第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑫
普段の彼女らしく、
「もうひとつ、相談したいことは、生徒会のことなんだ」
その一言で、オレの
もう言うまでもないことかも知れないが、先ほどの吹奏楽部顧問の相談の件も含めて、
「おそらく、あの
と語った、その内容が、ふたつともピタリと一致したからだ。
(会長にインタビューしたのは、こことは別の
生徒会長という役職でありながら、砕けた印象で話す割に、後輩の悩みを正確に把握している上級生に、どこか恐ろしさすら感じつつ、
「実は、いまの生徒会長の
あいらんど高校の生徒会役員は、毎年一月に一年生と二年生の生徒によって、翌年度の生徒会長を決める投票が行われ、生徒会長が各役員を決める権限を持つことになる。
応援演説には、卒業間近の三年生も参加可能なので、支持の高かった前任の生徒会役員が応援に回れば、当選の確率は極めて高くなるという傾向がある。
これは、かつての放送部と新聞部が遺してくれた資料から明らかなことだった。
そのことを踏まえたうえで、
そして、それは、ご近所の
「でも、吹奏楽部の方でも、部長を務めてくれないか、と桜木先生から頼まれて……さすがに、生徒会長と吹奏楽部の部長の兼務は、荷が重いと思っているんだ」
という内容だった。
「そうか……
活発なオレの幼なじみとは、また少し違った方向でバイタリティーの
そのようすを眺めながら、オレは、ふたたび
「でも、吹奏楽部の問題解決と同じように、
ここまで語ったあと、緊張で喉がカラカラになるのを感じながらも、声が上ずらないように気をつけながら、次の言葉を絞り出す。
「なんなら、オレにも協力させてくれないか? オレなんかじゃ、あまり役には立たないかも知れないけど……
なんとか、それだけを言い終えると、自分の発した言葉が痛すぎて、彼女に引かれてはいないかと不安になりながら、恐る恐る目の前のクラス委員のようすをうかがう。
しかし、オレのネガティブな予想に反して、彼女は驚いた表情を見せたあと、両手で鼻と口元を抑えながら、
「嬉しい……どうしよう……」
と、なぜか感激したかのような言葉を発した。
「どうした、
しばらく固まったままの彼女のことが心配になって声をかけると、
「あっ、ゴメン……ナサイ……私がお願いしようとしたことを、先に
「えっ、嬉しくて……?」
彼女の言葉が意外なものだったので、思わず聞き返すと、
「ホントは、私の方からお願いするつもりだったんだ……もし、私が生徒会長に当選したら、
「そっか……そうだったんだ……なんだか、先走ってしまったみたいで、ゴメン」
オレが、謝罪の言葉を口にすると、彼女は、いまにも泣き出しそうな、それでいて、感激にあふれたような表情で、小さく「ううん……」と、首を横に振りながら、またも、予想外の言葉を口にした。
「
「そう……なんだ……」
オレが、いまいるセカイの通称ルートB本線の
(これは、つまり……)
頭の中で、そこまで考えながら、現状の把握に努めていると、オレが、これまでも憎からず感じていたクラス委員のパートナーは、
「もう、こうなったら、勇気を出して言うね……」
と、これまで見たことがないような落ち着かないようすで、そして、これまでで最も予想不可能だった言葉を発した。
「
想定外だったその言葉に、一瞬、時が止まったような感覚すら覚える。
まさか、自分の人生において、
あまりに唐突な展開に、思考がまったく追いつかない。
そうして、永遠にも感じた沈黙(実際は、ものの数秒も経過していないのだろうが)のあと、オレは冷静になるよう自分に言い聞かせながら、たずね返す。
「――――――ホ、ホントに……オレで良いのか?」
慎重に聞き返すと、さっきよりも、さらに頬を赤らめたクラス委員は、かすかにコクリとうなずく。
その刹那、教室のドアが、カラカラ――――――と静かに音を立てて開かれた。
「
丁寧な口調と穏やかな笑みをたずさえながら、オレたちに声をかけてきたのは、吹奏楽部の部員たちから、『イケメン粘着悪魔』と呼ばれいてる顧問の桜木先生だった。
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