第10話 開催地の決定
ひとまず方針は決まった。後は実際に具体的な内容を詰めていく感じだけど……
「いきなり日本全土は厳しいよね」
僕がそう聞くと、里楽さんも真田さんも頷いた。
「まずは堅実に地方の都市くらいから始めるのが現実的だと思います」
「そうだね、まずどこかで実績を作ってもらった方が交渉的にも助かるかな。」
やっぱりそうだよね。
一応、今の僕の魔力なら日本全土をダンジョン化することくらいならできるけど。
「実験ということで融通が効きそうなところが良いと思います」
「だね、それでいてなるべく人が多めのところ」
そうなると候補はかなり限られてくる。
というか、正直、僕には一箇所しか思い浮かばなかった。
「というわけでさ、口利きとかできないかな?」
「また、あなたはとんでもないことを言いますね」
僕が相談に行ったのは、母さんの母さん、婆ちゃんのところだ。
瓜生家はこの地方では名家だからそういうところにも顔が効く。
もちろん、真田さんほど顔は広くないけれど、このあたりの土地だったら、こっちの方が力があるくらいだろう。
「飛鳥が嘘をつくとは思っていませんが、まさか異世界から魔王が来るなどとは思ってもみませんでしたよ」
婆ちゃんは、ため息をつきながらお茶を飲む。
「僕としても来ないといいなとは思っているけど、来た時に何も対策してないとそれこそ大惨事になっちゃうからさ」
まぁ、正直、今はもう来るという方向で動いているけど。
「ええ、わかっています。あなたがそんな嘘をつくような子じゃないことはわかっています」
いつもどおりの無表情。だけど、婆ちゃんは真剣に僕の話を聞いてくれた。
「ええ、いいでしょう。私の方からも協力を要請しておきます」
結果、予想以上にあっさりと許可をもらえた。
「いいの? 結構大きな話だと思うんだけど」
「ええ、実際、大事にはなるでしょう。しかし、あなたはこの地方どころか世界の命運を担っているのでしょう? 家族が信じて協力せずにいてどうします」
「婆ちゃん、ありがとう」
「それに私としても、この街にも新しい風が必要だと思っていましたからね」
僕のお礼に顔を背ける婆ちゃん。これは照れているね。
「しっかりおやりなさい」
しかし、最後には僕の顔を見て、そう言いながら微笑んでくれた。
この世界を救う……そんなだいそれたこと、そんな実感は正直なかったけど、こうして信じてくれる人たちのためにも全力で頑張らないとね。
そんなわけで、場所の候補が決まった。
これから、真田さんを通して、正式に声をかけてもらうことになるけど、実際には裏で話が通っているからスムーズに話が進むはずだ。
やっぱりこういうのはコネが大事だよね。
さて、場所は決まった。あとは本格的に内容をどうしていくかだけど……
「いいかげんさすがに話しておかないとだよなぁ」
考えるのに頭数が足りない、というか、手が足りない。
あと、大事な仲間にそろそろ隠し事をするのは辛い。
ということで……
「そんなわけであと2ヶ月くらいで魔王が地球にやってくるそうだよ」
「……わぁ」
大愛さんに話をすることにした。
「信じられないかも知れないけど、本当の可能性が高いんだよ」
呆けている感じの大愛さんに念を押す。まぁ、普通は信じられないと思うけど。
「いえ、確かに多少びっくりはしましたが。正直、今更ですよね?」
「えっ?」
「そもそもダンジョン自体が割ととんでもないやつですし。それに異世界? もある。そこに魔王となると、私としては、ついに来るところまで来たなぁ、って感じです」
そうだった大愛さんも結構なゲーマーだったね……
これひょっとして世の中にも普通に情報公開したとしても、普通に受け入れられるんじゃ……
いや、流石にそれはないか。
「それで、今それを私に話したということはなにか仕事があるんですよね?」
何をしたらいいんですか? と言ってくる大愛さん。
ほんと頼りになるわぁ。
「そうだね、それじゃあ、もうちょっと詳しく話すんだけど」
大愛さんにもう少し詳しい現状について話す。
いつも通りレベルが足りないこと。そしてそのために世界を徐々にダンジョン化していくこと。そして……
「とりあえず、最初の候補地は決めたから、そこで何かしらのイベントをしようと思っているんだよ」
「イベントですか。あー、なるほど、街全体を使ったイベントみたいな感じですね?」
「そういうこと」
話が早くて助かる。
要するに今決まっていることとしては、世界をダンジョン化していくのにあたって各地でイベントみたいなのを開催していこうかと。
里楽さんは予行演習って言ってたかな? そういう感じで、各地で魔物襲来みたいな感じのイベントをしようかと思ってる。
「もちろん、一般の人とかもいるからさ、そういう人たちにはなるべく迷惑をかけないようにしないとだからね」
「なるほど、それでいて、飛鳥さんの経験値にはなるような仕組みを考えなければならないと」
うん、そこが難しい点なんだよね。
普通に一般人がそこにいるだけじゃ経験値はあんまり入ってこない。
要するにダンジョン的な活動を誘導しないといけないんだけど……これがまた難しくてね……
「大愛さんにはこれを考えるのを手伝ってもらうのと、あと、そこでイベントで出てくるモンスターのデザインをやってもらおうと思ってるよ」
もともと、大愛さんはデザイナーだからね。そこは外せないよね。
「そうですね。一般の人にはきついモンスターにしすぎると、嫌がられますからね。ただ、あんまりやりすぎてはいけないし……これはデザイナーとして腕が鳴るところですね」
早速なにやら考え始める大愛さん。
「まぁ、ともかく、会議をするから大愛さんも参加をお願い」
「了解です。世界を驚かせてやりましょう」
うん、こんなことならもっと早くから考え始めておけばよかったよ。
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