第四十二話 ガロモスの脅威
オルコット姉妹の目の前――階段の前に立ちはだかったガロモスは、彼女たちに向かって突進。
その巨体ではあり得ないほどのスピードで、二本の牙を突き立てて突っ込んでくる。
ダイヤたちはこれはなんとか
「こんなデカブツ、戦うだけ時間がもったいねぇよな。だったら無視して下へ行っちまおうぜ」
「待ってください、ルヴィ! ガロモスには他にも特殊な力が!」
ルヴィが飛び出し、サファイアが彼女を止めようとした次の瞬間。
ガロモスは再び
すると、どういうわけか洞窟内に吹雪が起こり始め、ルヴィはその中に飲まれて全身が凍りついてしまった。
あの燃えるような赤髪ごと見事に氷の彫像にされてしまった次女を見て、ダイヤとサファイアは慌てて彼女の傍へと駆け寄る。
「あわわ!? ど、どうしようサファイア!? ルヴィが、ルヴィが氷漬けになっちゃったよ!」
「落ち着いてください。こんなこともあろうかと、いろいろな魔導具を用意してきましたから」
その長い手足と大きな体でその場で右往左往し始めたダイヤ。
反対にサファイアは冷静に背負っていた革の荷袋に手を伸ばし、中から一冊の本を手に取った。
それはルヴィの髪の色と同じ、真っ赤で分厚い本だった。
「アトリュー、あなたがくれた魔導具のおかげで、ワタシは家族を救えます……。
サファイアが赤い本を手に声を上げると、本から炎が燃え上がった。
その汎用性は高く、暖を取ったり、指定した者を焼き尽くすこともできる。
使用するためには本の内容を理解していなければならないが、魔導具の使い手として知られる商人の団体――ルメス商会にいたサファイアは当然、読み込んでいて使用練度も高い。
氷漬けになった人間を一人救うなど朝飯前だ。
「凄いよサファイア! ルヴィが元に戻ってく!」
ダイヤが歓喜の声をあげる。
その目の前では炎がまるで意志があるかのように動き、凍りついていたルヴィを
「ぷはッ! 死ぬかと思った! サンキュー、サファイア」
「礼ならルメス商会の一人息子、アトリューに言ってあげてください。彼がくれた魔導具があなたの命を救ったんですから」
「なにぃ、まさかお前の恋人かそいつ? ならすべて片付いたら一体どんな奴か知っとかねぇとな、あんたの姉としてはよぉ」
軽口を叩き、ルヴィは再び身構える。
サファイアもまた
無視して進もうにも、下手をするとまた吹雪を起こしてくる。
そうなると、先ほどのルヴィと同じように氷漬けにされてしまう。
幸い運良く
全員が凍らされたら、もう願いを叶える魔剣にたどり着くことも、エメラを救うこともできなくなる。
それだけは絶対に回避せねば――。
ルヴィとサファイアが手をこまねいていると、突然ダイヤは
槍のように長い木の棒がしなり、まともに受けたガロモスは、悲鳴のような叫び声をあげながら激しく後退する。
「うーん、腕力には自信あったんだけどなぁ。でも、あの大きさを倒すのは無理だったみたい。しょんぼり……」
出かける日が雨になったくらいの感覚で言ったダイヤに、ルヴィとサファイアは開いた口が塞がらなかった。
それは白銀髪の長女がゾウよりも巨大な魔獣ガロモスを、たった一撃で吹き飛ばしたからだ。
強いとは思っていたがまさかここまでとは……。
赤髪の次女と青髪の三女は、「我が姉ながら本当に人間か?」と、驚きで動きが止まってしまっていた。
それをダイヤの頭の上から見ていた黒猫ジュエリーは、やれやれとでも言いたそうにため息をつくと、二人に向かって大きく鳴いた。
その鳴き声はまるで、「二人にだってこのぐらいできるよ!」とでも
ジュエリーの呼びかけでハッと我に返った妹二人。
ダイヤはそんな彼女たちをチラリと見ると、笑みを浮かべながら声を張り上げる。
「でも、私は一人じゃないんだよね。頼りになる二人の妹と、とぉぉぉっても優しい妹が一人、そしていつも元気をくれるジュエリーがいるんだから!」
叫んだ白銀髪の長女は、いきなり槍のように長い木の棒をまるで風車のように振り回し、スタッとポーズを決めた。
これに一体何の意味があるのか。
ルヴィとサファイアには理解できなかったが、すぐに長女の隣に並び、再び向かってきたガロモスと対峙した。
「ありがとな、ジュエリー。魔獣の大きさと、ダイヤ姉の常識外れなとこに飲まれちまってた」
「ええ。ワタシからもありがとうございます、ジュエリー。まあ、よく考えればいくら大きくとも魔獣は魔獣で、ダイヤ姉さんはダイヤ姉さんでしかありません。今さら驚くようなことではありませんでしたね」
ルヴィとサファイアが黒猫に礼をいったのと同時に、ガロモスがその大きく長い鼻を振ってきた。
それはまるで巨人が振るった
ダイヤがこれを木の棒で払うと、ガロモスは次に二本の牙を突き出し、鞭のような鼻を避けたルヴィとサファイアを狙う。
「よく見りゃ単調な攻撃だぜ。なんでこんなにビビッてたんだろうな」
「ルヴィの言う通りです。さて来ますよ、次の攻撃が」
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