第6話 山荘を探検

 だから上手くいくのだ、という意見もあるだろう。だが、この二人に関してはどうもその言葉が当てはまらないらしい。


 健人けんとにとってあおいはつまらない女。それでも、連れて歩けば自慢になるし、収入も安定している。いざとなれば葵に頼ればいい。いわば健人にとっての保険なのだ。


 葵は大学時代から健人に魅了されていた。どんなに冷たい態度を取られても、翌日、優しい言葉をかけられればそれですべてが帳消しになった。


 惚れた女の弱み、とでも言おうか。

 気の毒だと思いながら、直樹なおきはどうすることもできず、ただ目で追うことしかできなかった。


 ◇ ◇ ◇


 一年近く手の入らなかった家屋は急激に劣化するらしい。

 皆で山荘の一階部分をぐるりと見てまわったのだが、雨漏りで床板が腐食していたり、壁に害虫の痕跡が残っていたりと、人が住むには相当修繕が必要だと感じた。


 二階へと向かう階段に足をのせると、今にも崩れそうなきしみ音を立てる。


「これは、ヤバい」


 安全対策も取らずにこの階段を突き進んでいくのは危険だと亮平りょうへいが判断し、今回の二階行きは断念した。

 その後、莉奈りなと葵は箒を片手に、リビング、キッチン、廊下、六畳間の二部屋を清掃し始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る