第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜②
クーラーの効いた自室のベッドで横になりながら、その不思議な現象を体感していて最初に驚いたのは、
後頭部を軽く撫でてから目を閉じ、まぶたを開くと、再び宇宙遊泳をしているよう(もちろん体験したことはなけど……)な浮遊感を覚えた。
あらためて目の前にあらわれた青い惑星(宇宙に存在する天体に対して造詣が深いわけではない平凡な高校生には、地球そのものにしか見えなかった)の外側に目を向けると、右上の方に小さな
そのうちのひとつに軽く触れると、再び惑星が巨大化して、目の前にあらわれる。
ゆっくりと回転する球体に見慣れた細長い島国が発見できたので、『
そして、自分たちの住まう人工島の上空であることが認識できるくらい拡大されると、二次元マップは、鳥瞰図のような3D表示に切り替わり、上空からぐるりと視察するように表示された人工島が回転し始めた。
「おぉっ! GoogleアースやGoogleマップそのものじゃん!」
楽しくなってきたオレは、学校の授業などでも使い慣れたアプリを操作するように、鳥瞰図を2D表示に切り替え、画面の右下に表示されている人型のアイコンを指でつまんで、水色で示された我が家の前の道路に配置してみる。
(さてさて、この謎のアプリでは、我が家はどんな風に表現されているのかな?)
そんな好奇心にかられ、ワクワクしながら目の前に広がるスクリーンを眺めていると、これまで、CGのような解像度で表示されていた街並みが一気に高精細な見た目に切り替わり、周囲360度が自宅前の風景に変化した。
さらに、ご丁寧なことに、真夏のうだるような暑さまで再現されている!
いや、そうじゃない――――――。
さっきまで、自室のベッドに居たハズのオレの身体は、真夏の太陽が照りつける自宅玄関前に瞬間移動していたのだ!
再び不可解な現象に遭遇したことに困惑しながらも、住み慣れた我が家の玄関ドアを開け、
「ただいま〜」
と、帰宅を装いながら、恐る恐る声を出しながら自宅に入ると、リビングから「あら……」と声がした。
「
これまた聞き慣れた母親の声に、安堵と気まずさが入り混じった感情を覚えながら、「ああ……」と、生返事をしながら、そのまま二階にある自室に戻ることにする。
(なんなんだ……今の現象は……)
事故で頭を打ち付けた影響で、脳の認知機能や記憶を司る部位に影響が出たりしているのだろうか?
そんな恐ろしい想像が頭をよぎり、母親の
「そう言えば、さっき、モモちゃんが、アンタに聞きたいことがあるって言ってたわよ!」
という声に生返事で答えてしまったため、その内容を正確に把握することができなかった。
病室で突如として目の前にあらわれた宇宙空間といい、さっきの瞬間移動のような現象といい、意識が戻って以降、不可解なことが多すぎる。
「オレは今、瞬間移動をほんのちょっぴりだが体験した。い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ! オレは自室のベッドの上で横たわっていると思ったら、いつのまにか自宅の玄関前に移動していた。な……何を言ってるのか、わからねーと思うが、オレも何が起きたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだ……催眠術だとか意識障害だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
前世紀のコミック作品のキャラクターのセリフが、フルバージョンで脳内再生されるほど、動揺したオレは、とりあえず、心を落ち着けよう――――――と、自室に戻って、再びベッドに横になる。
冗談はさておき、いま現在の状態と同じように、ベッドで
退院時、母親と一緒に受けたカウンセリングで、主治医の先生から、
「頭部には、ショックを与えないよう、十分に気をつけて下さい」
という注意を受けたことから、『夢遊病』や『記憶の欠落』というキーワードが頭をよぎる。
そんな事情もあって、ネガティブな思考に陥りそうになるのと、ほぼ同じタイミングで、
コンコン――――――
自室のドアがノックされた。そして、
「
と、言いながら、中学時代から良く知っている仲の部活動の後輩女子が、無遠慮にオレの部屋に入ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます