みそ汁(二)

 ワイン風呂事件以来、おじちゃんは言葉数が減り、あれが聴きたい、これが聴きたいと、音楽の催促をして来なくなった。

 「おじちゃんの動画、TikTokでちょっとバスってるよ」と私が報告しても、おじちゃんは、そうかい、それはよかったねと言うだけで、前のようにあれこれ聞いて来なかった。


 学校の先生の負担を減らすために、部活が全廃されたため、私は暇であった。そこで、おじちゃんには、小人閑居として不善を為すと言われたが(これはジイジの口癖だったそうだが)、私はTikTokをはじめた。

 その頃、まだ元気だったおじちゃんは、偽物語の白金ディスコでも踊ればいいんじゃないかと訳の分からないことを言ったが、私は無視して、おじちゃんの動画を撮ることにした。

 Mambo No.5に合せて踊るおじちゃんや、私の指示に従って、右に左に動くおじちゃん。

 動画はちょっとだけバスった。

 結局、それが、おじちゃんとの最後の楽しい思い出となった。

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