第30話 皆で話し合う

 あのノートによれば、ここを抜け出すには方法が二つあって、そのうちの一つが「お盆が終わるまで耐え抜く」であった。


 今日は十四日。お盆が終わるまで残り三日。

 皆で耐え抜くというのは、リスクが大きいように思う。

 食料は朝の分までしかない上に、暑さが体力を消耗する。皆で意識を失っては、お盆を過ぎた頃に誰も救助要請などできない。


 それ以前に、三日もの間、全員が精神を保てるのか分からない。いつ何時、あの子が現れるか分からないのだから。

 それならば、一人でも多く山を下りる選択をした方が良いのではないか。


 直樹なおきがそう言うと、亮平りょうへいが前傾姿勢で折り畳み椅子に座って嘆息する。


「が、ここを抜け出す方法を聞く限り、ランダムなんだよな。最後に一人残されたやつは、きつくないか? お盆が終わるのを一人でじっと待たなければいけないんだろ?」

「私、嫌よっ!」


 莉奈りなのヒステリックな声が直樹の神経を逆なでる。

 誰だって嫌だろう、こんなところに一人取り残されるのは。

 だが、犠牲者を最小限に抑えるには、この方法しかないのだ。


「一度山を降りた人間は、再びここに戻ることはできないんだろうか? もし可能なら、俺は何度でも戻ってくる。俺が最後に残る。だから、試してみないか?」

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