第57話 4人の約束

 〜461さん〜


 アイルが探索者用スマホを操作する。俺達の周囲を飛び回っていた2台のドローンがアイルとミナセの手のひらへと戻って行った。配信は終わったみたいだな。


「おっ。帰り用の魔法陣が出たぜ」


「もうあの長い道のり歩くのだけは勘弁して欲しいわねぇ〜」


 アイルが杖を両手て掴んで伸びをする。ボス戦始まった時はあんなにビビってたのに調子いい奴だなぁ。


「ジーク達も動けるか?」


 座り込んでいたジーク達がヨロヨロと立ち上がる。ボロボロの装備。だが、2人の雰囲気はどことなく明るく感じた。


「ああ。体力は大丈夫だ」


「私も〜! でもこんなに疲れたのは初めてかも」


「2人とも救出がメインだっけ? こんなにガッツリダンジョン攻略したのは初めてなんじゃない?」


「そうだな。それが──」


 ジークが答えようとした時。地面にわずかに残っていたスキルイーターの破片……スライム状の物体が声を発した。


「悔しイ。くヤシい。クやシイ……」


「アイツ……っ!? まだ生きてるわよ……っ!」


「近付くな。そのうち消えるさ」


 杖を構えたアイルを手で制す。アイツはもう核を失っている……復活は無いはずだ。それに、ちょうど良いぜ。意思疎通できるモンスターは珍しいからな。


「おい。お前、なぜダンジョン内のモンスター全部食った?」


 全てを捕食するには弱いモンスターから順に食っていかなきゃならない。スキルイーターにここまで知恵があるとは考えにくい。何かキッカケがあったと考える方が自然だ。


「……おンな」


「女?」


「ニんゲンのオんナが、このダンジョンを攻略した時。我ヲ生かシ、言ったノダ。『スキルを得たラ強くナれる』ト。だからワタしハ……」


 女……そいつがこのスキルイーターにヒントを与えて見逃したってことか? 何の為に?


「ジークとミナセが救出に入った時って女の探索者いたか?」


「いや、見ていない」


「男しかいなかったよ〜」


 アイルがハッとした顔になり、スキルイーターを見つめる。


「え、じゃあその女の探索者・・・・・って……最後に攻略した鯱女王オルカ? ねぇアンタ、その女の人って……」


「モう……ダメ、だ……サラばクソたワけ共……」


 そう言うと、スキルイーターは解けてただの水になってしまった。アイルは顔を真っ赤にして地団駄を踏む。


「ムキーーーー!! 言いたいことだけ言って消えやがったわーーーー!!」


「何やってんだよ……」


 にしても鯱女王オルカ、か。俺と同じ第一世代探索者……何考えてそんなことしたんだ? 今度リレイラさんに鯱女王オルカのこと聞いてみるか。




◇◇◇


「やった! 旧副都心線のホームに出たわね!」


 転移魔法陣の先は渋谷駅のホーム……俺達が侵入した副都心線のホームだった。流石にあの迷路みたいな駅中歩くのはきつかったからな。助かったぜ。


「アイルちゃん、転移魔法陣乗る時ヨロイさんと手繋いでたじゃん! 可愛い〜!」


「ちょ、ちょっとやめてよミナセさん!」


(え〜なんで〜? でもそっか、リレイラさんと鎧さんが仲良くしててもああいうの・・・・・あるからまだ平気なんだね!)


(そ、そんなのじゃ……ないもん)


(照れてる! 可愛い〜♡)



 ん? アイルとミナセのヤツ、なんであんな所でコソコソしてるんだ?


 アイルとミナセかヒソヒソ話ながら着いて来る。完全にダンジョン攻略のスイッチオフだなアレは。


 借りていたアイルのドローンに照明魔法を灯す。その光が地下鉄の線路内を照らした時、ジークが声をかけて来た。


「鎧」


「ん? なんだよ?」


「色々と、その……」


 妙に言いにくそうなジーク。まぁスキル奪われたり死にそうになったり色々あったしな。冒険を楽しむとかそんなこと思う暇無かったかも。


「渋谷ダンジョンはどうだった?」


「どうだった……か。迷ったし、罠にハマる、スキルは盗まれる、死にかける……色々あったが……」


 う、流石に難易度高すぎたか。流石に今回はイレギュラーが過ぎたからな……。


「だが」


「だが?」


 ジークは顔を背けて頬を掻いた。


「良かったことも、あった。お前や天王洲、ミナセと……ボスも倒せたし、俺自身も、うん。なんと言っていいか分からないが……またダンジョンに行きたいと思った」


「そうか」



 また行きたい──大変だったが、その言葉を聞けて良かった。俺も一気に気が抜けてしまう。思えば誰も死なせないように必死だったのかも。


「あ! 私も私も! また行こうよ一緒に! プライベートでもいいよ〜!」


 ミナセが嬉しそうに顔を覗かせる。


「いいんじゃない? また行きましょうよ! みんなで!」


 ダンジョンを決めて、準備して、挑んで、死にそうになりながらクリアする。1人でも楽しいが、パーティならもっと高みへ行ける。攻略困難なダンジョンもクリアできる。


 俺も今回で、少し成長できた気がするな。



「しゃっ! またパーティ組もうぜ。今度はそれぞれがもっと力を付けてよ!」



 俺達は、再びパーティを組む約束をした。




―――――――――――

 あとがき。



 次回は掲示板回です。天王洲アイルの本スレよりお送り致します。

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