第72話 めざし丼の贈り物

寒さが緩み始め、春の兆しが感じられる頃、「時ちゃんの、めざし道!」では、新たなメニュー「めざし丼」を提供し始めた。このめざし丼は、時ちゃんが長年の研究の末に生み出したもので、めざしの旨味と栄養を手軽に楽しめる一品だった。


めざし丼は、特製のタレに漬けためざしを焼き上げ、温かいご飯の上にのせ、仕上げに刻みネギとごまを振りかけたもの。特に、このタレには時ちゃんが工夫を重ねた秘伝の調味料が使われており、その甘辛い風味がめざしの塩気と絶妙にマッチしていた。


ある日、店を訪れたのは地元の老人ホームのスタッフだった。彼らは、入居者の多くが食欲がなく、特に健康に良い魚を食べさせたいと考えていたが、なかなか食べてもらえる料理がなかったと話した。時ちゃんは、めざし丼がそうした人々のために役立つのではないかと思い、特別に老人ホーム向けの「柔らかめざし丼」を作ることにした。


この特製めざし丼は、めざしを丁寧に煮込んで柔らかくし、ご飯も消化しやすいように炊き方を工夫したものだった。老人ホームでこのめざし丼が提供されると、入居者たちはその優しい味わいと香ばしい香りに驚き、次々に丼を空にしていった。


時ちゃんは、その反応を聞いて大変喜び、これからも定期的に老人ホームにめざし丼を届けることを約束した。彼女は、自分の料理が人々の健康と幸せに貢献できることに深い満足を感じ、めざし料理の可能性を再確認した。


その後、めざし丼は店の定番メニューとなり、様々なアレンジが加えられて多くの人々に愛されるようになった。時ちゃんは、このめざし丼を通じて、料理が持つ力と、それを通じて広がる人々の笑顔に触れ、自分の使命を改めて心に刻んだのだった。


そして「時ちゃんの、めざし道!」はこれからも、新しい料理のアイデアと共に、人々の心と体を温める場所として、その役割を果たし続けることを誓った。

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