう」
と、最後は了承してくれた。
親友と同じく、この銀河連邦の捜査官を信頼に足る人間だと感じたオレは、ゲルブに感謝の言葉を伝え、元のセカイに戻るという彼を見送ったあと、意識を失ったままの
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