めがね(三)

 勉強が終わったところで、バアバがお盆を手に、二階へ上がってきた。

「タカル、おまえが食べたがってもの、持って来たわよ」

 すると、やった、スッポンだとおじちゃんが鋏を振り上げて喜んだ。

 「サバを食べるとザリガニは本当に青くなるのか」実験で機嫌を損ねたおじちゃんをなだめるため、バアバは前から、おじちゃんが一度は食べてみたいと言っていたスッポンを通販で手に入れたのだった。

 スッポンの身と思われるものを、バアバは箸で、おじちゃんの水槽の中に入れた。

 それをおじちゃんは鋏で切って、口の中に入れた。私が感想をたずねたところ、魚と鶏の中間かな、なかなかうまいぞと答えたので、おじちゃんと会話ができないバアバに教えてあげたところ、「それはよかったわ」と微笑んだ。

 バアバは笑顔のまま、「先生、もしよかったら、食べていってください。スッポン鍋」と言った。

 「えっ、いいんですか? それではご相伴に与ります。いやあ、食べたことないんですよね、スッポン」とうれしそうに野田先生が応じた。

 野田先生とご飯を食べられるのはうれしいけど、スッポンはちょっと嫌だった。なんか、エロい。

 私がそんなことを考えていると、夕飯の済んだザリガニが暢気な声で言うのだった。

 イチカー、科学戦隊ダイナマンの主題歌が聴きたくなった、かけてくれ~と。

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